超入門 望遠鏡光学 (その11) 分解能について

雨が上がるごとに秋色が濃くなっている感じがします。

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今夜はなんとか晴れて月を見ることができました。(気流は最悪レベルですが・・)

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さて今日は「超々入門」シリーズ・・ 分解能について解説します。

7.分解能について

倍率の話の中で分解能というのは口径に比例して細かく見分けることができるようになり、

分解能(″) = 115.8(″) ÷ 口径(mm)

というドーズの限界と呼ばれる式で計算できるというお話をしました。

それではなぜ、口径が大きくなると分解能が高くなり、より細かいものが見えるようになるのでしょうか?

ひとくちで言うと、レンズの口径が大きくなるほど、レンズの外周で回折される光の比率がレンズの面積に対して小さくなるからです・・・(難しいですね・・・)

・・・もう少し詳しく説明します。

下の図はレンズにより光が集光される過程の光の波面(本シリーズの4章「屈折とは」についてを参照)と、レンズの外周で回折された「素元波」の広がるようすを示しています。(少しごちゃごちゃですみません・・)

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レンズにより波面は同心円弧状に収束され、焦点で一番小さくまとまります。

一方、レンズの縁で回折された光は、縁を起点として同心円状に広がってゆきます。

同心円状に広がった光は干渉を起こし、部分的に明るい場所が(環状に)できます。

これがレンズにより集められた光が完全に点に収束しない理由です。

さてここで、口径が小さいときと、大きいときとで、この回折の影響がどのように変わるか考えてみたいと思います。

たとえば、口径50mmと100mmの望遠鏡で考えると、

レンズの面積は50mmに対し100mmは4倍です。

また、外周の長さ(円周)は50mmに対し100mmは2倍です。

つまり口径が倍になるとレンズの面積は4倍で、円周は2倍ですから、面積に対する外周の影響は2分の1になると考えることができます。

レンズの面積が大きくなればなるほど、外周の光の乱れの影響が面積当たりでは小さくなって、分解能が高くなってゆくのです。

光学の難しい数式を使って理想的に作られた(収差のない)レンズで星の光を収束させると下の図のような断面の明るさのグラフが描けます。

このグラフは上の図のレンズによる集光と干渉による回折パターンを合成(加算)したものです。(詳細は割愛しますがフランホーフェルの回折現象と呼ばれる理論です。 厳密には光の波長ごとに横軸が変わりますが、ここでは人間の暗所視の感度のピーク=507nmを基準に考えます。)

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焦点のピークの明るさから、第1極小と呼ばれる最初の明るさゼロの部分
までの半径は下式で算出できます。

ε = 127″.5 ÷ 口径(mm)

この式で表されるεだけ離れたところに、同じ明るさの、同じ色の星があったと
すると、ピンクの線で表したグラフになり、「多分、分離して見えるだろうなぁ」
と推測することができます。

この限界値をこういった研究をしたレイリーさんにちなみレイリー・リミットと
呼びます。

ドーズの限界よりも少し広い角度ですが、レイリー・リミットは理論値、
ドーズは実験値といった違いで、目の良い人なら理論値以上も見分けられる
ということなのだと思います。

同じ口径の屈折望遠鏡と反射望遠鏡を比較した場合、ほとんどの場合、屈折望遠鏡の方が良く見えます。

反射望遠鏡は主鏡で集めた光を筒外に導き出す必要があるため、どうしても光路上に斜鏡とか副鏡を配置しなければなりません。

言うなれば光路上に邪魔者があり、この邪魔者でも光の回折が発生して焦点像を劣化させるので、小さな望遠鏡では反射は同口径の屈折に勝てないということが起こります。

屈折と同等の性能を得るためにはより大きな口径が必要ですが、そうしてもほとんどの場合反射の方が安く入手できるので、それほど悩む必要はないですね・・・

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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超入門 望遠鏡光学 (その11) 分解能について への3件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、ご意見同感です。

    反射にもいろいろあって、遮蔽の小さくかつスパイダーが薄い高性能ニュートンもあれば、遮蔽が大きくスパイダーも太い写真用途のニュートン、さらにカセグレン系など、様々です。

