今年の夏は「火星大接近」(その5 完)

今日は曇り空、午後からは雨になってしまいました。。

数日続いた寒さ(?)は少し和らいだ感じです。

さて少し間が開きましたが今夜も火星ネタのお話し、火星の見方についての続きです。

望遠鏡で見る火星は予想外に小さく、模様はとてもコントラストが低く淡く見えます。

かなり慣れないと写真のようには見えてきません。(写真はコントラストを強く強調しているので慣れてもこんなにハッキリ見えません。)

ですから前回解説したように出来る限り眼の中心にある解像度の高い部分で見るように集中して観て下さい。

漫然と見るだけではいつまで経っても見えてきません。

火星の場合少し救いがあるのは木星や土星に較べ惑星面の輝度が大幅に高いので、少し過剰な倍率にしても意外に良く見えることです。

通常、望遠鏡の倍率は口径mm数の2倍(例えば口径80mmなら160倍)が有効最大倍率であるといわれています。

これ以上の倍率にしても像がドンドンぼやけて、暗くなってしまい、新しいものは何も見えてこないということになっています。

しかし火星の場合、前述のように惑星面の輝度が高いので、過剰倍率にして観察してもそれほど暗くならず、元々とても小さいので少し大きくしたほうが見やすくなることもあるのです。

もちろん過剰倍率を使用しても極端なアラが出ないような優秀な光学系を使うことが前提です。

屈折望遠鏡の入門用として販売されている上のようなコンパクトなタイプ(口径比F8未満)では、あまり高倍率は望めません。

アクロマートタイプならF12以上、アポクロマートタイプでもF8以上が無難なところです。

また微動装置の付いていない華奢な架台では高倍率で天体の追尾が非常に難しくなります。

火星をしっかり見るためには光学系・機械系ともに充分出来の良い望遠鏡が必要になると考えて下さい。

幸い今年の大接近は2003年のそれより1ヶ月近く早く最接近となり火星の南半球が夏を迎えるところなので、南極冠がかなり大きくて小口径、低倍率でも極冠だけは良く見えると思います。

夏休み中に継続してみているとこの南極冠がドンドン小さくなって行くのを観察することが出来ると思います。

そして小さい望遠鏡で見てもなかなか模様が見えてこないときは、一度大きな望遠鏡で見せてもらうと意外にすんなり模様が見えて、その後小さい望遠鏡で見ても見えるようになることがよくあるそうです。

模様を見るこコツが掴むためにスタパを利用するのも良いでしょう。

・・と、さりげなく営業をしていますが(笑)、火星は明るいので星のきれいなスタパまで来なくても大きな望遠鏡さえあれば都会でも充分良く見えます。(しかも最接近の前後1週間は月が明るいのでスタパに来ても満天の星は望めません。星も火星もということであれば最接近前後を少し避けた7/8~7/18か8/7~8/18のあたりがお奨めです。)


(写真は佐久市うすだスタードームの望遠鏡です )

お住まいの近くに大きな望遠鏡を有する公開天文台があれば、市街地にあっても見学の価値はあると思います。

何はともあれ15年に一度の火星大接近ですので、話のタネにもぜひ望遠鏡で眺めてみて下さい。

見頃は7月初旬から8月末までの2ヶ月、この範囲なら充分に大きな火星が楽しめます。
くれぐれも大接近の前後数日だけ大騒ぎするマスコミに踊らされることなく、落ち着いてじっくり楽しんで頂ければと思います。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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今年の夏は「火星大接近」(その5 完) への4件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんにちは。素晴らしいご投稿、ありがとうございます。

    今回もマスコミが大騒ぎしそうな予感がします。以前、「天文台の電話番」という本で読んだのですが、中には非礼極まりないマスコミがいて、天文現象当日になって天文台に電話して来て情報(これは火星の話ではありません)をよこせと、いまオンエア中だから早くしろなどと無理難題を言われ困ったこともある旨、書かれていました。本当に頭は大丈夫なのかと疑ってしまいます。マスコミは日本ではどれほど人を困らせようがいい加減な報道によりどれほど社会に悪影響が出ようが自分たちは誰からも批判されないのだと言う思い上がりがあり、おそらくこれからも改善は見込めないでしょう。
    しかしだからと言って、今回の火星大接近のような稀有な(今回レベルの大接近は2003年以来15年ぶり)現象には、どうせ大袈裟な表現で報道するのならばせめて正確な情報をお願いしたいところです。一番問題なのはオーナー様おっしゃるように大接近の前後数日のみ楽しめる旨、未経験者に誤解を与えるようなことはやめていただきたい。偉そうなことを言うのならばそのくらい自分たちで正確に調べて正しく視聴者に情報を与えて下さいと、言いたいところです。さもないとまた、一過性の狂想曲で終わってしまい、天文ファンの底辺を広げることになんの寄与も与えずただの瞬間的な視聴率アップで終わってしまいます。

