今日も昼間はまずまずの天候。
なのにやっぱり夜は曇りました・・・・
さて今日も「望遠鏡光学」シリーズです。
8.接眼レンズの謎
8-1. 接眼レンズが2枚以上のレンズを使うのは?
本章は「接眼レンズの謎」という題ですが、主になぜ接眼レンズは2枚(以上)のレンズで構成されているか? という謎(?)について考えてみたいと思います。
このテーマ、実は私にとってもズッ~と長いこと謎で、このシリーズをはじめる前からあれこれ調べたり考えていたのですが、なかなかスッキリした答えが見つからず困っていました。
少なくとも私の手持ちの資料や、ネットで調べた範囲では分かりやすく解説したものはありませんでした。
無いならなおさら分かりやすい説明が欲しくなり、あちこちの資料に断片的に記載されているヒントをつなげ合わせて自分で考えてみることにしました。
夏前にはだいたい答えが出ていたのですが、それをまた分かりやすく解説するというのは、これまた難しくたくさんの図版も起こさなければなりません。
かなり手こずった部分なので内容的には未消化の感はありますがよろしくお付き合い下さい。
さて接眼レンズには様々な形式のレンズ構成があります。
最近の高級な接眼レンズは別として、古典的な(昔から使われている)接眼レンズはほとんど「視野レンズ」と「眼レンズ」という2枚(または2群)のレンズにより構成されています。
モノセントリックと呼ばれる1枚(1群3枚)タイプの接眼レンズもありますが、かなりレアで一般的ではありません。
それでは虫眼鏡のようなシングルレンズでは、全然ダメなのかというとそうでもなく、視野中心はけっこうよく見えます。
へたな安物の接眼レンズよりもよく見えるくらいです。
なのになぜ2枚にするのかとというのが私自身にとって一番の疑問だったわけです。
2枚に分ける最大の利点は(特に高倍率で)接眼レンズの見かけ視界を大きくすることができ、アイポイントを長く取ってのぞきやすくするというところにあります。
なぜそうなるのか・・・ 以降に詳しく解説してゆきたいと思います。
8-2. 単レンズ構成接眼レンズの特性
「なぜ2枚以上なのか」という直接の答えを説明する前に、まず1枚の接眼レンズだとどのようなことが起こるのかというところを説明します。
下の図は望遠鏡の原理を示す光路図です。
この状態では小さな下向き矢印と、大きな上向き矢印が両方とも視野内に見ることができます。
次に焦点距離は同じで径の小さな接眼レンズを使うとどのようなことが起こるでしょうか?(上の図の接眼レンズの中心部のみを使うような形と考えて下さい。)
この状態では焦点距離は同じでも(=倍率は同じでも)レンズ径が小さくなると見かけ視界も小さくなることが分かります。
この原理が本当なのかどうか、実際の望遠鏡に虫眼鏡を取り付けて実験して見ました。
かなりいい加減なセットですが、上の写真のようにしてのぞいてみると・・・
虫眼鏡の径を半分にすると見える範囲も本当に半分になることが分かります。
このことを逆に考えると、同じ倍率でできるだけ広い視野を得ようとすると、接眼レンズの径をできるだけ大きくすればよいことになります。
でもこれって、簡単なようで実はすごく難しい事です。
接眼レンズの焦点距離が長いうちはよいですが、焦点距離が短いけれど径の大きなレンズというのは原理的に作れないからです。
ガラスの屈折率が同じなら、焦点距離はレンズの曲率半径で決まります。
曲率半径が小さいほど焦点距離が短くなるわけですが、
曲率半径×2=球体レンズ
となりこれ以上の大きさにはできないというわけです。
つまり屈折率が同じなら球体レンズの直径に比例して焦点距離が変わるので、小さなレンズほど焦点距離が小さくなるので、見かけ視界も小さくなるという現象が起きます。