今日は1週間ぶりに終日曇り。
火星と土星の観察が絶好期で、月も木星も良く見える日が続いていたので、さすがに少しホッとしています。
さて少し間が開いてしまいましたが「ガリミスに挑む」 の続きです。
これまでの3話で経緯、どんな機材を準備したかを書きましたが、今日は実際の見え味の比較です。
実験科学の父と呼ばれるガリレオさんが、現代では主流となっているケプラー式の光学系を使わず、ガリレオ式にこだわったのかを実際に望遠鏡を見比べてその謎に迫ろうというのが今回の企画です。
ガリレオさんは生涯に100台以上の望遠鏡を製作したと言われているのですが、それは彼の重要な資金源であったようです。
ガリレオさんには病気でお金の掛かる家族がいて、これを養うために良く見えると評判のガリレオ印の望遠鏡を貴族相手に売りさばいていたようなのです。
貴族(=素人)相手の商売ですから、それほど高倍率は必要なかったことでしょう。
倒立像(逆さまに)見えるケプラー式よりも正立像のガリレオ式のほうが受けが良かったと思います。
低倍率の望遠鏡を作るためには、対物レンズの焦点距離を短く、接眼レンズの焦点距離を長すれば良いわけです。
対物の焦点距離を300mm、接眼のそれを60mmで5倍くらいの仕様というのがわりと作りやすかったのではないかと考えて作ったのが下の機種です。
口径50mm、焦点距離300mm(F6)のアクロマートレンズにそれぞれ焦点距離60mmの凸レンズ(上)、凹レンズ(下)を組み込んだ鏡筒です。
これで景色や星を見たらどうなるのか・・・・
対物の口径が大きすぎて、性能が良すぎることもあるのですが、この勝負は圧倒的にガリレオ式の勝ちです。
まず予想外だったのですが実視界がガリレオ式のほうが広いです。
またケプラー式は視野の3分の1程度しか良像範囲がなく、それを外れると像が乱れ、色収差も気になります。
中心像だけを見るとケプラー式のほうが色収差が少なく若干鋭い感じがして、ガリレオ式はわずかな色収差が視野全体にある感じがします。
ただケプラー式はこの倍率(5倍でアクロマートレンズ)でも良像範囲は月の視直径ほどしかありません。
ガリレオ式の場合、焦点距離が同じなら口径に比例して視野は狭くなるのですが、目の位置を上下左右に動かすと視点を固定していたときよりもさらに広い範囲を見渡すことができ、視点固定の時に消える範囲を外れても良像が得られます。
このくらいの倍率ですとシングルレンズの一般的な有効径である20mm位でも視点移動をすればケプラー式と同等の実視界と同等以上の良像範囲が得られるはずです。
また上の写真でお気づきかどうか、上の写真はどちらもほぼ無限遠にピントが合った状態の長さです。
光学系の理論上、ケプラー式は(対物の焦点距離+接眼の焦点距離)の長さの鏡筒が必要ですが、ガリレオ式は(対物の焦点距離-接眼の焦点距離+α)で済むのでとてもコンパクトになります。
素人さんの貴族相手に
・正立像であること
・十分な実視界と良像範囲
・取り扱いやすいコンパクト設計
という当時のレンズ製作技術では(ケプラー式に較べて)圧倒的に高性能なガリレオ式を売るというのはとても当然のことだったと推測できます。
以上、多少推測の部分もあります。
また実際に覗いた感じを感覚的にしか表現できない(うまく写真に撮ることができない)ので何ともわかりづらく申し訳ないです。
しばらくの間、実機をスタパでご覧頂けるよう展示したいと思います。