ゼロから始める「星空観察」(17)

今日も雨・霧の一日でした。

こう天候の悪い日が続くと、庭の植物や、木製のデッキなどが腐り始めています。

困ったものです・・・・

それでも今夜も「ゼロ星」シリーズです。

第4章 星空観察の実習

4-1.星座早見盤を使おう

1)星座早見盤は星空観察の基本ツール

星座早見盤というのは実際の空で星座を見つけるための最も基本的、かつ強力なツールです。

「日付」と、「時刻」の目盛りを見たい日時に合わせれば、楕円形の枠のなかにその日時の星の配置を示してくれます。

・方位(北とか南とか)を把握していないといけないこと
・見る方位に応じて早見盤の上下を回転させなければいけないこと
・早見盤上に描かれている星座の大きさと実際の星座のスケール感が異なること

など使いこなすためには若干の慣れが必要なのですが、とにかく星座を覚えるためには安くて強い味方です。

前章で紹介したスマホのプラネタリウムアプリも星座を覚えるのには便利かも知れません。

確かに、スマホアプリは「あの星は(あの星座は)何かな?」というときにはとても役に立つのですが、星空を全体的に把握しようとか、時間の経過に応じて星座の位置がどのように変化して行くかといった、宇宙のなかにある地球というダイナミックな感覚は星座早見盤の方が身につきやすいです。

また、目的地まで車で行くときに、スマホアプリはカーナビで、星座早見は地図を見ながら行くのと似ていて、カーナビより地図を見ながらだと道が覚えやすいように、星座早見のほうがスマホアプリより星座が覚えやすいように感じます。

星座早見盤を使いこなすと、地球の自転に応じて、北極星(正確には天の北極ですが)を中心に星空(天球)が回転したときに方角により星座がどのような動きをするのか。

今見えていない星や星座が、何時になったら昇ってくるのかとか、何月になったらこの時間に見えるようになるのかといった、星を趣味とするうえで本当に基本的な部分が身につくのです。

精密に作られた星座早見盤では、うまく使いこなすことにより、地方恒星時(あまり使うことはないですが)、おおよその日の出、日の入りの時刻および方向なども読み取れるようになり、星見の計画を立てたりするのにも役立ちます。

2)星座早見盤の使いこなし

星座早見盤は外周に月日が書かれた星図の板と、見える空の範囲が空いて、外周に時刻が書かれた2枚の板から構成されています。

まずは観察する日付と時刻を板の回転により合わせます。

日付と時刻を合わせるとその日時に見えるであろう星座が早見盤の窓に表示されます。

使い始める前に方角が全く分からないときは方位磁石で概略の方位を把握しておくと良いでしょう。

早見盤を使用するときに多くの方が躓くのは、早見盤を持って見下げている時点で通常の地図と「東西」が逆になっているところです。

実際に早見盤をフィールドで使うときは早見盤を空にかざして使うので東西が逆になるのは当然なのですが、通常の常識だと理解できず思考停止してしまうかたが多いのです。

もっと具体的には、東方向の空を見上げるときには早見盤の東を下にして空にかざして見ます。

同様に南であれば南を下に、北方向であれば北を下(早見盤は逆さま)にして空にかざすのです。

まずは自分が知っている星座を目印にその周辺の星座を見つけて行くと星座のスケール感が判り見つけやすいです。

3)星座早見盤 思い出ばなし

なにを隠そう、私が生まれて初めて買った天文グッズは星座早見盤でした。

今から50年も前のことですが、中学1年の夏休み、デパートで天文関係のイベントがあり、それを見たあとの売店で望遠鏡を買おうとしたのですが、親に「どうせ使えない」とか、「すぐに飽きる」とか散々に言われ、やむなく妥協して星座早見盤を買うことになったわけです。

今にして思えば、このときいきなり望遠鏡を買わずに、星座早見盤を買ったというのが、天文を一生の趣味とするきっかけになったかも知れないと思えます。

せっかく買った早見盤、私の天文趣味は星座を覚えることから始まりました。

いきなり望遠鏡を買っていたら、今日まで趣味が続いていたかどうか・・。
ペンションのオーナーなんかやっていたかどうか・・・。

星座をたくさん覚えることがなければ、これほど長く続く趣味にはならなかったのではないかと思えるのです。

当時の東京でもすでにかなり光害が強く、3等星もかなりあぶないレベルでしたが、それでも端から星座を覚えていきました。

それと同時に北極星を中心に回転する天球の回転についての理解も自然に身についていたのだと思います。

翌年の夏、ついに我慢しきれず、親の反対を押し切って赤道儀式の望遠鏡を購入しました。

入門用望遠鏡というと普通は経緯台式というのが一般的です。
(スタパで販売している入門用望遠鏡もそうです。)

赤道儀式は天体の動きを追尾するのに便利だけれども、使い方が難しいというのが一般的な考え方だからです。

スタパに来られるお客様のなかにも、赤道儀式の望遠鏡を買ったのだけれども複雑(そうに見えるよう)な動きを理解できず、とんでもない使い方をされているかたを見かけることがあります。

でも私が買ったのは、(小さいけれど)赤道儀式の望遠鏡でした。
1年間星座の(天球の動きについても!)勉強をしたおかげで、すんなり使いこなすことができたわけです。

写真の鏡筒はこのとき買ったもの(架台・三脚は散逸)

