ヘルクレス座はギリシア神話の勇者ヘラクレスの星座です。
なのでヘラクレス座といっても良さそうなものですが、天文学の
世界では国によって発音が違うのをできるだけ避けるために、
ヨーロッパ系言語のルーツであるラテン語の読みを使うことに
なっています。
ですから勇者ヘラクレスといってもOKなのですが、ヘラクレス座と
言ってしまうと「こいつ素人だな・・・」と思われてしまうので
要注意です。
ヘルクレス座はこと座よりも先に昇る初夏の星座と言えます。
星の並びはこと座とかんむり座の間にある「K」のような並びが
目印で、これに頭の星(ラースアルケチー)や手足を繋げて全貌を
つかむことができます。
ただ「K」の並びの星たちでさえ3等星前後の明るさしかないので
星のかなりきれいな場所でないと全貌を見ることはできません。
でも全貌が見えると予想外に大きな星座であることがわかります。
それもそのはず、ヘルクレス座は全天88星座のうちうみへび・
おとめ・おおぐまに次いで第4位の面積を持つ大きな星座なんです。
あまり明るい星がなくて、無理矢理繋げて大きな星座になってしまう
ように思いますが、一説には大きな功績を残したヘラクレスをねたんだ
神様が暗い星ばかりにしてしまったという話もあります。
ヘラクレスはギリシア神話きっての英雄なのですが、悲劇のヒーロー
でもあります。
大神ゼウスの浮気がもとで生まれた子供だったのですが、ゼウスの
正妻である女神ヘラの嫉妬の呪いをかけられ、幸せになると気が
狂ってしまいとんでもない罪を犯してしまいます。
この狂気を償い逃れるために不可能とされていた12の荒行(冒険)を
して世のために尽くすのですが、それでもヘラの嫉妬は消えず、
終いには自らの妻に誤って殺されてしまう(妻はそれを悔いて自害
してしまう)というとても悲惨な一生なのです。
これについて詳しく語ろうと思えば、映画が楽に1本作れるくらいの
長編になってしい夏が終わってしまうのでここでは割愛します。
ヘルクレス座は大きな星座で、星の並び自体もなかなかうまく繋げた
ものだと思うのですが、暗い星ばかりで影が薄いのはヘラクレスの
薄幸な一生を物語るようです。
さて明るい星の少ないヘルクレス座ですが、望遠鏡で眺める天体は
かなりの大スターがいます。
ヘルクレス座の腰のあたりにある球状星団M13です。
スタパで見える球状星団の中でも最もはっきりしたものです。
8cmくらいの望遠鏡で見ても球状星団らしいツブツブした感じが
わかる大きな星団です。
条件が良いときにはゲストから歓声が上がるほど見事な(天体写真に
近い)見え方をします。
ヘルクレス座にはもう一つM92という球状星団があります。
こちらもなかなか立派な球状星団なのですが、M13の陰に隠れて
あまり見てもらえることが少ない星団です。
ヘルクレス座ではなくかんむり座あたりにあれば、きっともっと
出番が多いと思うのですがね。
ところでヘラクレスの頭の所にある星(=α星:ラースアルケチー)は
きれいな二重星(連星)です。
オレンジ色の主星と黄色の伴星がわりと接近して見えてヘラクレスの
頭としては不釣り合いに感じるほどかわいらしい星です。
M13を見たらぜひセットで見て頂ければと思います。