7.正立光学系について
7-3. 正立像を作る方法
正立させる手法としてはプリズムで4回反射させる手法が一般的ですが、前節で紹介しているポロタイプのほかにもさまざまな反転手法があります。
ミラーを使う方法もありますし、天体用にはポロタイプのように直線型のもの以外に光路を90度や45度に曲げるタイプのものもあります。
4回反射させるものが一般的ですが、中には2回の反射で光路を90度曲げつつ正立像を得ることができるタイプのものもあって、性能(精度)もピンきりです。
ミラーを使用したかなり高価な物の中には100倍以上の倍率でも充分使えるものもありますが、だいたいは低倍率用と割り切ったほうが良いです。
さて、プリズムやミラーによる倒立像の反転の方式を説明しましたが、もっと簡単に正立像を得る方法があります。
望遠鏡で風景を見ると逆さまに見えるわけですから、それをもう一度望遠鏡でのぞけば逆さまが逆さまになるのですから、正立に見えるようになります。
望遠鏡を望遠鏡でのぞくと倍率は掛け算になるので、たとえば50倍の望遠鏡を50倍でのぞけば2500倍になってしまいます。
ですからそれほど高倍率にならないような注意が必要なのと、たくさんのレンズを光が通ることになりますので、それなりの精度のあるレンズを組合さなければなりません。
安物の望遠鏡に「テレストリアル」(T-18mm)というタイプの地上用正立接眼レンズがあります。
これは接眼レンズの中に望遠鏡が組み込まれていると考えて良いのですが、あまり精度の良いレンズが組合されているわけではないので、見え味は良くありません。
あくまでも緊急待避的な使い方と考えたほうがよさそうです。
7-4. 天頂ミラーで正立像を作る
プリズム(またはミラー)で4回反射させて倒立像を正立像に変換するという話をしてきたのですが、今ひとつピンと来ない方のために具体的な写真をお見せしながら解説をしたいと思います。
上の図は7-2節にも載せた図です。
直角プリズムで光を4回反射して入射した方向と同じ方向(光軸は平行に少しずれますが)に光が出ます。
ここでのポイントは2個のプリズムが90度傾けて固定されているというところですが、位置関係が同じであれば反射面はプリズムでなくて、鏡でもかまいません。
ここでは望遠鏡用に使う天頂ミラーを4個使って、どんなふうに像が変化するか見てゆきます。
まずは、何気ないスタパのダイニングの風景・・・
これをミラー1個を通してみると
像は倒立・鏡像(裏返し)になります。
次に2個のミラーを組み合わせると
正立像になります。
逆さま(倒立像)に見える望遠鏡で正立像になるためには、ミラーの組み合わせで倒立像にする必要がありますので、さらにミラーを追加します。
3個目のミラーで正立・鏡像になります。
さらに4個目のミラーで
めでたく倒立像になります。
冒頭の図と同じような角度にミラーを合わせることにより、望遠鏡で倒立像が得られることが判ります。
個々のミラーの向きはとても重要で、たとえば1個でも向きが違うと
まるで向きが変わってしまいます。
ただ闇雲に4回反射させればよいわけではないことが判ります。
何気なく正立に見える望遠鏡の中にもいろいろな工夫のあることが判ると思います。