今日はスッキリしないお天気。
秋なので天気も足早に移り変わる感じです。
さて、「望遠鏡光学」シリーズ。
9. 遮光環について
9-1. 遮光環の役割
本章では屈折望遠鏡の「遮光環」について解説したいと思います。
「光学」といいつつ直接レンズなどの光学系ではない部分の説明なぜするのかというと、この設計がきちんとしていないと、どんなに良いレンズを使ってもよく見える望遠鏡にならないからです。
遮光環の役割を理解できれば、望遠鏡を自作する場合や、見え方の悪い望遠鏡を改造するときにとても役に立ちますので、少し突っ込んだ解説をしたいと思います。
(実は市販の安い望遠鏡の中にはレンズはまともなのに遮光環の設計が適切でないために良く見えないものがたくさんあるのです。)
遮光環というのは、屈折望遠鏡の鏡筒の中に入っているドーナツ状の絞りのようなリングのことです。
「絞り環」とか「遮光絞り」とか「バッフル」といった呼び方をすることがありますがここでは「遮光環」と呼びます。
望遠鏡を対物レンズ側からのぞき込むと、筒の中に1・2枚設けられているのが分かります。(写真では光のかげんで三日月形に光っています。)
具体的にこの部品がどんな役割をしているか、まずは遮光環の有無で何が違うのかを見て下さい。
下は遮光環のない望遠鏡に接眼レンズを付けずに、明るい方に向けてみたときの状態です。
筒の内側が明るく光っているのが分かると思います。
次にこの望遠鏡に遮光環を配置したときの見え方が下です。
完璧ではありませんが、筒の内側の乱反射(迷光といいます)がほとんどなくなりレンズだけが明るく光っているのが分かると思います。
上の(遮光環がない)状態で接眼レンズを付けて景色を見ると、何となくモヤが掛かったように霞んだ見え方をします。
下の状態ではシャキッとクリアに景色が見えるようになります。
つまり遮光環を適切に配置することにより、鏡筒内での迷光を抑え、コントラストの高いクリアな像を得ることができるようになるわけです。
9-2.遮光環の基本的な設計方法
遮光環というのは、屈折望遠鏡にとって直接の光学部品ではありませんが、性能を大きく左右する部品であるこを前節で説明しました。
本節ではこの遮光環をどのような考え方で設計して配置しているかについて説明します。
遮光環の配置を検討する場合、難しい計算で行うよりも尺度の正しい図面を描いて検討するほうが簡単で、一般的です。
ここで重要なのは
・対物レンズ径(有効径)
・ 同 焦点距離
・接眼レンズ視野絞り径(視野絞りを対物レンズの焦点位置におきます)
(31.7mm径なら28mm、50.8mm径なら48mm程度が適切です。)
・鏡筒内径(有効径の15~20%大きいのが理想的)
という4つの寸法です。
この寸法をきっちり図面上に描いて、以下の検討を進めます。
① まず初めに接眼視野絞りの下端から対物レンズ下端を直線で結びます。
② 次に接眼視野絞りの上端から対物レンズ側の鏡筒下端を直線で結びます。
③ 上記①と②の交点から垂直に鏡筒におろした線が遮光環の高さになります。
(つまりこれが1番目の遮光環の幅になります。)
2番目以降の遮光環の位置は一段前の遮光環によってできる影より手前が
見えないように設計します。
2番目の遮光環について具体的には
① 対物レンズ上端から1番目の遮光環上端を通り鏡筒内面にぶつかる線を
引きます。
② 視野絞り下端から対物レンズ下端を直線で結びます。
③ 視野絞り上端から上記①の鏡筒との交点を直線で結びます。
④ 上記②と③の交点から垂直に鏡筒におろした線が遮光環の高さになります。
3番目以降についても同様に作図してみますと・・
この例では3枚の遮光環で迷光が完全に防止できることが分かります。
言葉で書くと何だか難しそうで億劫な感じがしますが、実際にやってみると
意外に簡単に描けます。