今日も素晴らしい八ヶ岳ブルーの晴れ
スタパ前のカラマツは落葉が急速に進み、向こう側がだいぶ透けて見えるようになってきました。
望遠鏡入門講座、今日は第二章(望遠鏡の光学系)の番外編です。
第二章 望遠鏡の光学系
2-8. 番外編(反射望遠鏡の副鏡は邪魔ではないのか?)
初心者の方からの素朴な疑問として「反射望遠鏡には必ず筒外に焦点を出すための副鏡が着いているのだが、これは観測の時邪魔にならないの?」という質問が良くあります。
望遠鏡の先端にこんな邪魔なものがあったらうまく見えないのではないかと思うのももっともなのですが、冷静に考えて頂くと望遠鏡が「像」を作る上では望遠鏡のすぐ前にある遮蔽物というのはそれほど問題にならないことが判ります。
上は本講座のはじめの頃に望遠鏡が像を造る原理を説明するために用いたものですが、この図で例えば対物レンズの下半分を塞いだらどうなるかを想像して頂きたいのです。
もしも遮蔽物が邪魔になるのなら、ろうそくの下半分が見えなくなりそうなものですが、実際にはレンズのどこを通った光も同じところに焦点を結ぶので、ろうそくの先端の部分の光はろうそくの先端の像を造り、根本の部分は根本の像を造るのです。
明るさは半分になりますが、像の形には影響がありません。
鏡筒の先端中央に副鏡の丸い遮蔽があるシュミットカセグレイン式望遠鏡で星を見たときの像の見え方を実例として紹介します。
像を作るうえで遮蔽物はそれほど影響しないと書いたのですが、実はピントが大きくボケているときにはこの遮蔽物が見えます。
しかしピントが合って行くに従いだんだん中央の影は小さくなってゆきます。
さらにピントが合うとほとんど影が見えなくなり
完全にピントが合えば、星は点像になり影は完全に見えなくなります。
お子さんがいたずらをして望遠鏡の前に手を出したりして、鏡筒の一部を塞ぐことがあります。
この場合も(口径にもよりますが)少し暗くなるくらいで覗いている人が気付かずにガッカリしているお子さんがいたりしますがこれも上と同じ理由です。。
例えば望遠鏡の前に下のように穴の空いたマスクを被せたらどう見えるのか試してみます。
ピントが大きくずれているときにはハッキリ○と△が見えます。
ピントが合うに従って○と△はだんだん小さくなりながら近づいて行きます。
ピントが合う直前ではごく小さな○と△が接近して
ピントが合えば1点に収束します。
光路上に副鏡があるので光が遮蔽されますが、遮蔽される量は主鏡と斜鏡の面積比で決まるので、例えば主鏡の口径の3分の1の副鏡であれば11%が遮光され、4分の1であれば6%の遮光で済み、予想外に光量の損失が少ないことが判ります。
光路上に副鏡やそれを支持する金具などがあれば、その縁で光が回折を起こし像を劣化させるので、そういったものが全く必要ない屈折に較べて不利であることは事実です。
ただし、反射望遠鏡は屈折望遠鏡較べ安価に大きな口径を得られるのでその不利を補うことが可能になるので、そういう特性のものだとある程度割り切って受け入れられているようです。
オーナー様、こんばんは。
実例を挙げられた遮蔽の説明、とても明快でわかりやすいです。
おそらくこのような方法で説明された書物など、今までなかったのではと、思います。特に最後の、丸と三角の例は初心者の方にも非常にわかりやすく、今までの疑問がすっかり晴れたと思われる方も多いのでは、と思います。
シーフシュピーグラーのようなオフアキシスのもの以外の反射望遠鏡では、遮蔽はさけられないですね。
特にカセグレン系の反射では、バッフルによって視野径が限定されてしまうので、どうしても副鏡の遮蔽率が大きくなってしまいます。その点、惑星面など繊細な模様の詳細を見ようとすれば、副鏡バッフルの無いニュートンが有利となりますが、口径が大きくなると鏡筒も大きく重くなるのでそれが欠点ですね。
何から何まで理想的な望遠鏡が存在しないと言うところもまた、望遠鏡の深さ、難しさ、面白さだと思います。
小澤さま
いつもありがとうございます。
初心者の方の素朴な疑問で「なぜ副鏡やその支持金具が邪魔にならないのか?」という質問は実は意外に多いのです。
前々からこれを判りやすく説明する方法を考えていました。
この説明で初心者の方が本当に理解してくれるか(もっと判りやすい方法はないか)と思うところもあるのですが、とりあえず書いてみましたという感じです。
オーナー様
昔の記事へのコメント失礼します
ロウソクの絵や、実際にマスクを使っていて非常に分かりやすかったです
関連して疑問に思っていることがありまして、反射望遠鏡は射出径を上げると
中央遮蔽で視界が暗くなる、と言いますし、実際に暗い部分を感じます
この現象はまたロウソクの絵とは違う状況なのでしょうか??
もしご存知でしたらご教示いただけますか?
satoshiさま
コメントありがとうございます。
「反射望遠鏡は射出径を上げると・・・」ということは低倍率にすると、ということになると思います。
確かに本記事は低倍率にした場合に中央遮蔽の影が邪魔になるというところまで考慮していませんので少し不親切ですね。
反射望遠鏡では望遠鏡からの射出瞳の中に中央遮蔽の影が見えます。
スクリーン(または受光素子)に投射する場合は中央遮蔽以外の場所からの光が回り込むのでスクリーン上に影が現れることはありません。
観察する人間の瞳孔径が望遠鏡からの射出瞳より充分に大きい場合は同様に中央遮蔽の影は気にならないです。
しかし低倍率で(特に昼間など)観察者の瞳孔径より射出瞳のほうが大きく中央遮蔽の影の大きさが無視できないような瞳孔径との比率になると、接眼レンズに対する瞳孔の位置により影が見えたり、暗く感じたり、場合によっては視野がブラックアウトすることが起こるかも知れません。
瞳孔径は順応度合いにより変化するのでかなり複雑ですね。
例えば中央遮蔽35%の反射望遠鏡を低倍率で射出瞳4mmの場合、射出瞳の中の中央遮蔽の影は1.4mmになります。
(この例は当館の中央遮蔽約35%の40cmシュミカセで100倍にしたときの実体験でもあります。)
昼間や満月に近い月を観察するとこの影が少し気になることがありますが、なんとか我慢の範囲です。
星雲星団や一般の恒星を見て気になったことはありません。
また惑星など明るめの対象でも気になることは無いです。
しかし70倍くらいまで倍率を下げて中央遮蔽の影の径が2mmを越えると、月を観るのはかなり厳しかったです。