-月の高さと明るさの関係(2)-
太陽は夏に高く昇り、冬には低い位置までしか昇りませんが、
満月は夏と冬、どちらが高く昇るのでしょうか・・・?
ここではこれについて詳しく説明します。
答えを先に言ってしまいますが、満月は太陽と逆で、冬に高く昇り、
夏は低くしか昇りません。
上の図を見て下さい。(この図はステラナビゲータV8というパソコン
用プラネタリウムのソフトを用いて作成しました。月の地上高度を
示すためのもので星の位置はデタラメになっている部分があります。)
2009年の夏至に最も近い満月(6/9)と、冬至に最も近い満月(12/31)の
南中時の高さ(地平線からの角度)を示しています。
図中赤い線は「天の赤道」、黄色い線は「黄道(こうどう)」(天球上の
太陽の通り道)を示します。
6/9の南中高度は27°で天頂離隔(天頂からの角度)は63°、
12/31の南中高度は78°で天頂離隔(天頂からの角度)は12°くらいに
なっています。
じっくり考えれば分かると思いますが、満月というのは地球を挟んで
太陽と月が180°の角度になったときですから、季節も180°離れた
ものになるというわけなのですが・・・
もう少し詳しく図で説明します。
この図は概念図です。各天体の大きさや距離のスケールはまちまち
です。
ご存じのように地球の地軸は太陽を公転する軌道面に対し23.5°ほど
傾いています。
このおかげで太陽を一周する間に、太陽の南中高度が高くなったり、
低くなったりするため四季があるというのは、おわかりと思います。
それでは月はといいますと・・・
月は地球をまわりながら、太陽から一番離れたところでほぼ満月に
なります。
図には夏至の頃と冬至の頃の地球と満月の位置関係を表示しています。
図を見れば明らかなように日本から見ると、冬至の頃の満月は天頂に
近く、夏至の頃の満月は天頂から遠く、地上高度が低いというわけです。
満月の高さのからくり、ご理解頂けたでしょうか?
補足説明
厳密には月の公転軌道は地球の公転軌道面に対し約5°ほど傾いています。
さらにややこしいことに、この5°の傾きは変わらないのですが、
傾きのピークの位置が18年周期で移動して行きます。
このため、年によっては夏至の太陽の高さよりも、さらに高い高度に
なったり低い高度の年があったりします。
(同じ理由で、冬至の太陽より低い満月の年もあります。) ここでは
話を簡略化するため地球と月の軌道面を同一平面上にあるとして
説明しました。
それではなぜ月光浴が冬に向いているのか・・・
これまで高いところから射し込む光は有効に地面を照らすこと、
冬の満月が高く昇ることを解説してきました。
これは(かなり回りくどかったのですが)、冬の満月がとても明るく、
「月光浴」(おもに月光浴散歩=ムーンライトウォーク)に最適な時期で
あることを理解頂きたかったからです。
それでは具体的に夏至の頃と冬至の頃の満月の明るさが、具体的に
どのくらい違うのかを検証してみましょう。
前回の記事で夏至の頃の満月の南中時の天頂離隔は63°でした。
同様に、冬至の頃の満月の南中時の天頂離隔は12°でした。
これを前々回紹介した直射法線照度と入射角度から水平面の照度を
求める式に代入すると (ここでは直射法線照度を0.25 lx とします。)
夏至: 0.25×cos63°= 0.25×0.454 = 0.114 lx
冬至: 0.25×cos12°= 0.25×0.978 = 0.245 lx
となり、冬至の方が倍以上も明るいということがわかります。
さらに、実際の地上の照度は大気による光の減衰の影響を加味しなければ
なりません。
上の図で、①と②ではやはり倍の減衰効果があるわけですし、
冬の乾燥して澄んだ空気と、夏の水蒸気たっぷりの霞んだ空気とでは、
大幅に透過率が異なります。
冬の透過率を95%程度とし、夏を90%としても、夏は高度が
低く空気中を倍の距離通過するわけですから90%の自乗が減衰率に
なります。
0.9×0.9=0.81 となりますと、
夏至: 0.114 × 0.81 = 0.092 lx
冬至: 0.245 × 0.95 = 0.233 lx
となり2.5倍も明るいということになります。
でも、明るさの差はこれだけではなく、まだまだ広がります。