今になって、振り返れば「そうだったんだ」と理解できるようになったのですが、赤道儀がすんなり使いこなせるかどうかは、天球の動き(=地球の自転と公転)が体感的に理解できているかどうかなのではないかと思うようになりました。

さて・・・
星座早見盤の話からずいぶんと話がそれましたが、星座早見盤を使いこなすことによって、天文の趣味が大きく広がる可能性があるというお話でした。

星座早見盤を手元に置いてぜひ使いこなせるようになって下さい。

(続く)

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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ゼロから始める「星空観察」(17) への4件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんにちは。

    星座早見板、私も星の趣味を始めて早くから使っていました。今からもう半世紀近く前です。このタイプの浅いお椀型のものです。もっともあの頃はこのタイプしかなかったように思います。使いやすく、オーナー様おっしゃるように私もこれでずいぶん星座の形を覚えました。

    赤道儀ですが、話には聞いたことがありましたが、本当に使い方がわからない人がいるとは、驚きです。写真となれば別ですが、眼視ならば極軸を大体北に向けて、本州中部地方辺りならば角度を35度くらいにするという、アバウトな合わせでも十分なはずです。これは初心者だからできないというようなレベルではないと思います。現にオーナー様同様、私も初心者の時、かなり早い時期から赤道儀を使いました。誰からレクチャーを受けたということもありませんし、普通に最初から使えました。

    しかし、赤道儀の場合はそれなりに広い空間があったほうが使いよいというのはあると思います。また、経緯台と比較して値段が高く、重いということも事実です。したがって小口径の屈折では実用上経緯台で十分で、初めて買う望遠鏡に経緯台を選ぶというのは実に真っ当な考え方だとは、思います。

    赤道儀の圧倒的な優位性としては恒星を使った光軸調整ですね。特にカセグレン系の望遠鏡の場合ですが。これを経緯台で行うとなると相当厄介です。時間も手間も、その大変さは赤道儀を設置することとは比べものになりません。しかし小口径の屈折では光軸調整の必要がないのでこの点だけ考えれば経緯台で十分となります。

    結論として、初めて使う望遠鏡は実際問題として経緯台で良いと思いますが、最初から難しいと言って赤道儀を敬遠してしまうのではなく、誰でも簡単に使えるのだということを初心者の方々にわかってほしいと思います。どうも最近の傾向としてちょっとややこしそうなことは初めからごめんだという風潮が、星の趣味だけにかかわらずあるような気がしてなりません。是非星祭などで実際に扱ってみてその簡単さを体験していただければなと、思います。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    アメリカ遠征を挟んでいるので返信が遅くなり申し訳ありません。
    いつもながら適確なコメントをありがとうございます。
    星座早見盤で星座を覚えると、星を見上げるだけで自然と方角や星の運行方向が分かるようになります。
    なのであまり悩むことがなく赤道儀の使い方も理解できるのですが、星座さえも分からない人が赤道儀を購入してしまうととても苦労することになるのです。
    望遠鏡初心者に推奨する架台として
     星座がある程度分かる または 天球の運行についての理解が有る などの基礎知識が有る場合には 「赤道儀」を
     星座が分からない または 東西南北の方向感覚が希薄で星の動きがあまり理解できていない場合には 「経緯台」を
    という線引きをしておけばあまり恨まれずに済むのではないかと思っています。
    (もちろん常用する使用場所の制約なども考慮に入れる必要はありますね。)

    でもゼロ初心者から見れば赤道儀を使いこなせるというだけでもマニアに見えるかもしれませんね・・・・

  3. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、お帰りなさい。長旅、お疲れ様でした。ブログを拝見させていただいてこちらまで元気を頂くことができました。ありがとうございます。
    また、お疲れのところお返事いただいたことを感謝いたします。

    さて、そもそも星座がわからない、恒星の動きがわからない人がいる。うーん、そうなのかあ。それならばおっしゃる通りの対応にならざるを得ないですね。
    しかし、思い出してみれば星座、星の動きに関しては、確か私自身小学校4年か5年の理科の授業でしっかり教わた記憶があります。授業だけでなく、実習もありました。

    実習とはどんなものだったかというと、晴れた日、実際の星空を見て数時間おきにそのとき見える星座をスケッチして天球上の位置を移動する様を記録するというもの。途中で曇ることもあるので、1日だけではなく、数日にわたって行い、その結果をまとめてレポート提出するというものでした。あの当時、我が家の庭にコンクリでできたそこそこ大きな物置があって、クラスの友達4〜5人くらいその上に登って、空を見上げ、行いました。

    アマチュア天文家として今年で48年目となりましたが、今振り返って思えばアマチュア天文家として必要な知識のほとんどを、この時期に教わったと思います。あの頃の小学校教育は、充実していたのですね。

  4. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    どうもありがとうございます。
    子供の頃にした体験や、得た知識というのは一生ものですね。
    数日に亘って観察させレーポートを提出させるというのは、星のことをよく知っている先生ならではないかと思います。
    また真面目にレポートをまとめる生徒も沢山いたのでしょう・・・
    今だと「夜はダメ」とか「塾があるから」なんてことになりなかなか難しいのでしょうね。

    星を見る趣味が長くなると「ゼロ初心者が分かること・分からないこと」が見えなくなりがちです。
    なので、この仕事をしているとときおりゲストの「?、?、?」に出会うことがあり、そのたびに初心に返らねばと思います。
    そんな自戒を込めて本シリーズを書いて、備忘録にしようと考えているところです。

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