望遠鏡の口径と気流について

ここのところ毎日月の写真をアップしている中で、気流が良いとか悪いとか
といった表現が頻繁に出ているのにお気づきの方も多いと思います。
(ちなみに、満月をまたぎましたので今夜の月は明日アップします。)

望遠鏡で星を見る人にとってこの辺の話は当たり前と言えば当たり前なの
ですが、気流の善し悪しや望遠鏡の口径で見え方にどのような差があるのかと
いったことについて今日は解説したいと思います。

よく望遠鏡で星を見るのは、小川のせせらぎの中にある石を見るようなものだ
という表現をします。

目で見てキラキラきれいに輝く星も、望遠鏡を使って高倍率で見ると
チカチカ、メラメラ燃えているかのように見えることが多いです。

私たちの頭の上にある空気の層は常に流れていて、高倍率の望遠鏡にとっては
まさにさざ波の立った水面下を見るようなものと言って良いのです。

ですから高倍率で星を観測しようとするときは、できるだけ気流の流れの
穏やかな時を狙って観測するのがよいと言うことになります。

逆に気流の悪いときは、どんなに性能の良い望遠鏡でも高倍率では全く良く
見えなくなります。

そんなこともあって世界の巨大望遠鏡は空気の薄い4000m級の山の山頂に建設
されていたりするわけです。

また、山の中腹よりも山頂やふもとのほうが、中腹よりも気流がよいとか、
できるだけ高く昇った天頂に近い星のほうが(空気層を通過する距離が短いため)
気流の影響を受けにくいと言ったお約束もあります。

さらに望遠鏡の口径が大きいほど気流の影響を受けやすいという
法則があります。

これは単純に考えても、口径の大きさに比例して分解能(解像度)が高くなる
という原理がありますので、同じ気流の状態でも口径が大きくなるほど
口径分の分解能が発揮できなくなるといった意味で分かり易いのですが、
実は話はもう少し複雑です。

 

上の図では気流を単純に青い波線で表現しています。

口径が小さいと入射する星からの光の束も小さいため、空気の乱れによる
影響はかなり小さいものです。

しかし、口径が大きくなると光の束は太くなり、空気の乱れの影響がかなり
大きなものになり、星からの光は大きく散乱されることになります。

上の図は断面で描かれているためピンと来ないかも知れませんが、実際には
面積で効いてくるため、口径が倍(5cmが10cm)になれば4倍、4倍(5cmが20cm)
になれば16倍も気流の影響を受けやすくなるということです。

分解能が口径に比例するという二重苦と組み合わさり、口径の大きな望遠鏡
というのは驚くほど、その口径の性能を発揮できる日が少ないものです。

スタパの40cm望遠鏡も100%口径分の見え方をしたのは、この7年間で1~2度
しかありません。

有効最大倍率の400倍以上が使えるのも1年のうち数回程度です。

年間120日くらい星を見ていてこの程度ですから、いかに絶望的な状態かが
判ると思います。

経験的には口径の面積に反比例してよく見える日が少なくなるような気が
します。

口径5cm望遠鏡で年間120日くらいよく見える日があるとすると、口径40cm
の望遠鏡というのはレンズの面積が64倍になりますから、年間2日くらい
しかよく見える日がないといった感じです。

こんなふうに書くと、大望遠鏡はいらないという勘違いをされそうですが、
気流が悪いときでも星雲星団など見え方は小口径とは比べものになりません。

あくまでも望遠鏡の分解能を100%活かすといった意味ですのでお間違えの
なきよう・・・

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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望遠鏡の口径と気流について への2件のフィードバック

  1. 夜空 のコメント:

    こんばんは。
    シンチレーションの良い日はなかなかありませんね。
    今日は月が明るくて月以外の天体写真を撮る気になりません。
    仕事と休みが合って晴れてシンチレーションの良い天体写真を撮る日は意外に少ないなぁ
    って思っちゃいました。 今日なんかだと星景写真はいいでしょうね。
    でも、そんなときは、ポートレイトレタッチの学習に充ててます。(笑)

  2. スタパオーナー のコメント:

    夜空さん
    こんばんは・・いつもありがとうございます。
    そー・・、特にこの時期はシンチレーション(気流)の良い日は本当に少ないです。
    でも、望遠鏡の口径が小さければ小さいほど、口径なりの性能が出しやすくなります。
    極端な話、気流の悪い日は10cmの望遠鏡より5cmの望遠鏡のほうが良い写真が
    撮れたりします。
    でもやっぱり満月前後は夜空さんには星景写真がお奨めですね[E:good]

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