今日は気持ちのよい夏空が広がり、とても暑い一日でした。
夜は少し雲が多かったですが、昨晩に続き雲間の観察会ができました。
観察会の後に月が出ていたので撮ろうと試みたのですが、雲が多く気流も悪くて満足な写真にはなりませんでした・・・・
さて今日も「ゼロ星」シリーズ、第3章の続きです。
第3章 星空観察の作法
3-2. 星空観察のための「眼」の知識
3-2-1. 「明順応」と「暗順応」
1-5節でも書いたのですが、私たちの「眼」は常に周囲の明るさに応じて適切に見えるように見え方の調整をしています。
この調節には二つの機構があって、それぞれをうまく連動させて明るさを調整します。
まず分かりやすくて簡単なのは「眼」の中心にある瞳の径を大きくしたり小さくしたりする方法です。
カメラレンズの絞りに相当する機能で、瞳の径は約1~7mmの範囲で調節されます。(個人差はかなり大きいようです。)
瞳が1mmのときと7mmのときでは光が通過する面積は約50倍ほどで、瞳ではこの範囲で明るさ調整をすることができるわけです。
ところで眼の明るさ調整の範囲はそれどころではありません。
例えば昼間、太陽がカンカン照りの状態のときの明るさは10万ルクス(厳密には法線照度)あるといわれています。
また月が満月のときのそれは0.25ルクスといわれていますので、その差は40万倍になります。
さすがに満月の明るさでは新聞を読んだりなどの細かい視作業は難しいですが、人の人相・風体に表情くらいは充分に分かる明るさです。
瞳の調整幅では全然足りないので、どこで調整しているかというと眼の中の光を感じる「網膜細胞」自身が感度を変えることにより調節して行きます。
デジタルカメラの受光素子がISO感度を変えて適正露出を得るのに似ています。
ただし、この網膜細胞自身による感度調整も、瞳径の調整も「明順応」は瞬時に行われる(眼を守るための安全装置が働く)のですが、「暗順応」に関してはかなりゆっくり行われ、明所から暗所への移動では真っ暗闇に完全に順応するのには10分以上かかります。
上図で暗順応中の「A」の部分は瞳が径を広げているところです。
網膜の感度変更も平行して行われていますが、瞳が開ききったあともさらに暗順応を進めて行きます。(Bの部分)
明順応は暗順応に較べるとほぼ一瞬と言える時間で完了してしまいますので、星を見るときはできるだけ明るいものが眼に入らないように注意しなければなりません。
また星を見ようというときは、明るいところからいきなり外に出て見ようとせずに、充分に暗さに目を慣らしてから見るようにしてください。
3-2-2. 「暗順応」の応用
眼の「順応」には少し面白い特性があります。
明るさへの順応は眼全体で起こるのではなく、両眼別々、眼の中でも視細胞単位に起こると言うことです。
これを応用すると星を見るときに使える技がいくつかあります。
1)暗闇に出る少し前に片眼だけを閉じる
これから星を見るために明るい室内から暗い外に出るというときに、外に出る30秒くらい前から片眼だけ閉じておきます。(さらにまぶたの上から光を遮るように手などを被せればベターです。)
そうすると閉じた方の眼だけ先に暗順応が始まり、外へ出た瞬間に眼を開くと(完全ではないですが)先に暗順応が進んでいるので、足下が見えてすぐに活動が開始できます。
手探りでヨタヨタせずに済みます。
ハンドライトが使える状況であれば必要ないですが、それができないときは有効な方法だと思います。
2)暗闇で灯りが必要なときは赤い光を使う
星を見るときに赤いフィルターを付けたハンドライトを使うというのが半ば常識化しています。
暗い場所で夜でどうしてもライトが必要なときは赤い光のライトを使うと良いのです。
眼の視細胞には「緑」「赤」「青」に感じる3種類の色を感じる視細胞(錐体)があって、これとは別に主に動きを認識したり暗いところでよく働く桿体という視細胞があります。
暗闇で特に感度が高くなって光を感じやすくなる細胞(桿体)は、明るいときよりやや青い方に感度がシフトする傾向が強いです。
波長として青や緑からできるだけ離れた赤い光を用いて、赤に感じる細胞だけ明順応が起こっても、緑・青に感じる視細胞には明順応が起こらず暗順応のまま暗い場所での作業が続けられるわけです。
もちろん赤ければどんなに明るくても良いというわけでもないので、暗い場所でのライトは最小限にするのがベタ-です。
(続く)