超入門 望遠鏡光学 (その3) 望遠鏡の原理を知る

 

2.望遠鏡の原理を知る

2-1.凸レンズを使用したケプラー式望遠鏡

本章では「望遠鏡の原理を知る」というお題で、なぜ望遠鏡で遠くのモノが大きく見えるのかについて考えます。

1章の解説でレンズ「像」を作るということを理解頂けたと思います。

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上は1章で示したレンズが像を作る概念図ですが、スクリーンに映し出されたロウソクの像をルーペ(虫眼鏡)で見たらロウソクをもっと大きく見ることができると思いませんか?

ルーペの場合、焦点距離が短いレンズほど倍率が上がります。

例えば同じ虫眼鏡を2枚重ねて使うと、1枚のときより虫眼鏡としては倍率が上がります。

これは1枚のときより2枚のときの方が光がより強く曲げられ焦点距離が短くなっているからです。

昨日説明したように、像は焦点距離の長い方が大きなものになります。

ですから、前方に置くレンズ(物に対して近い方なので「対物レンズ」といいます。)の焦点距離をできるだけ長くして、像を拡大して見る眼に近い方のレンズ(眼に接するレンズなので「接眼レンズ」といいます。)はできるだけ焦点距離の短いレンズを使うことにより、高い倍率で遠くのモノが見えるというわけです。

でもスクリーンに映った像をルーペで見るためには自分の頭が邪魔をしそうですよね。

ただ、面白いことに上の図でスクリーンを取り払っても、「像」自体はその空間に浮かんでいますので、対物レンズの光軸とずれないように接眼レンズの光軸とピントをうまく合わせてやると、空中に浮かんでいる「像」を接眼レンズでうまく拡大してみることができます。

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(この図自体は概念を示すイメージですので、レンズの形状、ロウソクや像の位置関係などは正確性を欠いていますので悪しからず。)

さあ、これこそが離れたところにある物を大きく見ることができる「望遠鏡」の原理そのものというわけです。

「対物レンズ」が作った像を「接眼レンズ」で拡大してみるというこの形は、現状使われているほとんどの眼視用望遠鏡の原型と言えるもので、ケプラー式と呼ばれる方式です。

「対物レンズ」が作った像は逆さま(倒立像)で、それをルーペで見ているだけですから、ケプラー式望遠鏡は物が(当然ですが)逆さまに見えます。

双眼鏡やフィールドスコープなどで地上を見る場合には倒立像ですと、とても使いにくいので対物レンズと接眼レンズ間に像を逆さまにするためのプリズムやミラーを入れて、正立像を作ります。(このへんについては、いずれ詳しく・・)

さて少し話しがそれますが・・・

上の図で対物レンズが作った「像」はスクリーンに映したり、ルーペで拡大して見ることができる実体のある「像」です。

物に対してレンズをはさんで(レンズの後ろ側に)あるのですが、このような「像」を「実像」といいます。

一方、接眼レンズをのぞいて中に見える拡大された像は、レンズの前側にあって、のぞき見るだけで、「像」の実体に触れたりすることができませんので「虚像」と呼ばれています。

「実像」と「虚像」、どちらが偉いとか正しいとかと言うことではなくて、レンズを使って物を見るときの考え方を整理するのに必要な使い分けですので覚えておいてください。

2-2.ガリレオ式望遠鏡と凹レンズ

昨日は凸レンズをふたつ組み合わせるタイプの天体望遠鏡(ケプラー式)の原理を紹介しましたが、基本的な望遠鏡の形式としてガリレオ式というタイプがあります。

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対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使っています。

このガリレオ式望遠鏡というのは今から400年前のこと・・・

当時発明されたばかりの望遠鏡を自分で工夫して作り上げ、天文学上、数々の新発見をした「ガリレオ・ガリレイ」さんが使用した望遠鏡のレンズ構成にちなんでこの名前が付けられています。

ガリレオ式望遠鏡についてはに
ガリレオ望遠鏡の謎(ミステリー)
・「ガリレオ望遠鏡の謎(ミステリー)」に挑む(準備中)
などで詳しく解説していますので興味のあるかたはそちらをご覧ください。

これまでの解説で、レンズと言えば凸レンズということで話を進めてきましたが、凹レンズについて解説をしておきたいと思います。

凸レンズのみを使った光学系というのは総称して収差と言われる像のにじみやボケが多くてそのままでは使い物になりにくいものが多いです。

1枚だけでなく複数の凸レンズや凹レンズを組み合わせることにより、大幅に収差を減らすことが可能になります。

そんなわけで凹レンズとはいったいどんなモノか・・・しばらくお付き合い下さい。

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凹レンズというのは読んで字のごとく、凹みのあるレンズです。

上図のようにこのレンズに入射した光は、凸レンズのように収束して焦点に集まることはなく、拡散されてしまいます。

拡散する光を(仮想的に)逆にたどって、光が入射した側に延ばして、これが収束した点を凹レンズの焦点と言い、レンズからこの焦点までの距離を(凸レンズと同様)焦点距離と言います。

実際に焦点を結ばないのにちょっとピンと来ないですが、例えば焦点距離の同じ凸レンズと凹レンズを組み合わせて景色を見ると、凸レンズの光の収束を凹レンズが完全に打ち消すので、素通しのガラスを見ているのと同じことが起こります。

このため凸レンズがプラス(正)の収束なら凹レンズはマイナス(負)の収束をすると考えられるので、凸レンズを正レンズ、凹レンズを負レンズと呼ぶことも多いです。

私たちの身の回りにある最も身近な凹レンズは近視用のメガネに使われているレンズで、その逆の凸レンズは遠視(老眼)用メガネに使われています。

よく知られていることですが、凹レンズを通してモノを見ると・・・

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小さくなって(=遠くにあるように)見えます。

これは近くのモノでも、遠くのモノでも同じような傾向で小さくなって見えます。

また、凸レンズは近く(焦点距離より手前)にあるモノは拡大して見えます。

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焦点の位置や、それより離れた場所にあるモノはまた違った見え方をするのが面白いのも凸レンズの特徴ですね。

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