昨日の夕方はマルスの散歩中に土砂降りの雨だったのですが、今朝はよい天気。
元気のよい夏雲がモクモクと背比べをしていました。
(今日も夕立かなぁ・・・)
さて、超々入門天体望遠鏡光学、今日はいよいよアクロマート式レンズの
話です。
そもそも私がこの「超々」シリーズを書き始めることになったのは、
スタパおかみが「組立望遠鏡」シリーズの記事を読んで
「アクロマートって何!? いきなり訳のわからない言葉が出てきて、
その先に読み進めない・・・」と言い出したことが発端です。
「アクロマートって何」といきなり言われても、ひとことで説明するのは
難しいですし、文系人間のおかみに分かるように説明するためには、相当かみ
砕いた解説が必要です。
「アクロマートってのは屈折率の違う2枚のレンズ(凸レンズと凹レンズ)を
組み合わせたもので、屈折望遠鏡の敵とも言える「色収差」という色の
にじみを単レンズに比べ大幅に軽減したものなのさ・・・」
と、説明することは少し知識のあるかたならスラスラとできるでしょう。
でも「屈折率って何?」、「どうして2枚合わせると色収差を減らせるの?」
などと本当に基本的なことを聞かれたとき、返答に困る自分がいることに
気づきました。
実際、手持ちの光学関係の本を調べても、「アクロマートとはこういうもの」
という解説や、設計手法の説明はあっても、なぜ色収差を軽減できるのかと
いった基本的な説明が書いてあるものはありませんでした。
あまりにも当たり前すぎる事なのかもしれないのですが・・・
そんなわけで前置きが長くなりましたが、スタパ流アクロマートの解説の
始まりです。
まず「色収差」とは何かということから説明をはじめます。
プリズムの解説の中で、光がガラスに入る境界面と、ガラスから気中に出る
境界面で光が屈折するときに、光の色(=波長)によって屈折率が違うので光が
分解(分光)されるということを説明しました。
レンズというのは滑らかな形になっていますが、考え方としてはリング状の
プリズムの集合体であると考えることもできます。
ですから、レンズの中央をとおる光はほとんど分光されませんが、レンズの
端のほうをとおる光は、プリズムと同じように分光され、一点の焦点には
集まりません。
これを望遠鏡として使うと、像の周囲ににじんだように(縁取りをしたように)
赤や青の色が付いて見えてしまい、あまり細かいものが見なくなってしまいます。
この現象を「色収差」といって、屈折望遠鏡の最大の敵と言われました。
1枚の凸レンズでできるだけ色収差が出ないようにしようと思うと、口径比を
できるだけ大きくする(=焦点距離を長くする)必要があります。
アクロマート式の対物レンズが発明されるまで、屈折望遠鏡というのは、
とにかく長く作らなければ使いものにならないということになっていました。
「空気望遠鏡」と呼ばれるほど対物レンズの大きさに対して焦点距離が異常に
長い望遠鏡が天体観測に使われていました。
口径15cm、焦点距離45m(口径比:300!)などというお化けもあったそうです。
プリズムでさまざまな光の研究をしていたニュートンは、屈折望遠鏡では
根本的に色収差を無くせないと早々に気づき、反射望遠鏡を考案したと
いわれています。
写真はスタパで展示しているニュートンお手製の望遠鏡のレプリカです。
(物はもうひとまわり小さいそうです。)
星からの光をレンズを通さずに反射鏡で集めれば光が分光することも無い
というわけです。
でも、ニュートンがもう少しだけ、レンズの組み合わせで色収差を消すことを
まじめに考えていれば、アクロマート式レンズはもっと早く(50年以上)発明
されていたかも知れないと言われています。
ニュートンにはそれができる知識があったのだと考えられているからです。
まあ、反射望遠鏡を発明して自分で作ってしまうということだけでも充分
すごいことなのですが・・・
さて、それではどのようにしてレンズの色収差を少なくするのか、次回以降を
お楽しみに・・・
アクロマートって何というのは、まさに、いまさら聞けないけど、簡単に説明できるようなレベルで知っておきたい知識ですね。
すごく面白くよまさせて頂いてます
すずきさま
いつも応援ありがとうございます。
アクロマートって何?というのを簡単に説明している資料って意外にないんですね。
ないならば自分でしてしまえ・・・というノリで書き始めたのですが、結構苦労してます。
でも、じっくり考えると、なぜニュートンさんがアクロマートに気づかなかったのか少し不思議に思うくらい意外に単純なことだとわかります。
謎解きまで今しばしお待ちを・・・