こと座、わし座ときたら次は当然のようにはくちょう座の番です。
はくちょう座のα星デネブが夏の大三角の一角をなす星だからです。
ベガ、アルタイルに比べると少し暗いですが1等星の一つです。
見た目は少しくらいのですが、ベガ(25光年)、アルタイル(17
光年)に比べ、デネブは1300光年ととんでもなく遠いところにある
星なので、実際はものすごく明るい星だということが分かっています。
デネブという名前は「お尻」とか「尻尾」という意味があり、実際に
星座を見上げると、なるほど空を羽ばたく白鳥の尻尾の位置に輝いて
います。
はくちょう座の星の並びは全天88星座の中でもピカ一の美しさだと
私は思っています。
何百回と見ているはずなのに、見上げるたびに白鳥が優雅に空を
飛ぶ姿が目に浮かんで感動できます。
さて、はくちょう座のギリシア神話ですが、これまたゼウスの化身と
いうことになっています。
こともあろうにスパルタ王テュンダレオースの妻であるレダを見そめた
ゼウスが白鳥に化けてレダに近づき、かわいがられてしまいます。
やがてレダは二つの卵を産み落とし、その一つからはテュンダレオースの
子であるカストルとゼウスの子であるポルックス(ふたご座の仲良し
兄弟)が生まれ、もう一つからはテュンダレオースの子である(後に
ミュケーナイ王アガメムノーンの妃となった)クリュタイムネーストラーと、
ゼウスの子である(後にトロイア戦争の発端の一つとなった絶世の
美女)ヘレネーが生まれます。(・・・あ~複雑・・・)
神の子であるポルックスとヘレネーは不死身、人間の子である
カストルとクリュタイムネーストラーは不死身でないということに
なっています。
卵から子供が生まれるなんて何とも不思議なお話ですが、最近の
研究ではトロイの木馬で有名なトロイア戦争は本当にあったらしい
ということになっていますので、神話と史実がつながるとても
興味深い話だと思います。
はくちょう座はわし座と同じく天の川の中にドップリ浸かっている
ので、とにかく細かいたくさんの星があります。
条件の良いときに少し大型の双眼鏡で眺めれば、ばらまかれた砂粒の
ように散らばる細かな星達を眺めることができ、とてもきれいです。
天の川が星の大集団であることが実感でき、私たちが銀河系の一員で
あることも分かるような気がしてきます。
条件に恵まれたなら是非双眼鏡の天の川クルーズで訪れて欲しい
場所です。
さて、はくちょう座ですが星がたくさんある割に望遠鏡で観察して
楽しい天体が意外に少ないです。
アルビレオ(白鳥のくちばしにあたる星)は全天で最も美しいと誉れ高い
二重星です。
50倍くらいの望遠鏡で見ると金色の主星と、水色の伴星の色の対比が
とても素晴らしくきれいです。
ただこのアルビレオわりと明るい星なので、あまり口径の大きな
望遠鏡で見ると色が分かりにくくなってしまうので、10~15cmくらいの
望遠鏡で見るのが一番きれいに見えます。
星の色の見え方って使用する望遠鏡やコンディションによりかなり
微妙に変化するものなんです。
これだけ星があるのにはくちょう座にはメシエ天体が1個(M29)しか
ありません。
しかもM29は天の川の中にある散開星団なのですが、星の数はそれほど
多くなく、5~6個の明るめの星が少しかたまったこぢんまりしたもの
です。
デネブの近くにある北アメリカ星雲はとても有名ですが、かなり大きな
星雲なのと肉眼では見えにくいので、よほど条件の良い時に、低倍率で
見ると何とか見えるといった程度です。
小口径の低倍率にお奨めなのはデネブの近くにある31番星と30番星の
二重星。
少し倍率の高めな双眼鏡でも色の対比を楽しむことができます。