今日の昼間はまあまあの青空でしたが、夜には残念ながら曇ってしまいました。
さて今日も「ゼロ星」シリーズ、春の星空解説が続きます。
第5章 四季の星空解説
5-3. 春の星空解説(続き)
5-3-5. 春の天窓
さてこれまでにも述べて来ましたが・・・
春の夜空というのは星の数が少なくて、少し寂しい感じがするのですが、これは私たちの太陽系が属する星の大集団である銀河系(=天の川)が見えにくい季節だからです。
銀河系というのは平べったく渦を巻いた形なのですが、地球が太陽の周りを公転する軌道面と60度ほどずれているので、地球の軌道面に対する地軸の傾きが加味されると、地平線に対してほぼ垂直に立ち上がるように見えたり、地平線上を取り巻くように見えたり、1年サイクルで常に変化して行きます。
この時期は天の川が地平線を取り巻くように見える時期です。
天の川が見えにくいということは天の川(=銀河系)に属する星たちも見えにくいということになり、他の季節より星の数が少ないのだと言うことになるというわけです。
(ここまですでに解説済みですが・・・)
前置きが少し長くなりましたが、天の川が見えず、天の川の星に邪魔をされることが少ないということは、銀河系の外が見えやすいということになります。
銀河系の外が見えやすいということは、銀河系の外にある銀河系のような存在(「銀河」と言います)がよく見えるということになります。
この季節、天頂にはかみのけ座というマイナーな星座があるのですが、このあたりが天の川から最も離れた領域で、銀河系外のはるか遠くにあるたくさんの銀河を観察することができるので「春の天窓」とか「銀河の天窓」などと呼ばれています。
下の画像はかみのけ座-おとめ座の境界付近にある銀河(水色の楕円形は全て銀河)を示しています。
かみのけ座とおとめ座の境界近くには「マルカリアンの鎖」と呼ばれる銀河が鎖のように繋がって並んでいる領域があります。
上の写真はマルカリアンの鎖の起点なるM84-86(おとめ座)などの銀河団です。
下は200mmの望遠レンズで撮影した写真ですが、中央付近のM84-86から左上に伸びるマルカリアンの鎖が写っています。
詳しく見るとこの写真の中には30個くらいの銀河が写っています。
これらの銀河は5千万~数億光年くらいの彼方にあるもので、多数の銀河が狭い範囲であちこちで見られるのは「春の天窓」ならではのことです。
春の星空の上に宇宙の深淵が口を開けていると思うと、それだけで自分たちが宇宙に浮かぶ取るに足らない存在であることを思いだして、少し心細い気持ちになる方もあるかも知れません。
でも天文学の最前線はまさにこの「春の天窓」の向こうに焦点を当てて宇宙誕生の謎に挑んでいます。
人類の飽くなき探究心の向かう先でもあるのです。