ゼロから始める「星空観察」(20)

今日はやや雲の多い天候。

スタパ周辺の季節はすっかり秋です。

一昨日の夜は良く晴れていたので観察会の後に久々にスタパでの星景写真を撮りました。

月が明るかったのであまりくらい星は写りませんが、この時刻になると夜空もすっかり秋の星座が幅を利かせるようになります。

さて今夜も「ゼロ星」シリーズが続きます。

第4章 星空観察の実習

4-3. 観察会に参加するときの心得

望遠鏡を買う前(買った後でも)、観察会などで望遠鏡を覗かせてもらうときの注意点を一つ伝授しておきます。

望遠鏡を覗かせてもらうときに、真っ先に「この望遠鏡、何倍ですか?」と聞く人がかなり多いです。

でもこれをやってしまうと解説員は「あっ、この人、素人さんだな・・・」と軽く足下を見られることになります。

なぜなら、確かに倍率は望遠鏡の性能を示す指標として重要なものではあるのですが、それ以上にどれだけたくさんの光を集めることができるかのほうがはるかに重要なのです。
光をたくさん集めるためのは対物レンズがより大きくする必要があります。

光をたくさん集めることができれば、より暗い星を見ることができますし、倍率を高くしても暗くならずに(理論的にボケも少なく)見ることができます。

つまり基本的に望遠鏡の性能というのは「対物レンズの口径」(略して「口径」)で決まります。(厳密には屈折とか反射など光学系の違いや口径比などの違いにより少し変わる部分もありますがここでは割愛します。)

また口径が決まれば自ずと出せる「有効最大倍率」(それ以上の倍率にしても理論的にそれ以上新しく見えるものはないという倍率)が決まってしまいます。

同じ光学系の望遠鏡が並んでいます。みな見え方が同じなら大きい望遠鏡は不要ということになりますね。

一般的には口径(mm数)の2倍が「有効最大倍率」ということになっているので、観察会などでこの倍率を超えて見せるということはほとんど無く、見てもらう天体に最も相応しく除きやすい倍率にしてセットすることが多いのです。

視界の広さなどを把握したくて、倍率を問うことは稀にあるのですが、倍率が高いほど偉いと勘違いしている素人さんほど倍率を聞きたがることが多いので、「倍率を聞く人」=「素人さん」という構図になるのです。

観察会などで足元を見られたくないのであれば「何倍?」と聞きたいのをグッとこらえ「この望遠鏡、口径は何ミリ?」と聞いて下さい。

ちゃんとした解説員であれば使用している望遠鏡の仕様は把握しているはずですから、すぐに「○○ミリですよ」と答えがあるはずです。(この時点でハッキリした答えがなかったら少し怪しい解説員だと思って良いです。)

どうしても倍率が知りたければその上で「で、何倍で見ていますか?」と聞きましょう。

例えば口径100mmで「100倍ですよ」と答えがあれば(この場合有効最大倍率は200倍なので)、「ああ、まだ余裕のある倍率ですね」なとどつぶやけば解説員は心の中で「この人はかなり詳しい人だから油断できないぞ」、「いつもよりたくさん見せなければいかないかなぁ」などと思うので、足元を見られる心配がなくなります。

(続く)

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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ゼロから始める「星空観察」(20) への6件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんばんは。

    望遠鏡を選ぶこと、本当に難しいですね。
    この趣味を初めてからほぼ半世紀になりますが、未だに正解には至っておりません。

    難しい理由は、全ての鏡筒を、自分で比較が出来ないからではないかと、最近では思っております。どれが良いかを正確に判断するには、同じ条件で、多数の望遠鏡を並べて比較するしかないのだけれども、それは現実的に不可能ですから。

    望遠鏡を評価する基準には3通りあるように思います。

    グレード 1 ・・・高精度の光学系を設計通りに正確に組み上げられたほぼ欠点
    のない望遠鏡

    グレード 2 ・・・実用上許容範囲に入っているが光学系の精度や組み付けなど
    にやや難のある望遠鏡

    グレード 3 ・・・光学系の設計や精度、組み立てなどが許容範囲を超えて難の
    ある望遠鏡

    私の独断でこのように分類させていただきました。これらは光学系の違いによる見え味の差という要素は全く含んでおりません。
    おそらくオーナー様おっしゃる粗悪望遠鏡とは上に挙げたグレード3のものを指すのだと思います。

