月光浴の科学(サイエンス) -その3-

外を歩いていると、気の早い木々はすでに紅葉を始めています。

 

一年で一番カラフルな季節の到来が間近です。

さて、今日も「月光科学」の続きです。

月夜は夜道を歩くのに提灯がいらない明るさがあると書きましたが、
実際にはどのくらいの明るさなのでしょうか?
(これ、最近「眼の話」シリーズで書いたばかりですが、
 おさらいの意味も込めて・・・)

満月は0.25lx(lxは照度という明るさの単位、ルクスと読みます)という
明るさがあると言われています。

太陽の明るさは10万lxで、満月の40万倍の明るさがあることを考えると、
驚くほど暗いような気がします。

でも、人間の眼の順応力も捨てたものではなく、満月の明るさの10分の1
くらいでも、開けた夜道を歩くくらいなら充分です。

満月の明るさが0.25lxなら半月以下に細くなった月でも充分な明るさに
なりそうな気がしますが、話はそう簡単ではありません。

月の明るさというのは見かけの面積に比例せず、下図のように満月前後に
急激に明るくなることが知られています。

 

半月(上弦・下弦)の明るさは満月の8%の明るさしかありません。

ちょっと信じがたいように思うかも知れませんが、写真を写すととても良く
わかります。

下の写真は、同じ場所で「満月の日」と「満月から4日後」に撮影したものです。

 

「満月から4日後」の明るさがずいぶん暗いのが分かると思います。

満月が近くなるとなぜ急激に明るくなるのかを一口で説明すると、
月の表面に再帰性反射材と同じような物質が広がっているからだといえます。

再帰性反射材というのは道路標識や事故防止の反射テープなどに使われる
材料で、光が入射したのと同じ方向に反射するように作られた反射材料です。

これは球形のビーズが、下の図のように入射した光を入射した方向に反射する
原理を応用したもので、微少なビーズがビッシリと基材の上に並べられた
ものです。

 

月のクレーターは隕石が衝突してできたといわれていますが、隕石が衝突
したときには、たくさんの土砂が吹き飛ばされます。

吹き飛ばされるときには衝突エネルギーで、かなりの高温になりますので、
融けた砂粒は落下するまでに表面張力で球形になって月面に降りそそぐことに
なります。

実際にはもう少し話が複雑なようなのですが、簡単に言うとこのようにして
月面に再帰性反射材と同じように機能する物質がばらまかれていると考えて
良いと思います。

満月のときというのは、太陽と月が地球を挟んで一直線に並びます。

ほぼ地球の真後ろから太陽光が月に当たり、再帰性の効果により、太陽の
方向にたくさんの光が反射されるため、地球から見ても月がより明るくなって
見えるというわけです。

続く・・・

補足説明(9/27追記)
表面にビーズ状の砂があることによる原因以外にも、月面上に小さな凹凸が
非常にたくさんあることによる陰影の影響もあることがわかっています。
満月のように太陽光の入射方向と視線が近い場合は、ほとんど影が出ません。
半月の状態では欠け際に近いほど光が斜めから入り、陰の部分がたくさん
見えることになります。
半月以降も見かけの面積の減少率以上に急速に暗くなるのは、このためと
考えられます。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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