七夕について再度考える

今日も素晴らしく良い天気。

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そして今日は7月7日は七夕。

夜は雲が多いものの珍しく何とか星の見える天候でした。

でも例年のことですが、新暦の7月7日に七夕まつりを行うのは如何なものかと申し上げています。

この梅雨の時期に七夕を無理があると思いませんか?

なぜなら日本の本州付近ではこの時期に梅雨が明けていることは稀で、せっかくの星のお祭りなのにほとんどの年で七夕の星を見ることができないです。

しかも7月7日頃というのは、七夕の星である織姫星(こと座のべが)や彦星(わし座のアルタイル)はまだあまり高く昇っていなくて、天の川も昇ってきてはいますがよほど空のきれいな場所でない限り良く見えない状態です。(下図参照)

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本来七夕というのは旧暦7月7日に行われる行事ですので、現在の暦とは約1ヶ月ズレていて前倒しに行うためにそんな事が起こってしまうのです。

その意味では毎年8月7日に行われる仙台の七夕祭りは宵の口に織姫・彦星も高い所にいて、天の川もほぼ南中していますし、(ほとんどの場合)梅雨も明けているので、7月7日よりも遙かに正しいものと言えます。

でも新暦の8月7日に星が見えやすいかと言えば必ずしもそうではありません。

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天の川はとても淡いので、月が半月よりも太い(満月に近い)と月明かりにかき消されてしまい星まつりとしての風情がなくなってしまいます。
(上の写真のように満月の夜は景色は見えますが星はあまり見えません。)

新暦ではその年ごとに月齢が変わるので日本固有のお祭りを新暦で祝うのは絶対に無理があるということになるのです。

ところで旧暦というのは月の満ち欠けをベースにした暦なので、毎月朔日(ついたち)は必ず朔(さく=新月)で、15日はほぼ満月になるという、日にちと月齢がリンクしたものです。

なので七夕は当然のことですが、旧暦7月7日、つまり月齢6(ほぼ半月に1日前)の日に行われるのが正しいのです。

宵の口には月齢6の月が西空の低いところにあって、少しだけ月明かりで天の川や暗い星達が少し見えづらくなります。

その分、織姫(ベガ)・彦星(アルタイル)などの明るい星は浮き上がって見つけやすくなります。(街明かりのない闇夜では星がたくさんすぎて明るい星が目立たなくなるのです。)月明かりで天の川が少し薄くなって、織姫と牽牛が天の川を渡りやすくなっているという設定。

西の空に傾いた月は牽牛・織女を乗せる小舟のように見えてきます。

新月でも満月でもない、絶妙な星の見え方をする日に七夕という星祭りの夜は設定されているのです。

旧暦7月7日に七夕の星を見上げると改めて昔の人の粋を星空を見上げながら実感することができます。

中国の正月だって、西洋のイースターだって、イスラムのラマダーンだってみな旧暦(あるいは月齢)をベースにしているわけで、お祭りの暦学的意味も風情も全く無視して、石部金吉的几帳面さで新暦のこよみで行事を行うのはとてもナンセンスなことです。

最近、天文業界ではこの旧暦7月7日の日を「伝統的七夕」と呼ぶのが一般的になっています。

ずいぶん厳めしい呼び方でもう少しスマートな呼称はないのかと気になるのですが、現在の暦上だけの7月7日の七夕があまりにも一般的になってしまっているものだから、少し重々しい言葉を使って「本家はこちら」みたいな雰囲気を出そうとしているのかも知れません。

例年、この旧暦7月7日(2016年は8月9日)に「伝統的七夕ライトダウンキャンペーン」という行事が催されています。

ぜひこの日は家の内外の灯りを消して夜空を見上げてもらえるように出来たら良いと思います。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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七夕について再度考える への4件のフィードバック

  1. nn のコメント:

    せっかくの年に一度の逢瀬の時を、下界から注目を浴びるのはかわいそうだから
    天が空を曇らせて見えないようにしてくれている、と解釈してました

  2. スタパオーナー のコメント:

    nnさま

    そんなふうに解釈している方も多いと思いますし、最近ではそれも新暦七夕の解釈の一つと割り切っても良いかな・・?と思うようになって来ました。
    新暦の七夕、8月7日の七夕、旧暦の七夕とことあるごとに星に想いを馳せるための入り口があると考えると、それも「あり!」だと思うのです。

  3. caz kei のコメント:

    七夕について、昔、科学朝日という月刊誌(2000年に廃刊)に掲載されていた話は、子供心にも十分納得できるものでしたので、ご紹介させていただきます。
    「月の錯覚」をご存知ですか?月が地平線近くでは大きく見え、その後、月が登るに従って小さくなり、天頂では最小に見えるという現象です。ということは、星と星との間隔も、地平線近くでは遠く、天頂で最小になるということです。
    夏の大三角形と呼ばれるように、夏の夜空に輝く星の中でも、天の川を挟んでひときわ大きく目立つベガとアルタイルですが、新暦の七月七日の頃には、地平線近くにあって遠く離れているベガ(織女)とアルタイル(牽牛)が、高度を増すに従って近づき、旧暦七月七日になると、天頂という、観察には絶好のロケーションで、最接近することになります。
    つまり、毎晩、同じ時刻に夜空の星を見ていると、ベガとアルタイルがどんどん近づいて行くことから、一年に一回だけ、牽牛と織女が逢えるという七夕伝説が生まれたというものです。勿論、その後は、反対側に高度を下げ、遠ざかりつつ、最後には地平線からその姿を消すことになります。七夕は、「星が近づきまた遠ざかる」というプロセスに意味があるのですね。
    ですから、新暦の七月七日も全く意味がないのではなく、そのあたりから星の観察を始めると良いということなのではないでしょうか?

  4. スタパオーナー のコメント:

    caz keiさま
    レスがたいへん遅くなり申し訳ありません。
    「月の錯覚」と同様、地平線近くにある星座が大きく見えるいわゆる「地平効果」を七夕の星に絡めて説明づけるというのはとても面白い視点だと思います。
    確かに地平効果を加味した七夕星の見え方の変化を見るために新暦の7月7日くらいから観察するのは面白いかも知れませんし、夏休みの自由研究にはとても良いかも知れませんね。
    まあ、新暦の7月7日、8月7日、そして旧暦の7月7日と何回も七夕祭りがあってそのたびにたくさんの方が星に想いを馳せるきっかけになると考えれば、あまり「ナンセンス」と切り捨てるのは適切でないかも知れませんね。

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