低倍率ミニスコで遊ぶ(続き)

今日はやや雲が多くて陽射しが弱いうえに風が強くて、とても寒い一日でした。

今日も月がきれいでした。

さて昨日の続き。

昨日も書いたのですが、どうも望遠鏡というのは倍率が高いほど偉いと思われる傾向が強くて、マニアックなレベルになってもこの望遠鏡は何倍くらいまでちゃんと見えるかが重要な要素になることが多いです。

初心者の方も倍率が高いほど高性能だと勘違いしている方がほとんどなので、市販される望遠鏡セットの多くは最低倍率が30~50倍くらいに設定されていることがほとんどです。

月や惑星を見ようと思えばこのくらいの倍率からスタートするのがよいのですが、このくらいの倍率でも、すでに想像を絶するほど大きく見えますし、見える範囲は驚くほど狭くて、視野内に目的の天体を導入するのにもそれなりの練習が必要になるほどです。

10倍未満の手持ちで使用する双眼鏡とのギャップはかなり大きくて、違う世界の使い勝手になりますし、低い倍率にしたくてもできない物が多いのです。

でも天体の中には10倍未満の双眼鏡と望遠鏡(30~50倍)の中間くらいの倍率で見た方が面白いものも結構あります。

例えばプレアデス星団(昴)やアンドロメダ銀河などは15~25倍くらいが一番面白いですし、天の川沿いの眺めを楽しむにも15倍前後の倍率がお奨めになります。

昨日紹介したF5クラスのミニスコたちはまさにこの辺の倍率が一番得意な望遠鏡と言えます。

このクラスの望遠鏡の場合、安価なアクロマート式レンズだと色収差や球面収差という見え方を悪化させる要素が強く出やすいので、高倍率にしてもボケがひどくて細かいところが見てきません。

通常望遠鏡の実用最大倍率は「口径(cm)×20倍の倍率まで」といわれていて、例えば口径6cmの望遠鏡であれば120倍くらいまでの倍率が出せるのですが、F5クラスの場合は「口径(cm)×10倍の倍率まで」がおおよその限界になります。
(高価なアポクロマート式レンズでは「口径(cm)×20倍でも大丈夫です。)

口径4cmなら40倍、6cmなら60倍とちょっと物足りない感じの倍率ですが、40倍あると、とりあえず月のクレーターはハッキリ見えますし、土星の輪の存在も確認することができます。

史上初めて望遠鏡を宇宙に向けて様々な発見をしたガリレオさんの望遠鏡が40倍くらいであったことを考えれば十分な倍率であるとも言えます。

そういった意味で双眼鏡並みの低倍率から4~50倍の倍率が守備範囲になるミニスコープは、星好きならぜひ1台は持っていたい物だと思うのです。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
カテゴリー: 天文関係, 月・惑星, 望遠鏡・機材 パーマリンク

低倍率ミニスコで遊ぶ(続き) への2件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんばんは。

    今年も残すところあとわずかとなりました。今年はオーナー様のブログで様々な情報を学ぶことができ、とても勉強になりました。ありがとうございました。

    今回のミニスコープに限らず、オーナー様の「売っていないものを最大限に利用する」ために様々な工夫をされているのはとても素晴らしいことだと思います。

    倍率についてですが、高倍率が(言い方を変えれば過剰倍率が)どこまで出せるかという事でその望遠鏡の性能を測りたくなるのは、僕の癖です。1つの目安ですが、10cm以下の鏡筒であれば口径(cm)×30倍の過剰倍率まで結像可能かどうかというところが高性能の判断基準としています。もっともこれは今回の、単焦点ミニスコープには当てはまらない話で、ましてや、いわゆる粗悪望遠鏡のような初心者を騙す非常識な代物とは全く別次元の議論です。

    望遠鏡の評価は案外難しく、心臓部である光学系の研磨の正確さのみならず、レンズの素材、レンズの組み込み精度や、光軸、遮光、全体の鏡筒の剛性や、接眼部の精度、もちろんアイピースの性能、そして架台や三脚の剛性や動きのスムースさ、そしてもっとも重要な要素としてシーイング及び順応、などなど実に多様な要素が影響してきますので、望遠鏡全体及び環境をトータルで捉えて初めて評価できるものです。しかしながらそれらを勘案した上で、やはり何と言っても実際に眼視で惑星を見たときに主観的にもっともわかりやすく性能評価できる要素を1つ上げろと言われたら、「倍率」だと思うのです。そして口径(cm)×30倍と言う目安はまともに議論できる最大値付近ではないかと認識しています。ここで口径が問題になってきますが、先ほど挙げた、10cm以下と言うのは、それ以上の口径になるとシーイングの影響で日本の本州ではとても判断できなくなってしまうと言う理由です。

    初心者の方々が対物レンズの性能に全く見合っていない超高倍率の視野を見せられて、それで一気に望遠鏡に幻滅してしまうという議論がなされることは多いですが、これは実際全ての人に当てはまるのでしょうか。実際にそのようなものを見せられた場合、いかに未経験者といえども、この製品はおかしいと気付き、まともなものが求めたくなる人も相当数いるのではないかと。僕自身最初の望遠鏡は粗悪も粗悪、超粗悪品で、いかにしてもピントが合わず、全く使い物にならないものでした。しかし僕の場合はその経験によって余計に望遠鏡に対する興味をかき立てられ、その後にまともな望遠鏡を購入して天体の美しさに感動し、それから半世紀近くたった今でもこの趣味を続けられる幸せを感じております。

    それでは、オーナー様、皆様、良いお年をお迎えください。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま

    いつもながら鋭い考察をありがとうございます。

    出来のよい望遠鏡における最大倍率について「口径(cm)×30倍」というお話しは全くその通りで、拙ブログでは「超入門 望遠鏡光学 (その10) 倍率を考える 3」にて紹介させて頂いています。

    私自身も新しい望遠鏡を入手したときに、その望遠鏡の性能を見極めるために、やはり過剰倍率耐性のテストを必ずと言って良いほどします。

    またトータル性能が重要なのはもちろんですね。

    初心者だましの超高倍率望遠鏡が困るのは、ほとんどと言って良いほど倍率に見合った架台が組合わされていないことだと思います。

    100倍以上の倍率を使用するためには、それなりに作りのよい(ガタやバックラッシュのない)架台が必要だと思うのですが、高倍率を売りにした製品に限ってフニャフニャ、ガタガタの架台が付いています。

    面白いことにう、まく見えないとか、うまく使えないよ相談される初心者のほとんどは、とにかくまずは高倍率で見ることを始めます。

    なのでこういった製品を入手した初心者のほとんどは「望遠鏡って難しい」、「良く見えない」という印象をすり込まれてしまいがちです。

    これを「おかしい!」、「もっと見えるはずだ」と乗り越えられる人はかなり少数派なのではないかと思うのです。

    私も0号機は小澤さまと同じく月のクレーターさえまともに見えない粗悪品からのスタートでした。

    あきらめが悪いのか、執念深いのか(小澤さまも?)、おかげで今の自分があると思っています。

    それでは来年も楽しい星見ライフができますようお祈りしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください