眼の話(星を見るのに役立つ) -その8-

8.暗所視での色の見え方

桿体はモノクロのはずなのに、なぜ暗所視では青白い色を感じるのか
という話しの考察です。

まずは下の図をご覧下さい。

090911kando

明所視の比視感度曲線V(λ)は赤・緑・青(RGB)の各錐体の合成感度であると
昨日書いたのですが、上の図は赤・緑・青の各錐体個別の比視感度と
桿体の比視感度(=V'(λ))を示しています。

赤錐体の感度が青のところにもあるとか、青錐体の感度がやたらに高い
とかいった疑問もさらに生じるかも知れませんが、ここでは各視細胞の感度が
「こんなものなんだ~」程度に見ておいて下さい。(この辺については後日
解説する予定です。)

桿体でなぜ青白い色が見えるかという本題に入るまえに、人間がどのように
色を感じるかについて簡単に説明しておきます。

明所視ではRGBの各錐体が働きます。
デジカメやテレビで明らかなように、RGBの素子があれば様々な色の表現が
できますね。

人間の眼の錐体も当然それと同じような働きをするのですが・・・、

錐体が得た光信号をそのまま脳に伝達するのではなく、
眼のほうで事前にRGB各錐体の信号を合成してから色と明るさの情報として
脳に伝達するということが最近の研究で明らかになっています。

(最近といってもここ30~40年の話しです。私が学生の頃には人の眼は色がなぜ
見えるのかわかっていなかったように記憶しています。)

少し回り道をしましたが、眼のほうである程度画像処理をしてから脳に送る
というのが、桿体の信号が青白く感じることのカギだと私は想像したわけです。

つまり暗所視で錐体達の暗順応が追いつかなくなって色情報が無くなったあと、
緑錐体と青錐体の中間に感度を持つ桿体の信号だけが眼の画像処理機能を
スルーして、白色光でも緑と青の中間をピークとする「青白い光」として
認識されるのではないかということです。

これ(当たらずしも遠からずとは思いますが)、あくまでも私の推論で
間違っているかも知れません。
どなたか眼の専門家がこれを読まれておられましたら、ぜひ突っ込みをお願い
します。

さてここで、問題です。・・・・・

暗いところで暗順応が進むと錐体は働かなくなり、桿体だけでものを
見るようになります。
この状態でも星を見ると星に色があるのがわかります。(例えば、オリオン座の
ベテルギウスとリゲルでは明らかに色が違うのがわかります。)
桿体は色がわからないはずなのに、なぜ星の色がわかってしまうのでしょうか?

090217orion

答え・・・・

結論から言うと星に対しては錐体が働くため、色の違いを見分けることが
できます。

錐体の暗順応の明るさ以下になったからといって、錐体がサボって見る努力を
していないわけではありません。

自分(錐体)に見える明るさの光がきたときにはいつでも働けるように待機して
います。

星というのは理想的な点光源に近い光ですから、輝度(面積あたりの光)として
考えると(面積は小さいですが)、かなり明るい光といえます。

このため、1等星くらいまでの明るい星については、錐体が働き色がわかると
いうわけです。

ちなみに遠くにある街灯のランプの色や、家から漏れる灯りなどの色も
もちろん見分けることができますが、これも錐体が暗くてもめげずに待機
していてくれるおかげだというわけです。
この話が出たついでというわけではないのですが、暗順応の話しに少し戻ります。

090831junnou

暗順応の話しのときに、左右の眼の順応は別々に進むので、暗い場所に出る
ときは少し前に片方の眼を塞いでおくと良いという話しをしました。

でも、さらに細かく観察すると、よほど強烈な明るさの差がある場合は別として
明・暗順応というのは細胞単位で行われているということが判っています。

例えば、暗い場所で明るい光源を一瞬見てしまったとき、眼の中に黒い残像が
残ることがあります。

また、暗い場所で夜空の中天を見たあとに、天頂方向に視線を動かすと
網膜上で地平線より下だった部分が白く(明るく)残像となって見えることが
あります。

残像の部分は明(または暗)順応が進んだ視細胞たちということになります。

暗順応のカーブが「A」の部分と「B」の部分が不連続になっているのは
錐体の順応と桿体の順応が全く別々に進んでいるからだということも
できます。

星がたくさん見える夜空では、明順応が進んでしまいそうですが、
空の面積からすると星が輝いている面積はとても小さいですから、
ごく一部分で明順応と暗順応が繰り返されているかも知れませんが、
全体から見ると暗順応したままといって良いレベルなのだと思います。

090912akakaiden

ところで、天体観測には赤いセロハンを被せた懐中電灯が付き物です。
これは眼の刺激が少ないからということになっています。

これって、眼の順応の面から考えて、意味のあることなのでしょうか?
緑や青のセロハンではなぜダメなのでしょうか?

 

カテゴリー: 眼の話, 蘊蓄の部屋 パーマリンク