組立天体望遠鏡で遊ぶ1 -構造編ー

組立天体望遠鏡(以下、組望)は「星の手帖社」という天文関係の本を多数
出版している出版社から発売されていますので、わりとどこでも入手する
ことができます。
(写真の15倍(1882円)のほか35倍(3078円)タイプもあります。
また現状では正立15倍(2980円)タイプもあります。)

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この組望、マニアックな人たちの中でも値段のわりに驚くほどよく見えると
評判になっているもので、おそらくこの価格帯では世界一よく見える望遠鏡だと
いわれています。

世界広しといえども望遠鏡の箱に、現役天文学者が写真入りで推薦している
望遠鏡もこれだけだと思います。

それほど気合いの入った製品なので、以前からスタパでも販売していて、
組立望遠鏡教室の教材として多くのお客様に購入して頂いています。

教室では組立から一通りの使い方や、どんな星を見たらよいかというところまで
お話はするのですが、テキストを用意しているわけでもありませんし、一度
聞いてもすぐに忘れてしまうだろうな~と思えるお客様も多いです。
(というか人の話を聞くより、早く出来た望遠鏡で遊びたいというお子さんが
ほとんどですので・・・)

そんなわけで、この組望を買ったけれどどんなふうに使って良いのか、どんな
星を見たらよいのか分からなくなってしまったかたや、組望を買ってみようと
思うけれど、どんなふうに使うのか、どんなふうに見えるのかといった不安を
お持ちのかたのために、スタパ的な解説を詳しくして行きたいと思います。
まずは「組立天体望遠鏡の構造」です。

始めに光学系

組望は最もオーソドックスな屈折望遠鏡の構造になっています。

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写真では左が対物レンズ、右が接眼レンズです。

対物レンズは口径40mm、焦点距離273mm(F6.8)のアクロマート式(1群2枚)です。

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レンズが2枚になっているのが分かると思います。

屈折率の異なる2枚のレンズを組み合わせることによりレンズ自体がプリズム
のように光を分解して像をにじませるのを軽減させる働きがあります。

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接眼レンズは樹脂製ですが3群3枚のレンズを使用しています。

何枚かのレンズを組み合わせることにより、対物レンズと同じように像の
にじみを軽減したり、視野周辺までボケずに見えるように工夫されています。

接眼レンズの焦点距離は18.2mmで対物レンズの焦点距離273mmを割ると
15倍になります。
(35倍タイプでは3群5枚の光学ガラス製接眼レンズ7.8mmになります。)

少なくとも、対物レンズがアクロマート式になった時点で、400年前に
ガリレオさんが初めて天体に望遠鏡を向けてめざましい発見をした望遠鏡より
ズッと高性能なものになります。

ガリレオさんがとても苦労して観察した様々な天体をわりとあっさり観察する
ことが出来るという優れものです。
次には鏡筒の構造を説明します。

鏡筒は上の写真の用に半円筒形の筒をふたつ重ねるようにして筒を作ります。

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筒内には絞環と呼ばれる遮光絞りと、接眼レンズ用の視野絞環があります。

実はこの絞環があるとないとでは大違いで、絞りの有るものと無いものとを
接眼レンズを着けない状態でのぞくと一目瞭然です。

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写真は左が絞りの無い望遠鏡、右が絞りのある「組望」です。

絞りの無い望遠鏡で風景や月を見ますと視野全体が白く霞んで、見たいものが
シャキッと見えません。

組望のほうもまだ改良の余地はあるのですが(いずれ改造講座を連載したいと
思います)、それでも絞りの無いものと比べると像がとても締まって見えます。

よく見える望遠鏡にするための基本を押さえた構造と言えます。
組望は前述しましたがオーソドックスな屈折望遠鏡ですので、原理的に見える
像は倒立像(逆さま)になって見えます。

このため慣れないと手持ちで使おうと思っても、なかなか見たいものを視野内に
導入することが難しいです。

また、15倍(35倍)という倍率ではしっかり固定しないことにはグラグラして
気持ちが悪くなります。

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組望は通常のカメラ三脚に取付できるネジ穴が本体の下側に付いていて、
汎用性の高い取付方式となっています。

出来るだけしっかりしたカメラ三脚に載せて使うようにしたいものです。

望遠鏡は見る対象までの距離により対物レンズと接眼レンズの間隔を調整して
ピントを合わせる必要があります。

組望の場合、接眼部と鏡筒部がネジ式に接合されていて、ネジの回転による
抜き差しで(=接眼部を廻すことにより)ピントを調整するようになっています。

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接眼筒についている∞のマークがギリギリ見えるくらいの長さにすると無限遠に
ある星にピントがだいたい合うようになっています。

一番引き出した状態では5mくらいの距離でもピントがあうようになっています。

倒立像(逆さま)でも良ければバードウォッチングなどにも使えそうです。

望遠鏡を使いこなす上で重要なテクニックのひとつに、いかに素早く見たい
対象を視野に導入するかというものがあります。

高い倍率になるほど実際に見える視野が狭くなりますので、星の導入にはコツが
いるというわけです。

組望は星の導入に便利にな照準(ピストルなどで狙いを定めるため付いている
出っぱりのようなもの)が付いています。

接眼側にひとつの山、対物側にふたつの山が出ていて、接眼側から見て三つの
山に見えるようになった先に見える対象が、視野内に導入できるというわけです。

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この照準をうまく使いこなせるようになれば、見たい天体が素早く視野内に
導入できて楽しく天体観察ができるようになります。

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