    いろいろ見比べて見ると、これら設計の違う反射間の性能差が結構ある事がわかります。

    遮蔽率が20パーセントくらいで小遮蔽、そして光軸が正確にあったニュートンですと、分解能は同口径の高性能の屈折に引けを取らないかと思います。

    過剰倍率の限界は口径(mm)×3倍までが現実的と考えます。口径は15センチくらいが分解能を落とさずにこの倍率を使える限界のように思います。つまり15センチ450倍ですね。もちろん気流が最高のときに限られます。自分の経験ではこれが達成できたのは15cm小遮蔽マクストフニュートンでした。

    口径がこれ以上になると口径(mm)×3倍は実現が難しくなります。20cm、25cmと考えるとわかりますが、20cm600倍とか25cm750倍などとなると、日本の気流下では現実的ではありません。口径50cmドブソニアンなどでは口径(mm)×1倍、500倍でも 無理です。気流の関係で口径が大きくなればなるほど出せる倍率が制限されてきます。

    逆に口径が小さくなればなるほど過剰倍率が出しやすくなります。がしかし、それに伴って 分解能も落ちてきますので、 ニュートンでも屈折でも15cm位が最もお得なのかなとも思います。

    屈折の高性能のアポクロあたりだと、とても手が出ませんので15cmF8位で国産、小遮蔽のニュートンがお手頃価格で販売されるといいなと勝手に思っております。鏡面精度はレイリーリミットがクリアされていれば良いと考えます。それより大事なのが遮蔽とスパイダーの太さ、そしてなんと言っても光軸です。鏡面精度は良く議論されますが、1/16λ、1/32λと言っても、光軸がほんの僅かに狂えばこれくらいの精度は一瞬で飛んでしまいますので、私はあまりこだわりません。

    このような眼視専用のコスパの高いニュートン、どこかの国産メーカーに期待したいのですが・・・・・。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま

    実経験に基づく貴重なコメントをありがとうございます。
    様々な機材を使用されて実際にいろいろな条件下でご覧になった、
    とても厚みのある経験談ですね。
    最大有効倍率が口径(mm)の2倍と単純に語れないことを身体で経験されている
    といった感じでしょうか。

    理論値だけの性能が前面に出てしまい、あとは取り回しの良い短い鏡筒が
    もてはやされるのはメーカーの陰謀ですね。

    まあシュミカセばかり使っている私などはまさにその陰謀に踊らされているのですが・・・

    だからこそ(と言うわけでもないですが)小遮蔽のニュートンやマクニュートンには
    あこがれますね。

  3. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、お忙しいところ早速のご返信ありがとうございます。

    私も今までマクニュートン、マクカセ、シュミカセなど閉鎖光学系を随分使ってきました。これらの鏡筒も用途をしっかり決めれば素晴らしい性能を発揮してくれましたが、やはりどうしても順応時間というどうしようもない壁にぶち当たります。

    最近、特に今年は顕著ですが、晴れる晩が非常に少ないという天文ファンにとっては致命的な気象現象に悩まされております。さらに困ったことにたとえ晴れたとしても、いつ急激なゲリラ豪雨に襲われるかわからないと言う恐ろしい事態に直面しております。実際、順応中に急な雨に降られ外に出していたシュミカセが間一髪ずぶ濡れになると言う考えただけでも身の毛がよだつ出来事に数回遭遇しております。
    この傾向は年々ひどくなるようで、このまま行くとまともに望遠鏡で星を観望できる日が、年に数日しかなくなるのではないかと危惧しております。

    そこで、たとえ濡れたとしても、バラして鏡面を洗えるし、かつ閉鎖光学系よりも順応の早いニュートンが良いのではないかと、思うようになりました。15cmくらいであれば順応時間も割と短く済みますし、安心でよく見える、使い勝手が良いという結論に達したのです。

    しかしオーナー様のハイエンド40cmシュミカセは順応させれば見え味は別格でしょう。しかもドームに入っていれば突然の雨にも瞬時に対応できる、実に羨ましい限りです。

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