超入門 望遠鏡光学 (その3) 望遠鏡の原理を知る

今日も一日曇り空・・・

160930hasi-3

さて今日も「望遠鏡光学」シリーズです。

2.望遠鏡の原理を知る

2-1.凸レンズを使用したケプラー式望遠鏡

本章では「望遠鏡の原理を知る」というお題で、なぜ望遠鏡で遠くのモノが大きく見えるのかについて考えます。

1章の解説でレンズ「像」を作るということを理解頂けたと思います。

100521syouten3

上は1章で示したレンズが像を作る概念図ですが、スクリーンに映し出されたロウソクの像をルーペ(虫眼鏡)で見たらロウソクをもっと大きく見ることができると思いませんか?

ルーペの場合、焦点距離が短いレンズほど倍率が上がります。

例えば同じ虫眼鏡を2枚重ねて使うと、1枚のときより虫眼鏡としては倍率が上がります。

これは1枚のときより2枚のときの方が光がより強く曲げられ焦点距離が短くなっているからです。

昨日説明したように、像は焦点距離の長い方が大きなものになります。

ですから、前方に置くレンズ(物に対して近い方なので「対物レンズ」といいます。)の焦点距離をできるだけ長くして、像を拡大して見る眼に近い方のレンズ(眼に接するレンズなので「接眼レンズ」といいます。)はできるだけ焦点距離の短いレンズを使うことにより、高い倍率で遠くのモノが見えるというわけです。

でもスクリーンに映った像をルーペで見るためには自分の頭が邪魔をしそうですよね。

ただ、面白いことに上の図でスクリーンを取り払っても、「像」自体はその空間に浮かんでいますので、対物レンズの光軸とずれないように接眼レンズの光軸とピントをうまく合わせてやると、空中に浮かんでいる「像」を接眼レンズでうまく拡大してみることができます。

100523genri

(この図自体は概念を示すイメージですので、レンズの形状、ロウソクや像の位置関係などは正確性を欠いていますので悪しからず。)

さあ、これこそが離れたところにある物を大きく見ることができる「望遠鏡」の原理そのものというわけです。

「対物レンズ」が作った像を「接眼レンズ」で拡大してみるというこの形は、現状使われているほとんどの眼視用望遠鏡の原型と言えるもので、ケプラー式と呼ばれる方式です。

「対物レンズ」が作った像は逆さま(倒立像)で、それをルーペで見ているだけですから、ケプラー式望遠鏡は物が(当然ですが)逆さまに見えます。

双眼鏡やフィールドスコープなどで地上を見る場合には倒立像ですと、とても使いにくいので対物レンズと接眼レンズ間に像を逆さまにするためのプリズムやミラーを入れて、正立像を作ります。(このへんについては、いずれ詳しく・・)

さて少し話しがそれますが・・・

上の図で対物レンズが作った「像」はスクリーンに映したり、ルーペで拡大して見ることができる実体のある「像」です。

物に対してレンズをはさんで(レンズの後ろ側に)あるのですが、このような「像」を「実像」といいます。

一方、接眼レンズをのぞいて中に見える拡大された像は、レンズの前側にあって、のぞき見るだけで、「像」の実体に触れたりすることができませんので「虚像」と呼ばれています。

「実像」と「虚像」、どちらが偉いとか正しいとかと言うことではなくて、レンズを使って物を見るときの考え方を整理するのに必要な使い分けですので覚えておいてください。

2-2.ガリレオ式望遠鏡と凹レンズ

昨日は凸レンズをふたつ組み合わせるタイプの天体望遠鏡(ケプラー式)の原理を紹介しましたが、基本的な望遠鏡の形式としてガリレオ式というタイプがあります。

100524garireo

対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使っています。

このガリレオ式望遠鏡というのは今から400年前のこと・・・

当時発明されたばかりの望遠鏡を自分で工夫して作り上げ、天文学上、数々の新発見をした「ガリレオ・ガリレイ」さんが使用した望遠鏡のレンズ構成にちなんでこの名前が付けられています。

ガリレオ式望遠鏡については以前に
ガリレオの望遠鏡
ガリレオ望遠鏡の謎(ミステリー)
「ガリレオ望遠鏡の謎(ミステリー)」に挑む
などで詳しく解説していますので興味のあるかたはそちらをご覧ください。

これまでの解説で、レンズと言えば凸レンズということで話を進めてきましたが、凹レンズについて解説をしておきたいと思います。

凸レンズのみを使った光学系というのは総称して収差と言われる像のにじみやボケが多くてそのままでは使い物になりにくいものが多いです。

1枚だけでなく複数の凸レンズや凹レンズを組み合わせることにより、大幅に収差を減らすことが可能になります。

そんなわけで凹レンズとはいったいどんなモノか・・・しばらくお付き合い下さい。

100524outoturenz

凹レンズというのは読んで字のごとく、凹みのあるレンズです。

上図のようにこのレンズに入射した光は、凸レンズのように収束して焦点に集まることはなく、拡散されてしまいます。

拡散する光を(仮想的に)逆にたどって、光が入射した側に延ばして、これが収束した点を凹レンズの焦点と言い、レンズからこの焦点までの距離を(凸レンズと同様)焦点距離と言います。

