夏の星座 -その2- さそり座

さそり座はお誕生日の星座でもあるので、ご存じの方は多いと思います。

またさそり座が夏の星座であることをご存知の方も多いと思いますが、
夏の星座の中でもわりに早く昇ってくる星座です。

逆に夏休みの終わりころにさそり座を見ようと思うと夕方の早い
時刻でないと、南に低いこともあって、早々と沈んでいって
しまいます。

また南に低く、形作る星は暗いものが多いので、都会では全貌が
見つけにくいです。

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さそり座のα星は、ご存知アンターレス。

火星に対抗するもの(アンチ アレス=火星)という意味で、
オレンジ色の一等星。

サソリの心臓にあたる部分です。

このアンターレスの右側に扇形を描くようにサソリのツメつめに
あたる部分があって、この開きの小さな扇形は比較的良く目に付きます。

ところでプラネタリウムソフト(ステラナビゲーター)で星座絵を
見てみると・・

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ツメだと思っていたあたりはサソリの頭で、特にツメに割り当て
られた星があるようには見えません。

でも星の名前を調べて行くと、てんびん座の星にズベン エス カマリ
(北の爪)という星とズベン エル ゲヌビ(南の爪)という星があります。

昔々、さそり座は今よりもっと大きな星座で、てんびん座を飲み込む
ような大きなツメを持った星座であったようです。
(星座が現在のようにきっちり決められる前は、結構星座の星の相互
乗り入れというか、相互利用といったことが当たり前に行われていました。)

現代ではきっちり分けておかないと天球上の場所を示すときに混乱が
生じるということで星座の境界がしっかりしているのですが、昔の
人たちはおおらかだったのか、必要に応じサソリのツメに見立てたり、
天秤として使ったり、今よりも柔軟な発想で空を見上げていたのでしょう。

さそり座は神話では鼻持ちならない勇者「オリオン」を倒した
神様からの刺客で、その功績を称えられ星座になったということに
なっています。

そのため「オリオン」はいまだに「さそり」が恐くて、さそりが
昇るころには西の空に沈み、さそりが沈む頃に東の空に昇るという
追いかけっこを続けているのだそうです。

いくらオリオンがイヤなやつだったとは言え、危険な毒虫をそんなに気軽に
空に飾って良いものかと疑問に思う方はいないでしょうか・・・?

さそり座の周りの星座がわかるようになってくると、実はこの「さそり」
夜空では結構苦労しているのかも知れないということが分かってきます。

さそり座を中心とした星座の写真をお見せすると・・・

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さそりの上には「へびつかい座」、後ろ(左)には「いて座」、右下には
「おおかみ座」と「ケンタウルス座」、右上には「てんびん座」があります。

ここで「てんびん座」は前回「さそり座」の一部だったというお話を
したので、そういう眼で見るとさそり座のとなりは「おとめ座」と
いうことになります。

こういう状況を頭に入れたうえでプラネタリウムソフトのステラ
ナビゲータで星座絵を見てみると・・・

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「さそり座」がいかに苦しい状況にいるか分かってきます。

上からは「へびつかい座」に踏んづけられ、後ろからは「いて座」に
弓で狙われ、下からは「ケンタウルス座」に槍を突きつけられ
(オオカミ座を狙っているようにも見えますが・・)、
さらには(てんびん座がさそりのツメだとすれば)おしとやかなはずの
「おとめ座」にも蹴飛ばされているようにも見えます。

「へびつかい座」というのは蛇を巧みに操るお医者さんですので、サソリも
研究対象にしようと拘束状態にしているのだろうか?・・・ などと思えて
きます。

サソリにしてみればせっかく空に上げてもらったのに、ずいぶん居心地の
悪い場所だと憂鬱な毎日を過ごしているのではないかと、少し可哀相に思えて
来ます。

さそりとオリオンの追いかけっこのお話と似たような話が日本の
民話にもあることを今日紹介しようと思っていたのですが、
荒川様からコメントで紹介頂きましたので、そちらをご覧頂くとして
今日は望遠鏡での見所を紹介したいと思います。

さそり座の見所といえばまずは球状星団M4です。

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球状星団としては笑ってしまうほど密集度が低く、散開星団のように
しか見えないコンディションの日もあるほどです。

コンディションの良い日にみて初めて球状星団かなぁ・・という
感じに見えてきますが、ヘルクレス座のM13などと比較して
見比べるとおもしろいです。

空の条件の良いところであれば、サソリの尻尾の先のあたりにある
散開星団M6とM7の周辺を双眼鏡で見ると、かなり楽しむことが
できます。

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M6(上)もM7(下)もかなり大きな星団なので、望遠鏡だと全貌が
わからず散漫な感じの見え方になりますので、双眼鏡ののほうが
楽しめると思います。

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いずれの星団も天の川の中にあるので、その辺を双眼鏡で眺める
だけでも星の好きな方なら幸せな気分になれますね。

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