さて「冬の星座」シリーズ第2弾「おうし座」です。
おうし座も前回のエリダヌス座同様冬の先駆けの星座と言えます。
秋の夕刻にスバルが昇ってきて、冬が近い事を知らせてくれるように
なります。
おうし座は黄道12星座のひとつなので知らない人はいないと思い
ますし、星座神話も有名で、女癖の悪いゼウスがテュロスの王女
エウロパをナンパするのに雄牛に化けてかっさらうと言う、しょーも
ない物語をご存じの方も多いと思います。
エウロパをかっさらって行った先がその名にちなんでヨーロッパに
なったという逸話も有名ですね。
またエウロパというと木星の衛星を思い出す方もあるかも知れません。
木星=ジュピターはゼウスのことで、木星の四大衛星、イオ、エウロパ、
ガニメデ、カリストはいずれもゼウスの毒牙に掛かった人物です。
(ガニメデは男の子のなんですけどね・・)
さて、おうし座といえば何と言ってもスバル(=プレアデス星団:M45)
です。
スバルは散開星団という若い星たちの集団のひとつです。
スバルの場合は青白い星が多くとりわけ若い星たちの集団だといわれて
います。(青白く輝く星というのは非常に高温ですぐに燃え尽きて
しまう寿命の短い星でそういう星がまだ燃え尽きていなくてたくさん
あるというのは、星団全体がまだ若いと言えるからです。)
散開星団の中でも地球にわりと近く(約440光年)、明るい星が多い
ため、都会でもぼんやりと見えるほどですので、古今東西で様々な
名前で呼ばれて親しまれています。
肉眼で見えるくらいですので、かなり大きく望遠鏡であまり倍率を
上げて見てしまうと、却って面白くありません。
高倍率の望遠鏡で見るとこんなふうにしか見えなくで却ってガッカリ
してしまいます。
スバルを見るときは双眼鏡や30倍以下の望遠鏡がお奨めです。
おうし座にはもう一つ有名な散開星団があります。
おうし座の顔に当たるV字型に星が並んでいる部分は、スバルよりも
さらに大きいのですが散開星団で、ヒアデス星団と呼ばれています。
日本ではこのVの字を釣鐘星と呼んでいた地域もあります。
あまり大きすぎて昔は散開星団と思われていなかったようなのですが
研究の結果、散開星団であることがわかりました。
プレアデス星団よりずっと近くにあるので大きく広がって見えています。
(プレアデス星団:440光年、ヒアデス星団:150光年)
ヒアデス星団の中でひときわ明るく輝くオレンジ色の星は、おうしの
目にあたる星で1等星のアルデバランですが、ヒアデス星団に属する
星ではなくもっと近く(67光年)にあります。
ヒアデス星団とプレアデス星団は望遠鏡で見るより双眼鏡で楽しめる
天体です。
二つの星団とアルデバランを宇宙の奥行きを感じながら双眼鏡で
じっくり眺めるとなかなか楽しいです。
ギリシア神話ではプレアデスの7人姉妹が有名ですが、ヒアデスも
プレアデスの異母姉妹(父親はアトラス)で7人姉妹(5人という説も
ある)だったそうです。
ヒアデス星団からオリオン座にかけては冬の天の川に近い事もあって、
とてもたくさんの星があるので、双眼鏡で眺めるのが楽しい場所でも
あります。
さて、おうし座にはもうひとつ有名な天体があります。
アルデバランから伸びた角の先の星に近いあたりにあるカニ星雲
(M1)と呼ばれる天体です。
西暦1054年に超新星爆発を起こした星の残骸だといわれています。
大きな望遠鏡で見るとカニのように見えたことからその名前で呼ばれて
いますが、よほど大きな望遠鏡でないとカニには見えません。
何と言っても星の残骸なので、とても淡くて少しコンディションが
悪いと見え辛くなるデリケートな天体です。
スバルやヒアデス星団のような若い星の集まりがあったかと思えば、
カニ星雲の ような星の残骸があったりと、おうし座は楽しい星座なんです。