    最後に自分の経験から、火星を200倍以上でハイレベルな観望ができる最低限の条件を満たす望遠鏡は屈折では10cmで、F12以上の高精度アクロマートか、F8前後の高精度2枚玉EDアポクロマート、又はF7前後の高精度3枚玉アポクロマート、反射では高精度ニュートンならば15cm以上でF8以上のもの、高精度小遮蔽マクストフニュートンならばF6で12、5cm以上のもの、カタディオならば20cm以上で当たり鏡筒のF10シュミカセやマクカセなどではないかなと、思います。しかしこれはあくまで最高の条件が満たされた場合のハイレベルな観望という前提の話であって、実際には5〜6cmの屈折でも焦点距離が長く、良い設計がされた鏡筒であれば以外と黒い点状の模様が見えてきてそれなりに楽しめる場合もあるとおもいます。

    何よりもまず、オーナー様のような経験、知識を十分にもたれた方からの情報は最も信頼できると思いますので、特に初心者、未経験者の方々こそ、マスコミに振り回されることなくここをお読みいただきたいと強く思います。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    いつもありがとうございます。
    いつまで経っても学習しないマスコミ人が多いのは昔からのようです。
    でも最近それ以上に困るのは、その学習能力のない人達を必要以上に煽りたてて、あまり感動が得られないかも知れない天文現象で大騒ぎをさせたり、学術的にそれほど重要でない現象をさも珍しいことのように喧伝させたりする輩らが少なからずいることです。
    彼らは自分が情報の発信源であることを好み、その結果ガッカリする人がどれほどいようとも、たくさんの人を動かしてなんぼという考え方をしているので始末に終えません。
    初心者にとって火星面の模様というのは(小澤さんが推奨されるレベルのしっかりした望遠鏡を使っても)驚くほど良く見えません。
    でも一部のマニア(私もそのうちの1人ですが)にとって大接近はとても思い入れの大きな現象ですが、それを一般の人や初心者に強要するのは気が引けてなりません。
    拙ブログをご覧頂きマスコミに振り回されないようにして下さる方が少しでもあればと思っております。

  3. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、レスポンスをありがとうございます。

    オーナー様のご意見、確かにその通りだと思います。

    天文現象は様々であり、本当に学術的に有用なものからほとんど娯楽性のみであったり、オカルト的なネタであったり、以前には惑星直列で大地震が起きるとか、ノストラダムスの予言の根拠を天文現象にもってくるとか、枚挙にいとまがありません。最近では日食でも月食でも、流星群や大彗星と言った天文現象でもマスコミ報道ではみんな一括りにして「天体ショー」と言ってほんの数日の間だけ一般人の興味を煽る手法が流行りのようです。これではいけません。
    これらの情報ソースはいろいろあるのでしょう。中にはおっしゃるような「煽動屋さん」もいれば、マスコミ内の科学担当の人たちかもしれません。

    しかし、ここからがポイントになるかと思うのですが、煽動屋さんがいても、それにより煽られたマスコミがいても、正しい情報を正確に伝えてくれれば良しと、私は思います。一過性の狂想曲に終わらせずに、その天文現象を目の当たりに見た人が、その後に天文に深くのめり込む人生を歩んでくれれば、成功ではないかと。わたし自身、ここまで天文にはまったきっかけは1969年のベネット彗星でした。あれは衝撃的な体験で、今の自分の原点でもあります。
    私の周りにも大きな天文現象をきっかけに星に興味を持った人が多くいます。前回の火星大接近であったり、ハレー彗星であったり、百武、ヘールボップであったり、色々ですがその時々の現象を受け取った人の感受性に大きく影響されるのかなと、思ったりしています。また、どのような形であれ、人や媒体を通じて知識を得て自分のものにした以上、なにかしらの媒体はやはり必要なのかなとは思います。一番有用で価値があるのは貴ブログのような正確で科学的根拠のあるものだと思います。

    今回の火星大接近ですが、私は極めて貴重な現象だと思っておいます。おっしゃるように火星は非常に観望しにくい天体で、大接近の時以外には口径が20cmあってもおいそれと模様が見えるものではありません。しかし、大接近時には条件が良ければかなり良く見えることも事実です。これほど地球との距離によって見え方が変わる惑星は他にありません。

    この貴重な体験を多くの人と共有できることを切に願っております。

  4. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    まずもってご指摘の通りですね。
    ひとりでも多くの人が「正しい情報」を持った上で貴重な体験をして頂ければと祈るばかりです。

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