実際に焦点を結ばないのにちょっとピンと来ないですが、例えば焦点距離の同じ凸レンズと凹レンズを組み合わせて景色を見ると、凸レンズの光の収束を凹レンズが完全に打ち消すので、素通しのガラスを見ているのと同じことが起こります。

このため凸レンズがプラス(正)の収束なら凹レンズはマイナス(負)の収束をすると考えられるので、凸レンズを正レンズ、凹レンズを負レンズと呼ぶことも多いです。

私たちの身の回りにある最も身近な凹レンズは近視用のメガネに使われているレンズで、その逆の凸レンズは遠視(老眼)用メガネに使われています。

よく知られていることですが、凹レンズを通してモノを見ると・・・

100524outoturenz2

小さくなって(=遠くにあるように)見えます。

これは近くのモノでも、遠くのモノでも同じような傾向で小さくなって見えます。

また、凸レンズは近く(焦点距離より手前)にあるモノは拡大して見えます。

100524toturenz

焦点の位置や、それより離れた場所にあるモノはまた違った見え方をするのが面白いのも凸レンズの特徴ですね。

(続く・・・)

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
カテゴリー: 天文関係, 望遠鏡・機材 パーマリンク

超入門 望遠鏡光学 (その3) 望遠鏡の原理を知る への7件のフィードバック

  1. 岡田 邦英 のコメント:

    トツトツ望遠鏡についての単純な質問ですが、対物レンズによって遠くの物体が、殆ど、その焦点fの位置に実像としてできるのは分かります。更に、接眼レンズ(焦点距離f’)によって拡大されますが、このとき、実像をf’より内側に置かねばならないこともわかります。しかし、虫眼鏡で経験するように内側であれば、どこでも虚像が出来、大きさは位置によって変わるように思うのです。ところが、実際には、どこか一か所でのみ虚像のピントが合うのが理解できません。ちなみに虫眼鏡の場合には、虚像が明視の距離(25cm)にあるとして倍率を表します。望遠鏡場合には、その位置が非常に遠いとして倍率Mを求めればM=f/f’ になるのですが、私には位置が不明なので理解できません。

  2. スタパオーナー のコメント:

    岡田さま
    虫眼鏡でものを拡大して見る場合、拡大された像は虚像ですが、虫眼鏡の場合、眼とレンズ、レンズと対象のそれぞれの距離により倍率は変わります。
    このため明視の距離(25cm)で見ることを前提に倍率を決めています。
    眼とレンズの距離を固定(例えば眼の直前に)した場合にはピントの合う位置は(眼のピント調整範囲を除けば)固定され倍率も固定されます。
    この状態で対物レンズで作られる実像を見れば望遠鏡の倍率は一義的に決まるのです。
    このため岡田さまが疑問に思われるような倍率が変わってしまうような現象は起きません。
    まー、、、このブログの記事は望遠鏡の原理を何となく判ったつもりになっていただくことを主旨としています。
    本気で全てわかろうと思うと「光学」のとても難しい勉強を一から始めなければならないので、判らないところは「だいたいそんな感じ・・・」くらいに妥協しておくのが無難と思っています。

  3. 岡田 邦英 のコメント:

    前略、昨日、質問をしたものですが、夜中に考えているうちに、はっと気が付きました。目玉のことを忘れていました。これも考えに入れると望遠鏡が理解できることが分かりました。ご迷惑をおかけしました。もし、考え違いをしていないか、ご心配ならば、簡単な計算を送ります。早々 

  4. スタパオーナー のコメント:

    岡田さま
    問題が解決されたようで何よりです。

  5. 岡田 邦英 のコメント:

    ご返事をいただいて感謝しております。ところで、友人と話をしていて、やはり、私の理解はおかしいことになりまして、いまだに解決しておりません。その論点はボケて見えることが、どうゆう事か、にあると思っています。しかし、色収差やコマ収差、さらには二重反射屈折など難しい話がありますので、私の質問はこのくらいにいたします。自分達で考えますので、これ以上は質問しないことにいたします。大変、ありがとございました。

  6. 山口章男 のコメント:

    D=127,f=900 筒径=160,斜鏡=主鏡=780
    4mmの接眼レンズを使っても今西空に見える金星が
    ただの丸い小さいボールにしか見えません。
    もっと大きくなぜ見えないのでしょうか?

  7. スタパオーナー のコメント:

    山口さま
    最大光輝にちかいここ1~2週間の金星はとても大きいので、30~40倍の倍率でも充分三日月型に見えるはずです。
    接眼レンズを外した状態で接眼部を覗いた時、斜鏡を通して主鏡が中央に見えていますか?
    20~30mmくらいの接眼レンズで試してみましたか?
    4mmでも20mmくらいの長い焦点距離でも遠くの景色が見えますか?
    いろいろ試してみて下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください