買ってもOKな望遠鏡「RAPTOR50」 -その6-

少し間があいてしまいましたが、今回もラプトル50のインプレの続きです。今日はアクセサリー編です。

本題に入る前に少し倍率についての話をします。
望遠鏡の最大倍率というのは理論上、対物レンズの口径で決まります。
通常は口径のミリ数が最大倍率になります。(口径50mmなら50倍) これ以上に倍率を上げても新しく細かいものは見えてこないということになっています。ただ、この倍率ですと〔望遠鏡の分解能ギリギリのところ〕=〔眼の分解能ギリギリのところ〕なのでギリギリが少しみえづらいのが実情です。そこで通常は口径ミリ数の2倍(口径50mmなら100倍)というのが常識的な最大倍率ということになっています。
これ以上倍率を上げても暗くなるばかりで新しいものは何も見えませんよ、これ以上は像がボケるだけですよ、というわけです。
非常に良く出来た対物レンズですと口径ミリ数の3倍でもそれほど像は乱れないといわれていますが、視野そのものはかなり暗いものになってしまいます。
まただいたいの場合、望遠鏡の架台も口径ミリ数の2倍程度の倍率に堪えられるレベルの強度しか持っていないことが多いようです。

そんなわけで世の中に蔓延している倍率だけを売り物にした望遠鏡が如何にナンセンスなものかお判かりいただけるのではないかと思います。
ただ、とても面白いのは、少しでも望遠鏡に詳しい人たちは皆さん口をそろえて初心者のかたに上のような倍率の話をして、過剰倍率の意味のなさを一生懸命に説明します・・・
でもね・・・、なぜ皆さん口をそろえて過剰倍率はダメだというのでしょう・・・
実はほとんど(たぶん全部)の人が自分が使う望遠鏡で過剰倍率を試しているからダメなことを知っているのだと思うのですヨ。
自分の望遠鏡がどのくらいの倍率まで出せるのか、つい試したくなるのが人情ってモンです。そういう経験をしたうえで過剰倍率が無意味であることがわかってくるので、皆同じようなことを言うわけです。

初心者に初めから過剰倍率の望遠鏡を与えるのは良くないとは思うのですが、倍率至上主義の幻想を打ち砕くには過剰倍率を体験させるのが一番手っ取り早いという気もします。おたふく風邪か水疱瘡(ミズボウソウ)みたいに一度はかからなければならない病気なら、早いうちに体験させてあげたほうが良いようにも思います。こんなことを書くと「粗悪望遠鏡の過剰倍率を奨励するのか!」と叱られそうですが、もちろんちゃんとした望遠鏡にちゃんとしたアイピースなり高級なバローレンズなりを組み合わせての話というのが前提ですので誤解されませんよう・・・

さて、ずいぶん前置きが長くなりました。ここからが今日の本題、ラプトル50の付属品(アイピース、天頂プリズム)についてのインプレです。なぜこんなに前置きが長かったかと言いますと、今日はラプトル50の倍率の話になるからです。
 以前にも書きましたように、ラプトル50のアクセサリーは3個のアイピース(接眼レンズ)、天頂ミラー、取扱説明書(A4サイズ1枚白黒両面刷り)が付属します。
アイピースはK(ケルナー)20mm、F(両凸ハイゲン)12.5mm、F8mmで、3個のアイピースを使い分けることにより30倍、48倍、75倍の倍率を出せるようになっています。

前置きの話からすると、すごく優等生的な倍率の設定です。優等生過ぎて少しもの足りないと感じるのは私だけではないと思うのですが・・・・
アイピースの選定にあたって発売元は相当悩んだのではないかと思います。コスト、性能、使いやすさ、商品としてのインパクト・・・
様々な検討の結果、現状の組み合わせに落ち着いているのかな?と想像できます。わずか6980円の望遠鏡にアイピースが3個も付いているということ自体たいへんなことだと思います。見る対象や空のコンディションに合わせて倍率を切り替えて見る練習をするという意味で3個のアイピースが付いているということはとても深い意味があると思います。
コスト面では相当厳しいと思うのに(ほとんどおまけ考えても考えて良いくらいなのに)、そのうち低倍率用の1個はケルナー式というワングレード上のアイピースが付いているのは驚きです。望遠鏡の醍醐味は低倍率にあることを熟知している開発者の意気込みが感じられます。
このケルナー、樹脂の筐体(きょうたい)で内面反射の防止処理などそれほどしっかりしていないのですが、ラプトル50自身の出来の良さに助けられ、すごく良く見えます。満月を見ても視野内はすっきりとして切れの良い像を結んでくれます。
ちょっと惜しいのは(F12.5mmはまずまずの見え味なのですが)F8mmで、75倍にすると月を見た時に少し色収差が気になります。我慢できないほどではないのですが・・・
手持ちのオルソ式のアイピースを使うと、同じくらいの倍率でも明らかに色収差が軽減されすっきり見えますので、高倍率用にはもう少し高級なアイピースがほしいところです。
ちょっと話がそれるのですが、今回ラプトル50でいろいろな天体を見ているときに、久々に旧式のミッテンゼーハイゲン(MH)のアイピースを使ってみました。ラプトル50との相性は抜群で、MH12.5mmは手持ちの○カハシMCオルソ12.5mmよりすっきりと見えた気がしました。ラプトルの発売元「スコープタウン」のパーツショップではMHのアイピースも安く販売していますので、次のステップとして購入を検討すると良いと思います。

さて、このラプトル50、高倍率にはどのくらい耐えられるのでしょうか?
結果としては、オルソなどを使えば純正のままでも100倍くらいまでは何とか使えます。(天体の追尾には多少慣れが必要ですし、風の強い日にはダメですが・・・)
150倍も出して出せないことはないのですが、ブレが大きく詳しく性能のチェックが出来ないのと、天体の追尾がかなり難しくなってあまり長時間使いたくないという感じになります。純正の架台のままでは100倍くらいが限度かなと思いますので、初心者向けとして純正の75倍というのはとても妥当な選択なのだと思います。
高倍率性能については、後日しっかりした架台に載せて再度確認したいと思っています。
最後に付属の天頂ミラー。
「買っちゃダメだよ」シリーズに付属していた天頂ミラーの中には本当にひどいものがありましたので、一応確認しました。
ラプトル50のものは樹脂筐体の華奢な作りのものですが、100倍くらいの倍率でも像の乱れは感じませんでした。手持ちの天頂プリズムと較べても遜色はありませんでしたので、安心して使って良いと思います。

以上、付属のアイピースや天頂ミラーについてまとめますと、文句を言い出せば切りがないのですが、限られたコスト中で良くここまでまとめたなぁ~ というのが感想です。
入門用としてツボを良くおさえたチョイスと思います。少しもの足りなく感じてきたら、追加でアクセサリーを買い足して行くというのがこの業界の常識です。次にどんなアクセサリーを買おうかと悩むのも、この趣味の楽しいところでもあると思いますので、初めから全てを満たした構成になっていないと言うのもナイスだと思います。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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買ってもOKな望遠鏡「RAPTOR50」 -その6- への2件のフィードバック

  1. ポレポレとうさん のコメント:

    過去の記事へのコメントで恐縮です。
    昨年までは天体望遠鏡を持っていませんでしたが、
    つい先月ミザールSTL−750を購入いたしました。
    以前からこちらの記事を拝見していて、
    初めての望遠鏡選びにとても参考になりました。
    ありがとうございます。
    小学3年生の息子用にと買ったミザールは、
    重量も軽くてターレット式の接眼レンズは子どもにも使いやすく、
    先日は親子揃って土星の輪を見て感動してしまいました。
    ただし息子と一緒に星空を眺めているうちに、
    一眼デジカメが接続出来るさらに上のグレードの望遠鏡が、
    自分用として欲しくなってきたのには困りました。
    もう少し息子のミザールで楽しんでからの話ですが(笑)
    スタパオーナー様の記事は初心者の私にもたいへん分かりやすく、
    購入に際してとても参考となりました。
    東京在住ですので、
    機会を捉えて息子と一緒にスタパ様にもお邪魔したいなとも思っています♪

  2. スタパオーナー のコメント:

    ポレポレとうさん様
    コメントを頂きありがとうございます。
    拙文が望遠鏡ご購入の参考になった由、誠に嬉しい限りです。
    ラプトルではなくワングレード上のSTL−750を選ばれるあたりは、思いいれの深さを感じますね。[E:scissors]
    望遠鏡というのはオールマイティというものがありません。判ってくれば来るほど、いろいろな望遠鏡が欲しくなって深みに嵌ります。
    でも基本は、持てる機材の性能をどれだけ引き出せるかを楽しむのが第一だと思います。
    まずはSTL−750を使い倒して見てください。

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