コンデジで天体写真を撮ろうⅡ その5

昨日までの暖かさとは一転・・・、ミゾレ混じりの冷たい雨が降っています。

さて昨日は望遠鏡を使ってコンデジで写真を撮るのは意外に難しいという
話をしたのですが、あえてコンデジを使ってコリメート撮影をしたくなる
理由がいくつかあります。

まず第一は当たり前なのですが軽量でコンパクトであるということです。

一眼レフのデジカメを小さな望遠鏡に取り付けるとバランスを取るのが大変
ですし、架台にも大きな負担が掛かります。

小さな望遠鏡で気楽に星を見るのと同じように天体写真を撮れるのが何より
ではないかと思います。

いつも言うことですが、機材が大がかりななればなるほど出番が少なくなる
傾向が強いです。

できるだけ軽量でコンパクトであることが、楽しく観測をするための条件です
ので、一眼を使わないで済むならそれにこしたことはないです。

第二の理由は、コンデジと望遠鏡を組み合わせるときに、うまく倍率を選んで
あげると、超望遠なのに光学系の合成F値がとても小さな明るいものにできる
という利点があります。

これは非常に重要な点なのですが、少しわかりにくいので詳しく解説したいと
思います。

・コリメート式の合成焦点距離の計算

カメラで写真を撮る場合、倍率という概念よりもレンズの焦点距離で(焦点
距離が短ければ)広角とか、(長ければ)望遠とかという表現をします。

しかし、この場合フイルムや撮像素子のサイズによって同じ焦点距離でも
写る範囲が変わってしまうのであまりあてになりません。

でも昔から写真をやっている人は35mmサイズのフィルムカメラを基準にして、
焦点距離で直感的に望遠とか広角がわかるので、最近のコンデジの仕様欄には
コンデジに付いているレンズの実際の焦点距離と、35mmサイズのカメラで
得られる画角の焦点距離を並記するようになっています。

ですから広角を売りにしたコンデジの場合「広角25mm(35mm版相当)」などと
表記されていることが多いです。

とてもややこしいのですがこの方がわかりやすいという人が多いためでしょう。

望遠鏡をカメラに覗かせて写真を撮るコリメート式での合成焦点距離を考える
場合もこの両方を計算しておく必要があるかもしれません。

 

ほとんどのカメラには上の写真のように焦点距離(7.5-26.3mm)とレンズの
開放値(F2.7-5.3)が表記されています。

このレンズの場合、広角側は7.5mm/F2.7、望遠側は26.3mm/F5.3というズーム
式のレンズということがわかります。

このカメラの場合(写真からはわかりませんが)広角側の35mm版相当焦点距離は
(カタログでは)35mmです。

さて具体的な焦点距離の計算ですが、これ自身はかなり単純で、下式で求まります。

 合成焦点距離 = カメラレンズの焦点距離 × 望遠鏡の倍率 (mm)

仮に20倍の望遠鏡にカメラを覗かせたとすれば、実焦点距離は

 7.5mm × 20倍 = 150mm

35mm版相当は

 35mm  × 20倍 = 700mm

となります。

実焦点距離の150mmはピンと来ませんが、700mmというとカメラに詳しい人には
ものすごい望遠になるということがわかります。

・コリメート式の合成F値の計算

写真を撮るうえでカメラのF値というのは露光時間を決めるために重要な要素
ですので、望遠鏡と組み合わせたF値がどうなるのかこれもとても重要な要素に
なリます。

コリメート式の場合の合成F値は「望遠鏡の口径」、「合成の実焦点距離」、
「カメラレンズのF値」の3つで決まります。

 合成F値 = 合成の実焦点距離(mm) ÷ 望遠鏡の口径(mm)
  
  ただし、カメラレンズのF値 > 合成F値 の場合は

 合成F値 = カメラレンズのF値

となります。

これはいくら望遠鏡の口径を大きくして合成F値を小さく(明るい)レンズ系に
しても、カメラレンズのF値が大き(=暗)ければ、そこで入射光束が制限されて
しまうからです。

口径60mm、焦点距離800mmの望遠鏡(=アトラス60)に40mmと30mmの接眼レンズ
を使った場合の実際の計算例を示します。(カメラレンズは上の7.5mm/F2.7と
します。)

 

接眼レンズ40mmでは

倍率 = 800mm ÷ 40mm =20倍

合成焦点距離 = 7.5mm × 20倍 = 150mm

合成F値 = 150mm ÷ 60mm = 2.5

ここで カメラレンズのF値(F2.7) > 合成F値(F2.5)のため

合成F値 = F2.7

となります。

-----------------------------

接眼レンズ30mmでは

倍率 = 800mm ÷ 30mm =27倍

合成焦点距離 = 7.5mm × 27倍 = 203mm

合成F値 = 203mm ÷ 60mm = 3.4

ここで カメラレンズのF値(F2.7) < 合成F値(F3.4)のため

合成F値 = F3.4

となります。

35mm版換算での焦点距離は20倍で700mm相当、27倍で945mmすから超望遠なのに
F値がとても小さく明るいものであることがわかります。

解説がずいぶん長くなりましたが「超望遠なのに明るいレンズ」というのが
コリメート式の大きな利点なわけです。

F値が明るいということは拡大率の大きな天体写真が短時間で撮影できる
わけで、短時間で撮影できるということは高精度の架台がなくても暗い天体の
写真が撮れるということになります。

極端な話、経緯台でも天体写真が撮れるかもしれないというのが今回の
シリーズの隠れた狙いでもあるのです。

続く・・・

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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