今日も終日雨模様。
ネタ切れ気味なので貸出望遠鏡シリーズを続けます。
☆貸出用望遠鏡No14:ビクセンFL-90S(D=90,f=810 アポクロマート)
ビクセンのフローライトアポクロマート鏡筒です。
純正の接眼部から2インチ対応マイクロフォーカサー式の接眼部に変更し、フリップミラーを組合わせています。
また架台は純正のSP赤道儀をアリガタ改造し、鏡筒の着脱を容易にしていますので、見た目はあちこち改造感が一杯ですが、使い勝手は今風の望遠鏡に仕上がっています。
唯一の欠点といえば鏡筒径が同社80mmのものと共用サイズであり、口径90mmとしてはやや細めなため迷光処理の面で若干不利な設計となっています。
満月に近い月など強烈に明るい対象を見たときに、理想的な迷光処理の鏡筒と較べると若干コントラストが落ちる程度なので、目くじらを立てて突っ込むほどの欠点ではないです。
ポジティブに考えれば80mmの使い勝手でより高性能な90mmが使えるということになります。
実際、フローライトのアポ、しかもF9と長めの焦点距離なので見え味はかなりよいです。
近年では主流となっているフォトビジュアル(写真にも眼視にも向いている)と呼ばれるやや短めのアポと異なり、F9というのは原理的に軸上の全ての収差をエアリーディスク内に納めることができる焦点距離だといわれているので、写真にも眼視にもというどっち付かずではなく、眼視で完璧な像を得ることを目標にしたわりと硬派な設計といえます。
そんなわけで、太さや長さについては前回紹介したポルタA80Mfとほとんど同じ(レンズセルとフードがやや大きい程度)ですので取り回しは80mm鏡筒とほぼ同じで使いやすいのですが、見え味は何を見ても圧倒的と言えるほどFL-90Sのほうが良く見えますので、スタパが出張観望会をする時には出番が多い望遠鏡です。
ビクセンでは90mmの屈折のラインナップがなくなって久しいですが、ちょっと残念です。(80mmと100mmの間で売りにくい機種ではあると思いますが・・・)
オーナー様、
タカハシのフローライト、ビクセンのフローライト、これら2つをサイドバイサイドで見比べる機会が欲しかったです。私はビクセンのフローライトは未経験です。
ビクセンのものは製造が中止されてから評価が非常に上がっているように思います。現役の時はやはりタカハシに名前で押されていたように思いますが、実際のところどうなんでしょうか。タカハシからもFCシリーズの前に9cmフローライトが出ていたかと思いますが、F値などは覚えていません。実に興味深いです。
20cmF10シュミカセではミードとセレストロン 、どちらが高倍率性能が高いかってのも興味がありますが、それ以上にこのフローライトの横綱決戦に興味があります。
誤解を与える表現でした申し訳ありません。ビクセンとタカハシのフローライトの覗き比べですが、そのような機会が欲しかったですと書いたのは、自分の今までの星見人生の中でそのような機会があればよかったという意味です。
表現下手で、ご迷惑をおかけいたしました。
小澤さま
様々な望遠鏡の覗き比べというのはマニアックな人間にとっての大きな楽しみですね。
メーカーごとの設計思想の違いが見え方にどう差が出るのかなど考えながら較べると興味は尽きません。
ビクセンはどちらかというとコスト重視、タカハシは基本に忠実というイメージがあります。
実売価格が倍近く違うことが多く、その差の中でどこまでビクセンが健闘しているかというあたりが比較の時のポイントかと思います。
ビクセンの90mmフローライトは同社の開発担当者がかなり自信ありげにレンズの良さを語っていたこともあり、レンズのみの比較ではタカハシにそれほど劣る物では無いと思います。
ただ80mm鏡筒との部品共用が図られているため迷光処理の面では設計的にかなり無理があり、基本に忠実に太めの鏡筒を使用したタカハシと較べ差が出るかも知れません。
