-月の高さと明るさの関係(1)-
満月の明るさは 0.25 lx ですと昨日お話したのですが、これには
条件があります。
この 0.25 lx というのは満月が頭の真上にあって、地面を垂直に
照らす状態で、なおかつ大気による減光の影響がないものとした
ときの明るさです。
こういう状況の明るさを専門用語で「直射法線照度」といいます。
当然のことですが、斜めから光が差し込めば明るさは落ちますし、
大気の中を長く通ることになるので、大気の減光の影響を強く受ける
ことになります。
斜めから光が差し込むと、どのくらい明るさが落ちるかを示す公式
としては照明計算の基礎の基礎ともいえる「余弦(コサイン)の法則」が
当てはまります。
E = E0・cosθ (lx)
ここで E :θ方向から差し込んだ光による照度
E0:直射法線照度
θ:法線(真上)からどれだけ離れているかの角度
こんな風に数式になると、いきなり難しくなってしまうような気がします。
文系頭のかたは「思考が停止するから、やめれ~ッ!」と思うかも知れ
ませんが、冷静に考えて頂くとそれほど難しい話ではないです・・・
上の図で一番左は照らされる面(被照面)に垂直に光が差し込んでいる
状態で、これが基本の状態で100%の明るさです。
一番右の図は光が真横から照らされる状態で、理論的には被照面に
光が当たらないので、0%の明るさになります。
さて、ここまでは誰が考えても当たり前の話ですよね・・・
で、問題はこの真正面と真横の中間の明るさがどのように変化
するか?です。
被照面が斜めになれば、見かけの面積が少しずつ小さくなるのは
何となく分かると思います。
被照面の奥行きが一定だと考えれば、面積の比は直角三角形の
底辺と斜辺の長さの比と同じです。
つまり、傾きが30°のときは 三角形の斜辺の長さを2とすると、
底辺の長さは√3(=1.732)ですから √3/2 ≒ 0.866 というのが
光を受けることのできる投影面積ということになります。
傾きが30°のときには真上から光が照射されるときよりも0.86倍の
明るさになります。
同様に傾きが60°のときは、斜辺の長さが2とすると底辺の長さは
1になりますから、明るさは2分の1になるというわけです。
ここで斜辺と底辺が挟む角度をθとすると
底辺 ÷ 斜辺 = cosθ
という三角関数の式が成り立つので、「余弦の法則」などと難しい
言葉を使ってひと言で済ませています。
でも、とにかく難しく考えずに、上の図のように考えて、30°の
傾きのときは1.5本ぐらい光がはみ出している。 60°のときは
5本ぐらいの光がはみ出している・・・。
というふうに考えて頂ければ、斜めから光が入れば角度に応じて
暗くなるということが理解できると思います。
ふ~っ・・・ 理系でない方にはあまり楽しくない話で
すみません・・・
月の話からずいぶん離れてしまったように思うかも知れないのですが、
月が照らす角度によって地面の明るさが変わるということを知って
頂きたいわけです。