超入門 望遠鏡光学(21) 遮光環について(3)

9. 遮光環について

9-4.遮光環の実例

これまで図をもとに話を進めてきましたが、今日は実際の望遠鏡を明るい方に向けてみたときの状況を説明します。

まずビクセンのポルタA80Mfです。

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この望遠鏡、中国生産ですがとても良くできていて、対物レンズ径に対して太めの鏡筒を使用して、内面の塗装処理や、遮光環の配置も適切になされています。

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明るい方に向けて接眼部から(接眼レンズ無しで)のぞくと、上のようにほとんど対物レンズだけが見えます。

レンズを分離するためのスズ箔による欠けが3カ所に見えていて、レンズの外径ギリギリが見えていることが分かりますし、その外側は漆黒の遮光環がエッジ部だけ微かに見えています。

ドロチューブ(焦点合わせのため前後する筒)の遮光環の設計が少しいい加減で、写真では遮光環の外側からの光漏れが見えていて少し気になりますが、実害は全くないと言ってよいほどのレベルです。

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眼(カメラ)の位置を接眼部のギリギリの端までずらせてのぞいても、鏡筒内
からの一次反射光はほぼ完璧に抑えられています。
(写真は遮光環のエッジ部が写るようにかなり露出オーバーになっています。実際にはかろうじて見える感じのもので上記のように実害はありません。)

次にエントリー機のラプトル60。

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この望遠鏡は前節で解説したような、対物レンズ外径と鏡筒内径がほとんど同じタイプの迷光防止が少し難しいタイプのものです。

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写真では少し分かりにくいですが、接眼部中央からは対物レンズ全体が見え、かつ鏡筒内面の一次反射はほとんど見えずセオリー通りの設計と言えます。

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しかし、眼の位置を接眼部のギリギリの端までずらせてのぞくと、前節で解説したように、鏡筒内面の一次反射が見えてしまいます。

この鏡筒の太さでは原理的に避けられないのですが、純正で付属する24.5mm径の接眼レンズを使う分には、径が小さいのでほとんど問題ないです。

また、ラプトル60の場合は鏡筒内面の塗装も黒のつや消し塗装で丁寧に仕上げられていますので、この一次反射による見え方への影響はそれほど大きなものではありません。

初心者向けのエントリー機なのにとても丁寧に作られているという印象です。

実際に接眼レンズを取り付けて像を見なくても、接眼レンズの無い状態で覗いただけでもその望遠鏡を作る側の意気込みが見えてきて、見え味が想像できてしまうほどです。

望遠鏡の見え味が何となくおかしいと感じたときには、このように接眼レンズを付けない状態で(明るい方に向けて)のぞいて、遮光環がちゃんと機能しているかどうかを確認すると良いです。

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