ホントに超入門 「望遠鏡の使い方」 - 序の3「意外に見えない望遠鏡」 -

秋深し、今日は見事な鱗(うろこ)雲が見られました。

 

さて、彗星騒ぎ(勝手に私が騒いでいるだけですが)でしばらく間が開いて
しまいましたが、 「望遠鏡の使い方」シリーズを再開します。

まあ旬のネタを暖かいうちにお出しするというのがペンションをやっていると
習い性になっているのでご勘弁下さい。

で、再開といってもまた「序」でなかなか本題に入れません・・・(^_^;)

本題に入りたいのは山々なのですが、望遠鏡を使い始める前にもう一つ心に
留めておいて頂きたいことがあります。

それは望遠鏡と言うのは「意外に見えない」ということです。

「見えない」訳ではないのですが、テレビや図鑑などで目にする天体写真が頭に
あって、そのつもりで望遠鏡を覗くもの凄くガッカリするということです。

テレビや図鑑などに出てくる天体写真というのは高価な機材を使って、技術の
粋を凝らして撮影したものですし、場合によってはハッブル宇宙望遠鏡や
すばる望遠鏡などで撮影した最高レベルの写真も出てくるわけです。

ですからそんなふうに見えると思って覗けば「何だつまらん!」ということに
なってしまうわけです。

すばる望遠鏡の写真でなくても、天体写真というのは長時間露光といって光を
長い時間フイルムや撮像素子に当てて写しますので、一瞬一瞬の光しか捉える
ことのできない人間の眼とは根本的に見え方が違って当然なのです。

具体的な例をひとつ紹介したいと思います。

 

写真はスタパの40cm望遠鏡で撮影したオリオン大星雲(M42)です。

数ある星雲の中でも最もよく見え、良く写るものです。

この星雲を同じくスタパの40cm望遠鏡で見ると・・・

 

何となく写真の雰囲気に近い感じに見えますが、色はほとんど感じられ
ません。

これを口径6cmくらいの望遠鏡で見ると・・・

 

といったかんじで中心部の明るい部分しか見えず、写真の世界とは全く別の
ものに見えてしまいます。

まだ、星雲の部分が見えればましなほうで、都会でこれを見れば星雲の部分は
ほとんど見えず、中央の星しか見えない場合もあります。

光の淡い天体については写真のようには見えないのだということを、ぜひ
覚えておいて頂きたいと思います。

それでも、たとえその光がガッカリするほど微かだとしても、そこで見えた
光は何千年、何万年という時間を旅してきた、まぎれもなく生の光で、
あなたの眼が捉えた真実の宇宙の姿であるといえます。

たとえ遙か未来に私たちの子孫が宇宙旅行でその天体の近くに行ったとしても、
肉眼では絶対に写真のような見え方にはならず、あなたが望遠鏡で見た姿に
近いはずなのです。

ですから「あまり見えない」とガッカリするのではなく、肉眼では全く見えない
世界が望遠鏡を通して見えてくるのだと考えて頂ければと思います。

さて、見えないという話ばかりをしているのですが、月や惑星といった明るい
天体については予想外によく見えます。

特に月はヘタな天体写真よりよく見えることが多いです。

 

これは月の一部分を拡大して撮影したものですが、6cmくらいの望遠鏡でも
高倍率にして注意深く見ればこの写真よりももっと細かいところが見えます
ので、天体によって充分楽しめるものもあるわけです。

世に氾濫している情報に左右されることなく、ぜひ自分の眼で様々な天体を
見ていただきたいと思います。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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