ホントに超入門 「望遠鏡の使い方」 その1:覗くのって意外に難しい

日に々々秋が深まります。
秋の花 コスモスもそろそろ盛りを終え種ができ始めています。

 

さて、いよいよ今日から「望遠鏡の使い方」本編に入ります。

今日は「望遠鏡を覗くのって意外に難しい・・」です。

「え~っ、接眼レンズを覗き込めばだれでも見えるんじゃないの?」と思う方も
多いと思うのですが、どっこい意外に難しいものなのです。

まあ、たいていの方はこれまでの人生の中で何度か望遠鏡に限らず顕微鏡や
双眼鏡、カメラなどでレンズの中を覗くという訓練を知らず知らずのうちに
しているので、ほとんど無意識にうまく覗けるようになっています。

でも、こういう経験を普段あまりしていない方ですと、ちゃんと覗けるように
なるのに少し練習が必要で、スタパの観察会でも最後までうまく覗けないままの
お客様が(大人の方でも)1年に一人、二人はいます。

未就学のお子さんの場合にはかなりの確率で、うまく覗くことができません。

4才未満のお子さんはほぼ全滅といってよいくらい覗けませんし、4才から
6才までは半数くらいがうまくできません。

なぜそれほど難しいのかといいますと、接眼レンズには「アイポイント」と
呼ばれる接眼レンズを覗くのに最も適した瞳(眼の中心)を置くべき位置が
接眼レンズごとに設定されています。

このアイポイントの位置にしっかり瞳をもって行くことができれば・・・

 

上の写真のように視野円と呼ばれる接眼レンズを覗いたときの外周円の中に
ある視野(見える範囲)を見ることができます。

ほんの数ミリ瞳の位置が上下・左右いずれかにずれると・・・

 

視野円全部を見渡すことができなくなって、視野の一部しか見えなくなり、
さらにズレるとブラックアウトと言って、全く何も見えなくなります。

また瞳が中心にあっても、接眼レンズからの距離が前後にズレていると、
視野の一部分しか見えなくなります。(接眼レンズから前後方向に設定された
アイポイントまでの距離をアイレリーフと言います。)

 

さらに離れれば接眼レンズの中心に点のような光が見えるだけになります。

 

アイポイントの位置というのは接眼レンズごとに異なり、レンズによっては
睫毛がレンズに触れるほど近づかなければならないものもありますし、眼鏡を
したままでも充分視野全体を見渡せるようにアイレリーフが長く作られた
ものもあります。(アイレリーフが長い場合、それより内側に瞳があると
視野が狭まる場合もあります。)

小さいお子さんの場合には、適切に身体を制御して瞳の位置を調節できない
ために、うまく覗き込むことができないことが多いようです。(経験上、箸が
うまく使えるような年齢になると自然に覗くことができるようになっています。)

アイレリーフがあまり長くない(10mm以下くらいの)場合、眼鏡を掛けていると
一度に視野全体を見渡すことができません。

この場合、単純な近視や遠視であれば望遠鏡側のピント調整で補正が可能です
ので、よほど乱視がひどくない限り眼鏡を外してご覧になることをお奨めします。

私もやや強めの乱視と軽い老眼なのですが、個人的な観測のときには眼鏡を
外して覗いています。(観察会のときは若い方とピントのズレが大きくなるので
眼鏡を掛けたまま調節をしています。)

細かい話になりますが、接眼レンズのレンズ構成によってこのアイポイントに
クセがあります。

昔からある(いわゆる古典的と呼ばれる)接眼レンズは総じてアイレリーフが
(焦点距離に比例しますが)短めな代わりに、上下左右のアイポイントの位置が
わりと寛容で、少しズレてもいきなり視野全体が見えなくなることが少ないです。
(古典的接眼レンズとは、ハイゲン系(H・MH・AHなど)、ラムスデン系(R)、
ケルナー(K)、オルソ(Or)、プローセル(Po)などです。)

20年ほど前までは上記の古典的な接眼レンズしか事実上はほとんど手に入らな
かったのですが、最近は驚くほどたくさんの形式のレンズが販売されています。

新しい設計のレンズはアイレリーフが長く、見かけ視界の大きな広角タイプが
主流になっています。

ただ、価格の安いものの中にはアイポイントの適正位置が非常に狭く、少しでも
瞳の位置がずれると、たちまちブラックアウトしたり、ビーンズエフェクトと
言って視野の一部が大きな黒い豆があるように隠される現象が起きます。

覗き慣れるとそれほど気にならなくなる場合もありますが、観望会などで人に
見てもらう場合にこのての接眼レンズはあまりお奨めできません。

広角の接眼レンズでも、接眼レンズ1個でそこそこの望遠鏡本体が買えてしまう
ほど高価なものになるとこういったことは少ないですが、中途半端な価格のもの
では注意が必要です。

まあ望遠鏡を覗くのは実は難しいものだと思って覗けば、うまく覗くことができた
ときには嬉しく思えるものですョ。 (^o^)

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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