    グレード3のものについてはオーナー様の丁寧なご説明によりこれ以上のコメントは不要と思います。
    ここで私が強調したいのがグレード1と2の差についてです。グレード2、実用上問題ないのではないかと思われがちですが、これが実際に惑星を 見るとなるとグレード1との間にはかなり大きな違いになってきます。しかし実際にはグレード1の望遠鏡を入手することはかなり困難です。
    私はこの半世紀の間で実に51台の望遠鏡を使用してきました(新品、中古品ゴチャ混ぜです。が、この中でグレード1とはっきり言えるのは5台のみ(これは新品4台、中古品1台)です。購入したのは全て望遠鏡専門店ですので、ホームセンターからのものは1台も含まれておりません。その他の43台が、グレード2です。そして残りの2台がグレード3(2台とも新品)でした。俗に当たり鏡筒、外れ鏡筒ということがありますが、前者がグレード1、後者がグレード3と、解釈いただければ幸いです。いかに当たり品が少ないか、ほとんどのものは 実用上 は問題のないレベルのものかと言うことが自分の経験上わかります。また、中国製や台湾製の鏡筒のレベルが近年非常に向上しており、実はグレード1のものの中には中国製鏡筒も含まれております。改めて誤解のないように言いますが、あくまでも望遠鏡専門店、ないし専門知識のある販売所での購入の話です。

    最後に、グレード1のものの惑星像を一度見てしまうとその圧倒的な見栄味に驚嘆します。これは屈折、反射、シュミカセ、マクカセなど、光学系の違いにではありません。もっと本質的な問題です。この感覚を味わうためにいろいろな望遠鏡を買い漁る人生を送ってきたし、それは決して 無駄ではなかったと思っています。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    いつもながら含蓄の深いコメントを頂きありがとうございます。
    望遠鏡のグレード分けの考え方、とても参考になります。
    たくさんの望遠鏡をされてきた方のみが体得できる蘊蓄ですね。
    はじめに出会う望遠鏡がどんなグレードの望遠鏡なのかによりその方のその後の天文人生が変わるかもしれません。
    もちろん人それぞれの望遠鏡にかける思いや経済状況により関わり方は様々なものになると思います。
    でも願わくは小澤分類グレード2以上の望遠鏡に出会って頂きたいものだと思います。
    ただ、グレード3レベルの存在が全て「悪」か?というと最近はそうでもないという気がしています。
    必然的にグレード3を初めての望遠鏡として入手される方が多いと思うのですが、
    それでこんなものかとあきらめてしまう方と、もっと上があるはずと次を考える方がいると思います。
    絶対的に後者は少数派かもしれませんが、そういう意欲のある方のほうがこの趣味を長く続ける上での糧として
    グレード3クラスを楽しむことができるのではないかと思うからです。
    グレード3がなければ上位グレードの良さも分からないからです。
    なので個人的にはグレード1の機材ばかりで固めている方より、いろいろなグレードの長短を理解して
    使いこなされている方のほうが親しみを持てます。

  3. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、お忙しいところ、またご旅行のお疲れもまだ残ってらっしゃる時にお返事頂きありがとうございます。

    オーナー様の、より初心者目線のご意見は素晴らしく、私も大いに賛同いたします。

    実は私のファーストスコープも、まさにグレード3でした。このグレード3ですが、私の中ではピントがどうしても合わないものや、研磨や組み付けの精度不足などにより球面収差が測定不能なほど過大になっていて、まともに結像しないものと言う感覚です。私のファーストスコープは設計ミスによりピントが合わない、ものでした。間違いなくグレード3です。これは確か地元の眼鏡店で購入したものですが、前回のコメントではこの望遠鏡は入れてありませんでした。これを入れると私のもののグレード3のものは合計3台となります。

    私もこのグレード3の望遠鏡から天文人生が始まりました。これだけダメな望遠鏡をはじめに使った時、何かの 間違いだと思いました。こんなはずはないと。そしていろいろな変遷の末、まともな望遠鏡を入手したのですが、はじめの望遠鏡を手にした時にこの趣味をやめようとは決して思いませんでした。
    しかしこの望遠鏡はその当時かなりメジャーなメーカーであり、やたらに高倍率を歌うこともなく、後に色々な人に聞くところによれば平均的にはかなり評価の高いものだったようです。すなわちこれは設計そのものの欠陥というよりは大量生産時にたまたま出たハズレ品を私が引いてしまったと言うのが真相だったのかもしれません。

    思えば半世紀前のあの時代はそれこそやたらに高倍率を歌うものはなかったように思います。大半は眼鏡店かデパートが扱っていて、その他はメーカー直販で、今で言う望遠鏡専門店はまだ黎明期でした。デパートは全国展開している大手デパートのメガネ売り場に大々的に望遠鏡が陳列され、さながら今の望遠鏡専門店のような装いだったと記憶しています。したがってハズレ品はたまに出たとしても、今のようなあり得ない倍率を歌うような本質的にひどい粗悪望遠鏡も少なかったのではないかと、推測します。

    その意味では、私たちが初心者であったあの時代は今よりも幸せだったのかもしれません。

  4. 小澤利晴 のコメント:

    もう1つ、今現在、中心的天文ファンの平均年齢は、私が思うに50代から60代くらいではないかと推測されます。ちょうど池谷関彗星、ベネット、ウエスト彗星、アポロ計画全盛の時代に少年期だった年齢層です。その頃、テレビではウルトラQや、ウルトラマン、ウルトラセブンと言った科学ものが流行っていました。あの当時は望遠鏡も完成品だけでなく、自作派 も多くいたように記憶しております。ミラーの研磨も、流行し、望遠鏡趣味全盛と言える時代でした。

