超入門 望遠鏡光学(20) 遮光環について(2)

 

9. 遮光環について

9-3. 鏡筒の太さと遮光環の位置関係

前節の遮光環設計方法を通してどのような考え方で迷光を防止しているかが理解できたのではないかと思います。

ひとくちに言うなら、遮光環を配置する基本的な考えかたは、レンズから入って鏡筒内壁で反射する光(一次反射光)が接眼部から見えないように、かつレンズが遮光環で隠されることの無いように配置するということです。

厳密に考えるなら昨日のように作図して設計する必要がありますが、適当に作って、接眼部からのぞきながら「この辺かな~」などと調整しても、そこそこ効果が得られます。

2インチサイズの接眼レンズ(50.8mm径)を使うとか、一眼レフを繋げて写真を撮るというように、接眼部で広い範囲の焦点像が必要な場合には、かなり気を使って設計する必要がありますが、焦点距離の短い接眼レンズを主体に考える場合には、この方法でも充分です。

何となくコントラストが悪く、シャキッと見えない望遠鏡を買ってしまったときには、まずこの遮光環を疑ってみると良いです。

さて、昨日の作図による遮光環の配置の解説をご覧いただいて、なかにはもっと太い鏡筒や細い鏡筒ではどうなるのか?という疑問を持たれた方もいると思います。

結論を先に言いますと、レンズ径に対して鏡筒は太いほど迷光の対策がしやすくなります。

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ここでは昨日と同じ条件で、鏡筒径だけを対物レンズの約2倍の径に太くしました。

昨日の条件ですと3枚必要だった遮光環が、1枚で済むことになります。

広い範囲の焦点像を必要とする場合には、鏡筒を太くすると効果的な迷光対策ができるとも言えます。

それでは次に入門機にありがちな、対物レンズ径ギリギリの細い鏡筒の場合にはどうかについて説明します。

結論から言いますと、レンズ径ギリギリの細い鏡筒の場合、広い範囲の接眼レンズ視野絞り(=広い焦点像)に対して迷光を防止することはできません。

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光軸中心で遮光環によるケラレ(口径食)が無いようにすると接眼レンズ視野絞りの周辺からは対物レンズ付近の鏡筒内面が見えてしまい、一次反射の迷光が対物レンズに入ってしまうことになります。

また、この状態ですと視野絞り周辺では対物レンズが視野絞りに邪魔されて全体を見ることができない口径食が生じます。

この手の細い鏡筒の場合、設定されている接眼レンズが24.5mm径(ツアイスサイズ)の細いタイプで、視野絞り径も20mm以下の小さなものが多いので、迷光や口径食の影響はそれほど大きくありません。

高倍率用のレンズが小さい接眼レンズなら、影響は皆無に近くなります。

月などの非常に明るい天体を低倍率で見た場合、良くできた鏡筒と比べて若干コントラストがわるいかな?と感じるレベルですし、眼視で見る限りは視野周辺が減光していることを認識することはできません。

31.7mm径(アメリカンサイズ)の低倍率用や2インチサイズの接眼レンズを使うことが無ければほとんど問題になることはありません。

どうしても使いたい場合には、対物レンズのすぐ内側の部分に、塗装よりもさらに反射率の低い黒色の植毛紙などを貼れば、迷光をより少なくすることができて効果的です。

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