まあFL90Sを覗いている分には口径なりの仕事をしっかりしてくれますし、アラが見えるわけでもないので不満はないです。
サイドバイサイドで比較したいような、したくないような、ちょっと複雑な気持ちです。(笑)
オーナー様、
話が本題から相当ずれてしまいたいへん申し訳ありませんが、長年の天文ファンとしてこれだけはどうしても言っておきたいと思い、書かせて頂きます。
一言で言えば、屈折望遠鏡における色収差ってそんなに罪ですかと言う話です。
これを言うと大抵怒られます。なぜかと言えば、随分昔になりますがどこかの天文雑誌が「屈折望遠鏡のガンは色収差」と、断言したために殆どの天文ファンがその考え方に疑問を持たずに眼視も写真もなく盲信してしまった故に、アマチュア天文家の中でその理屈は絶対のものとして定着し、悲しいかな反対意見を言うことさえためらわれると言う雰囲気になっているからではないかと思います。
私の考えでは、今現在巷を席巻しているアポクロマートは全て望遠レンズであり、望遠鏡ではありません。望遠鏡は文字通りアイピースを除いて人間の目で天体を眺めるための道具です。
フォトビジュアルなどと言うものは実際には存在しないと私はかねてから思っております。
「屈折望遠鏡のガンは色収差」とは、写真分野には言えることです。しかし眼視では違います。色収差よりむしろ球面収差です。
実際、惑星、特に土星や火星をみたときに、色収差はガンだとは思いません。球面収差の方がよほどガンです。これは実視すればすぐにわかります。
アクロマートの最大の問題点は鏡筒が長くなると言う点です。これを克服するためにアポクロマートが存在すると思っております。実際問題、10cmF15のアクロマートをベランダで使えと言っても無理です。そこでF値を7から9程度の実用的な範囲に抑えて、可搬性を確保したのがアポクロマートだと思っています。その意味ではアポクロマートは非常に使えます。
私が言いたいのはアポクロマートの全てを否定しているわけではなく、特に初心者の方や、眼視を中心に望遠鏡を使う方には屈折望遠鏡の性能に関係する最大の要素が色収差であると言う固定観念にあまりとらわれ過ぎずに望遠鏡を選んでほしいと言うことです。その意味で、スコープテックのようにあくまでもアクロマートの普及に力を入れているメーカーは今や貴重だと思っております。
小澤さま
いつもながら経験に基づく深い解説をありがとうございます。
色収差に関しては全く仰るとおりだと思います。
学生時代(今から40有余年前)にニコンの20cmF12アクロで木星を見る機会があったのですが、その時の衝撃は未だに忘れられません。
木星像のディスクの周辺にかなり太い(木星視直径の4分の1くらいの)青ハロが見えるのにもかかわらず、木星面に発生中の大攪乱の様子やフェストゥーン、大赤斑がハッキリ見えていました。
反射望遠鏡を使うことが多かった自分にとって、屈折独自の像の安定感とかコントラストの高さは本当に驚きでした。
現状、世の中に流通するアポ鏡筒の中には月などの明るい天体を見たときに、確かに色収差はないのだけれど、高倍率にしても何だか見えないというものがかなり多くあります。
「アポ鏡筒=望遠レンズ」とは厳しいですが良いたとえですね。
特にフローライトの合わせレンズにエコガラスを使わなければいけなくなった直後に設計されたレンズにはこの傾向が強いものが多いようです。
なので特に古い中古のアポ鏡筒を入手する際には注意が必要だと思います。
最近では良い光学ガラスが出てきてF9程度であれば球面収差も含めほとんどの収差をエアリーディスク内に納めることができるようです。
メーカーさんには売れれば良いという考え方ではなくて、この製品はこういう特徴があるのでこんな用途に向いているといった製品ごとの明確に表して頂けると良いですね。