    子供の遊びにしても、休日や放課後は外で缶蹴りをしたり野球をしたり、夏から秋の夜は私の家の周りが雑木林だったこともあり、くつわむし、スズムシ、マツムシ等取ってきたり、小川の近くではホタルを狩って家の蚊帳に放して楽しんだり、タガメやヤゴ、タイコウチと言った水生昆虫を楽しんだりと、1日が24時間では足りないくらいでした。
    今やそのような環境が都市部でなくても無くなってしまい、子供達の興味は自然と家の中で楽しめるゲームへと変わってきたように思います。

    そのように周りの自然環境が大きく変わってきた今、天文趣味に関してもあの頃と同じような目線で考えてはいけないのではないか、と、思うようになりました。

    オーナー様のおっしゃるように、今の子供、初心者がなぜ星座の動きがわからないのか、光学ファインダーで天体の導入ができないのかと言う問題の本質は、実はこのような環境の変化により自然科学に対する興味の度合いが我々の頃とは全く違ってきているということなのかなとも思います。

    そう考えると結構深刻ですね。

  5. 小澤利晴 のコメント:

    長々とすみません。随分マイナスな意見を述べてしまいましたが、そろそろ終わりにします。

    ではどうするか。実はオーナー様のように星の魅力、望遠鏡の魅力について発信し続けること、また市場に良質の望遠鏡を販売し続けるメーカーの存在、これに尽きると思います。

    実は今のような環境のもとでも意外と星が見えるのです。この、「以外と星が見える」と言うことを発信し続ける事が我々引退が近い天文ファンの最大の務めなのかなと 思います。

    具体的には、東京都内でも月や惑星は十分にみえるし、星雲星団 も、明るいものならば望遠鏡を使えば十分に見える、というか十分に楽しめます。以外とそれを 認識している人が少ないのです。銀座のど真ん中でも、肉眼で木星は余裕で見えるし、望遠鏡を使えば縞模様も十分楽しめるのです。実は惑星の表面模様は透明度が高い地方の山の中よりも、どんよりした都会の夜空の方が好都合と言った意見もあります。それに気づいてさえくれれば、望遠鏡の趣味を始める人はどんどん増えてくるはずです。何しろ今自分が生きているのは地球という天体だからです。誰しもが天体に興味を持つはずではないのか、と、思います。

    望遠鏡メーカーにお願いしたいのは、都市部でも活躍できる、月や惑星をシャープに解像力高く 見せてくれる望遠鏡をどんどん作っていただきたいという事、月や惑星がよく見えれば、空の暗いところで星雲星団も必ず良く見えます。口径や光学系にとらわれる事なく、まずは初心者に使い良い、光学系の良いものを出して欲しい、という事に尽きる のではないかと、日々感じています。

    オーナー様のブログで随分長々とコメントしてしまいました事をお詫び申し上げます。

  6. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    思いのこもった長文のコメントをありがとうございます。

    良い時代に育つことができたと思うのは全く同感です。
    戦後の混沌から急速に整備が進む時代、整備が進むとともに管理が行き届く時代を生きてきたと思います。

    管理を徹底するために誰がやっても同じ仕事ができるようにとマニュアル作りにいそしんだり、効率向上のために日夜知惠と体力を振り絞り続けたというのが私たちの世代だったような気がします。

    その結果、社会全体の効率やレベルが上がったのは事実なのだと思うのですが、その反面、マニュアルがないと何もできない、また見かけ無駄と思えること、面倒くさそうなことは極力避けて通る人達の増加に繋がったのかと思うと本当にそれで良かったのか・・・・と少し自問したくなります。

    まあ今の若者たちが年老いたときに良い時代に生きることができたと思える世の中になるのならそれで良いのだと思うのですが・・・・・(そうなりそうもないのが悲しいところです)

    さて愚痴はともあれ、今の時代はまさにマニュアル社会、そしてほとんどの答えはネット上にあるといった雰囲気になっています。

    各部門のエキスパートがネットに得意分野の様々な情報を上げておけば、どこかで誰かが必要とするときにきっと活用してもらえるだろうというのが私の考えです。

    日々のブログでネタを少しずつ蓄積しつつ、「蘊蓄の部屋」や他ページにまとめて行く方式で進めるのが私のスタイルです。

    1人での作業ですのでなかなか進みませんがライフワークとして進めて行こうと思っています。

    多くの方が様々な観点から発信をして頂けるようになると、もっと層の厚い情報源となって、必要な情報が得やすくなるのではないかと思います。

    そしてたくさんのエキスパートが同じことを正論として述べるようになれば、メーカーもそれに従わざるを得ないような状況になると思います。

    そういった意味でも発信をし続けることが大切なのだと思います。

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