双眼鏡で星空観察入門 (1)

今日は北杜市内は明野の名物「ヒマワリ畑」見てきました。

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なかなかきれいに咲いている部分はあるのですが・・・・

以前は周辺のヒマワリ畑が一斉に咲いてとてもきれいだった気がするのですが、最近はどうもショボい感じがします。

ヒマワリ畑で少しでも長い期間に観光客を呼ぶためにヒマワリが咲く時期を畑ごとにずらしているようです。

なので以前のように辺り一面という感じではなく、ここは満開だけど、隣はまだまだ、その先は少し盛りが過ぎたね・・・・という感じで商売っ気が見え見えであまりお奨めしたいスポットではなくなってしまいました。

さて気を取り直して・・・・  「双眼鏡で星空観察入門」本編の始まりです。

1. 双眼鏡に関する都市伝説

もっと、もっとたくさんの方に双眼鏡で星を見る楽しさを知ってもらいたいと思うのですが、どうもその楽しさを広げるパワーが弱いというか、なかなかその楽しさの輪が広がらないという気がします。

双眼鏡で星空を楽しむという行為が広がるのを阻害する大きな要因としては、双眼鏡に関する都市伝説とも言える間違った認識が未だに横行していること。

そして双眼鏡で星を楽しむためのソフトウエアの部分の充実に圧倒的な不足があるためではないかと考えています。

ここではその「楽しみの輪」広げるのを阻害している「都市伝説」についていくつか紹介したいと思います。

1-1. 双眼鏡の都市伝説「双眼鏡は天文趣味の入門用という認識」

よく双眼鏡は「天文趣味の入門用に向いている」とか、人によっては「望遠鏡を買う
前に双眼鏡を買ったほうがよい」などと奨めることがあります。

でも私個人としては、この考え方には全く賛同できないでいます。

これにはいくつか理由があるのですが・・・・、

まず第一に、

双眼鏡と望遠鏡というのは(光学的には似たようなものですが)見え方や使い方は全く別の世界のものであり同次元で比較すべき機材ではないということです。
(倍率の高い双眼鏡と、倍率の低い望遠鏡とでは被る部分もありますが、ここでは原則として双眼鏡は10倍前後以下の低倍率、望遠鏡は30倍以上の高倍率を担当する機器だという定義で話を進めます。)

初心者はとにかく望遠鏡を買って、月のクレーターや土星の輪が見たいと思っている方が多いです。

でも月や土星に関して言えば、高級な双眼鏡よりも1万円クラスの出来の良い(例えばラプトル50のような)入門用望遠鏡の方がはるかによく見えるものです。

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そんな方に双眼鏡を進めても(そりゃぁ双眼鏡でも月のクレーターくらいは見えるでしょうけれど)、何とも物足りないものに思えて使い道に困る機材になってしまいます。

国内では人口のほとんどが天の川の見えない都会地で生活しています。

その環境において双眼鏡で楽しめる天体がどれほどあるのかを考えると、かなり無理があると思います。

双眼鏡は使い方が簡単で、直感的に使えるから(後述しますが実はそうでもないのです)と軽い気持ちで奨めるのは、天文マニアの思い込みのような気がしてならないのです。

もちろん天の川が肉眼でクッキリ見えるような晩に双眼鏡でそれを眺めたら、それはもう素晴らしい体験になるのですが、都会地に住む初心者がその環境に出会うためには、相当の強い意志と運に恵まれる必要があるのです。

天の川に出会うために、天の川が良く見えそうなローケーションを探して、月齢を考慮してお休みをとって、透明度の良い好天の晩に出会う、といった綿密な努力と好天に恵まれる運が無ければ実現しません。

もしもあなたがわりと普通に天の川を見ることのできる地域にお住まいなら、迷うこと無く双眼鏡を購入されると良いと思いますが、都会にお住まいなら双眼鏡より少し難易度は高いですが望遠鏡を購入した方が良いです。

多少使い方は難しくても、自宅でも月のクレーターや土星の輪がコンスタントに観察でき、スマホでも簡単に月の写真ぐらいは撮れてしまうお手軽望遠鏡の方が私はお奨めだと思うのです。

私が天文初心者に気楽に双眼鏡の購入を勧められない第二の理由は・・・

具体的に「何を、どんなふうに見て楽しむか?」といったソフトウエアの部分の圧倒的な不足です。

双眼鏡で星を見るのにどんな機種がよいとか、どんな アクセサリーを使ったら良いとかといったハード解説は、書籍にしても、ネット上にしてもそこそこ充実していて多く見つけることができます。

ただこれにしても双眼鏡の構造や種類の説明が主体で、全くの初心者のことを考えた使いかたの説明が不十分であったり、本当に肝心な使い方のところは結局よく分からない内容のものが多いです。

双眼鏡向けと謳われている、きれいな写真とともに様々な天体が紹介されている本もあります。

でも本の内容をよく見ると「○○は双眼鏡でも存在がわかる」とか、「××は双眼鏡では厳しい・・」といったような表現が多く、双眼鏡向けと書かれているわりには双眼鏡で見て楽しいと思える天体の紹介はごくわずかです。

初心者向けといわれるメシエ天体も双眼鏡ではほとんどが存在がかろうじて分かるというレベルで、楽しめるレベルの天体は本当に限られていて、双眼鏡で楽しめるレベルは110番までのメシエ天体の1割程度です。(微かに見えるだけでも楽しいという方はいるのでこの辺は個人差があると思いますが・・・)

