今年の夏は「火星大接近」(その4)

今日も蒸し暑い天候。

昨晩は天気予報に反してなんとか星の見える天候でしたが、今夜は残念ながら曇ってしまいました。

今夜も火星ネタのお話し。

今日は火星の見方についてお話しします。

大接近のときの火星はとても明るく輝き、-2.8等星と木星よりも明るくなります。

いて座にいるので南の低い空でとても目立つ輝き方をしますので、肉眼で見るだけでも楽しめます。


こちらは2016接近時の写真

でもある程度しっかりした望遠鏡を使える環境にあれば、ぜひ100倍以上の倍率で眺めて頂きたいです。

ここで「しっかりした望遠鏡」とは、望遠鏡の命とも言える対物レンズ(または対物鏡)が高精度に製作されていて、きれいな像を結ぶ光学系であることと、望遠鏡を載せる台(架台)が頑丈でガタやブレが少なく、高倍率でも星の動きに合わせてスムーズに鏡筒を動かせるものであることです。

また架台は高倍率を使用するので、微動装置が付いているほうが望ましく、星の追尾が容易な赤道儀式のほうがよいですし、自動追尾用モーターが付いていればじっくり観察するのに向いています。

スタパの貸出用望遠鏡に赤道儀式が多いのはこういった用途を想定してのことです。

一度赤道儀に慣れてしまうと、高倍率の惑星観測に経緯台を使う気がしなくなるほどです。

望遠鏡は口径が大きいほど分解能が高くなりより細かいところまで観察できるので、出来るだけ大きいほうが望ましいのですが、あまり大きいと出し入れがとても億劫になるので体力や住宅事情を勘案してサイズを決めるとよいです。

口径10cm以上を推奨しますが、5cmでもF15以上の長焦点なら意外に見えます。(下は1971年の大接近のときに5cm望遠鏡でのスケッチ)

火星の視直径が20″以上になる最接近の前後1ヶ月間(7・8月の2ヶ月)は小望遠鏡でも充分に観察可能です。

ただし火星の表面模様はとても淡く、コントラストが低くいのでかなり慣れないとスケッチや写真のようにクッキリとした濃淡を感じることができないかも知れません。

古い火星のガイドブックには火星の模様が見えるようになるまでに1ヶ月くらい掛かったという話が紹介されているほどで、「今日は大接近当日」だからといって、その日だけ望遠鏡を向けても慣れていないと全然見えないということになります。

7月初旬くらいから出来るだけ暇を見つけ火星を観察するとよいです。

なぜそんな訓練が必要なのかですが、そのためには人間の眼の特性を少し知っておく必要があります。

人間の眼の中で光を感じる網膜細胞には錐体(すい状体)と桿体(かん状体)の2種類があります。

錐体と桿体は特性がかなり違っていて、継ぎのような役割分担をしています。

・錐体:視線中心付近に集中して、色や形を見分けるが感度は低い

・桿体:視野周辺に分散しており、動きや明暗を感じやすい、色は見分けられないが感度が高い

それぞれの細胞の分布は下図のようになっています。

図から分かるように色や形を見る錐体は視野中心の非常に狭い部分に高密度に配置されています。

本当に細かいものを見分けられる範囲は見張り角で1度未満です。

もっと極端に言うと5円玉を持って腕を一杯に伸ばして見たときに、5円玉の穴の中の範囲くらいしか本当に細かい部分を見分けることが出来ないのです。

普段そんな風に感じないのは無意識のうちに眼を微細に動かして、広い範囲が細かく見えている気になっているだけです。

このため細かいものを見分けるためには、視野の中心(=一番分解能の高い部分)をピッタリ火星に向けて見られるようにしなければいけないのです。

ただ漫然と眺めているといつまでたっても模様は見えてこなくて、懸命に見ようという意思を持って見ないと認識できないのです。

このことを理解して眺めるだけでも火星の模様を早く見つけることができるようになりますので、ぜひ試してみて下さい。(続く)

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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