買っちゃダメだよ望遠鏡 -その5-

 ここのところ天候が不順です。

梅雨だからしょうがないと言ってしまえばそれまでですが、一日の大半が写真のように雲の中にいることが多いです。
幻想的な雰囲気で悪くはないのですが、お客様にそれを言うのは申し訳ないですよね・・・

さて、少し間があきましたが「買っちゃダメだよ」シリーズの続きです。
ヤフオクの望遠鏡(主に中古品)を見ていると、粗悪品または粗悪品とは言わないまでも素人が手を出さない方がよいレベルの製品が非常に多いことがことがわかってきました。
あるものはシングルレンズというオモチャレベル以下のものであったり、アクロマートレンズでありながら全く望遠鏡として機能しないものであったりして、名の売れたメーカーのもの以外(名のあるメーカーのものでも)は本当に怪しいものが多いです。
また、ほとんどのものに役に立たないバローレンズや粗悪な接眼レンズ、地上用正立レンズなどの付属品が付いているという構図でした。
 今回はこの役に立たない付属品の話です。

バローレンズと言うのは凹レンズの性質を持つレンズで、メインのレンズの焦点距離を2倍とか3倍に引き延ばす働きをする部品です。
今回入手した望遠鏡に付属していたバローレンズはみんなシングルのタイプ(もちろんノーコート)でした。確かに倍率は上がるけど新しいものは何も見えてきません。倍率が高くなった分、視界が狭く、ただでさえも華奢な架台との組み合わせで余計に使いづらい物になるという困った付属品といえます。
2倍タイプならまだしも3倍タイプのバローレンズも当たり前に付属していたりします。焦点距離が3~400mmのミニスコープで100倍以上の倍率を出して、さも高性能を謳おうとするとどうしても(悪徳業者にとっては)外せない部品なのでしょうが、もともと100倍以上が出せる性能の光学系でないので、勇気を持ってやめてほしいものです。
今日では初めからバローレンズを組み込んだ高級アイピースもありますし、バローレンズだけで数万円もするような製品もありますので、バローレンズの存在を頭から否定するものではありません。しかし、単なる数字の遊びのように計算上の倍率を出すだけのための無意味なことはやめてほしいです。

アイピースもみなハイゲンかラムスデンのクラシカルなタイプで、樹脂レンズを使っているものも多いです。見かけ視界も狭く、コントラストが悪い、もちろん全てノーコートでお世辞にも上等な見え方のするレンズはありませんでした。中には全くウソの仕様を表記しているものもありました。
どんなに主鏡が優秀でも望遠鏡の性能の半分を受け持つアイピースがこれでは、見えるものも見えないことになります。
バローレンズなどの余計な付属品を省いてもう少しアイピースにお金をかけてもらいたいものです。

地上用正立レンズもいらない部品だと思います。
確かに正立象は得られるのですが、視界は狭いは、暗いは、シャープでないはでほとんど出番はないはずです。
もともと逆さまに見える望遠鏡の中に、もう一個望遠鏡を入れれば正立像になるでしょ、という発想の製品です。思い切りお金をかければ充分使えるものを作ることは可能なのかもしれませんが、(望遠鏡×望遠鏡)のため収差が二乗で増幅されてしまいます。安く作ろうと思うとろくなものが出来ないのは当たり前で、定価が2万円前後のものに無理してつけるべきアクセサリーではないと思います。(本気で正立レンズを作ったら、それだけで2万円ぐらいにはなるでしょうね・・)

私は常々「オールマイティな望遠鏡は無い」といろいろなところでお話しているのですが、なぜかこの手のトイグレード(またはエントリーグレード)の望遠鏡の多くは、地上も天体も、低倍率も高倍率も・・・とオールマイティを狙っているふしがあります。高い値付けができないものなのにオールマイティを強いればどんな結果になるか想像することはたやすいと思います。

そんな訳で今日の結論です。
バローレンズの付属するものは「買っちゃダメだよ」な望遠鏡!
・・と考えた方が良いでしょう。

話は少し厄介なのですが、バローレンズの付属する望遠鏡の中にも比較的素質が良くて、わりと良く見える製品も皆無ではありません。バローレンズ以外にも地上用レンズや安物アイピースが付いてくるのでお勧めでないことは確かなのですが、
バローレンズの付属 = 粗悪品
とは決め付けられないものもあります。
このへんの話は次回に紹介したいと思います。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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買っちゃダメだよ望遠鏡 -その5- への2件のフィードバック

  1. 山口章男 のコメント:

    木星がなかり地球から遠ざかってしまったのでとにかく少しでも大きく見えるようにと
    5倍のバローレンズを購入しました。
    まずは月の表面や遠くの建物などをみていますがあってもなくても大きさに変わりは
    ないように思えてしまいます。
    ただ接眼レンズをはめ込んで見るだけでなく使い方があるのでしょうか。

  2. スタパオーナー のコメント:

    山口さま
    コメントありがとうございます。
    5倍バローを使用して接眼レンズを組み合わせるとほとんどの場合、よほどF値の小さい望遠鏡でない限り超過上倍率となってかなり扱いが難しくなるはずなのですが、倍率の違いが判らないとすると何かほかに原因があるのではないかと思います。

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