どうも日本人というのは真面目すぎる性格が災いするのか、天体と言えば星雲・星団、月・惑星、近接二重星とハードルの高い対象がギリギリ見えたとか見えなかったとかの議論に固執したり、それを写真に撮ったりすることが偉いという傾向が強すぎるように思います。

双眼鏡を使って星を見るための入門書もその傾向をそのまま踏襲していて、双眼鏡で見ても面白くない対象にたくさんのページが割り当てられています。

双眼鏡で見るとこの程度ですが・・・

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大きな望遠鏡で見るとこんなふうに見えます

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なんて書いてあることもあります。(写真はへび座のM5です。)

まさに星を見るための「修行」を(この難行・苦行の先に天文マニアへの道が開けているのですと)強制しているように思えてなりません。

良く見えない対象をたくさん紹介して、まるでもっと高性能な望遠鏡を買って見て下さいと暗示しているかのようで、望遠鏡メーカーの陰謀なのでは?と勘ぐりたくなるほどです。

まあ冗談はさておき、初心者に双眼鏡を奨めるというのは、たとえが悪いかも知れませんがiPhoneが欲しいという人に、まだアプリの充実していないWindowsPhoneを奨めるようなものだという気がするのです。

初心者だからと安易に双眼鏡を奨めるのではなく、その人が何を望んでいるかを良く確かめてから、上記のような双眼鏡を取り巻く環境を考慮したうえで何を奨めるか考える必要があると思うのです。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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双眼鏡で星空観察入門 (1) への2件のフィードバック

  1. 角田敦子 のコメント:

    スタパオーナー様。
    初めてメールします。
    バードウォッチング用にモナーク5の8×42があるのですが、星を見たことがありませんでした。
    半年ほど前にふと思い立って双眼鏡で星空を見てみたら、よく見えてびっくり仰天しました。
    横浜市内の空なので星座の一部が見えるだけですが、とても感動しました。
    八ヶ岳へ出かけた時、丁度組み立て望遠鏡を作る機会があって、15倍と35倍の組み立て望遠鏡もゲットしました。星空も見ました。
    プラネタリウムの観察会にも参加し、図書館で、星座・惑星・宇宙の本を片っ端から借りて目を通しました。知らない事だらけで、愕然としました。
    スタパ様のブログを見つけたら、ブログが素晴らしくて、楽しくて、ワクワクしました。前回の双眼鏡シリーズも興味深く読ませて頂きました。
    私が星に興味を持った途端に梅雨に入って何も見えないので、その間に、私はこの小さな道具で何を見たいのだろうと色々考えました。空も見ないで、です。
    双眼鏡の本もあれこれ借りたのですが、スタパオーナー様のおっしゃる通りで、何だか大きな望遠鏡、やっぱ要る?みたいな気持ちになりました。
    また、双眼鏡は一つしか持ってないので、他の双眼鏡はどうなのか。7×50はもっと良く見えるのかしら、12×70とか買った方がいいかしら、超超初心者なのに、つい道具に走りそうになります。カメラ屋さんで覗かせてもらっても、壁を見るだけだし、店内が明るいので、ピンときません。
    モナークで十分かもしれないけど、これで本当にいいの?初めて買うならどの双眼鏡?買って後悔しない?
    家のベランダから双眼鏡を覗いて星空を眺める、星のアプリで星座を追う。
    でも、もっと双眼鏡や小さな望遠鏡の正しい使い方や、選び方、楽しみ方があるんじゃないかしら。
    ???がいっぱい。でも、こんな初心者が安心して双眼鏡を選び、星見を気楽に楽しめる双眼鏡の本が無い・・・。
    と、思っていたら、スタパオーナー様が双眼鏡シリーズを始められるとのこと。
    わーい!と思わずメールしてしまいました。
    普段仕事で忙しくしていると、星空のきれいな所へは本当にたまにしか行けません。
    旅行先がいつも晴れてるとは限らないし、楽しみにしてた星見の日が、雨ってこともありますよね。
    日常生活で、双眼鏡を使ってちょっと星を楽しむ。なんてのがいいですね。
    この素晴らしい星の世界を今まで知らなかったなんて、本当にもったいない。
    でもみんなも知らないと思うのです。
    新しい双眼鏡シリーズ楽しみに読みますね。1回目で、もう期待通りです。
    長くなってすみませんでした。乱文で失礼致しました。

  2. スタパオーナー のコメント:

    角田さま
    コメントありがとうございます。
    拙ブログをお楽しみ頂きまた参考にして下さっているようで嬉しい限りです。
    角田さまにとってタイムリーな企画のようですね。
    追々双眼鏡の選び方を投稿して行こうと思っていますが、モナーク5 8×42はコストパフォーマンスと
    取り回しの良いサイズ感で天文用双眼鏡としてはベストに近い選択だと思います。
    ネタバレになってしまいますが、8×42は私が個人的にお奨めする天文用双眼鏡の一押しスペックなんです。
    ですから慌てて7×50や12×70には手を出さないで下さいね(笑)。
    重くて、大きくて、夜空を見ると白けて見えることが多くてガッカリしますよ。

    毎日、少しずつしか書けないのでじれったいとは思いますが、気長にお付き合い下さい。

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