ラプトル&アトラス60を赤道儀に改造してみた その1

今日は久々に青空が広がりました。

でも夜にはまた曇ってしまいました。

さて今年の夏休みは木星・土星・火星が見頃になって、小型の望遠鏡でもその姿を楽しむことができました。

スタパでもスコープテックのラプトル60やアトラス60を購入して頂いた皆さんに、実際にマイ望遠鏡でご覧頂きました。

私もこれらの望遠鏡で実際に火星や土星を見る機会が多かったのですが、ラプトルやアトラスのような経緯台式架台で高倍率を使うと追尾をするのがなかなかたいへんです。

星の日周運動を追いかけるためにほんの少しずつ望遠鏡を上下と左右方向に動かさなければいけません。

それぞれの方向に動かす角度は星の方位によって変わるのでコツを掴むまでが結構たいへんです。

また、ちょっと目を離している隙にすぐに視野外に逃げてしまうことも多く、その都度導入し直さなければならず、あまりのんびりしていられません。

赤道儀式の架台を用いると赤経軸と赤緯軸という二つの軸のうち赤経軸だけの回転で天体を追尾することができます。(赤経軸をある程度正しく天の北極方向に向けておく必要があります。)

細かく上下・水平の軸移動の操作をしなくて良いので追尾するのがかなり楽になります。

また、星が視野外に逃げても赤経方向に多めに振ってあげれば再導入ができるので特に高倍率で見るときにはとても便利です。

赤道儀式の架台を購入してラプトルやアトラスの鏡筒を載せることも可能ですが、現状ではあまり廉価な赤道儀が市場になく、鏡筒を架台に載せるための部品の手配や改造などを考えると、初めから鏡筒とセットで販売している赤道儀式望遠鏡を購入した方が手っ取り早いし安いかも知れません。

そんなわけで最小限の改造と費用でラプトル&アトラス60を赤道儀改造する方法を検討してみました。

経緯台式でも赤道儀式でも常時動かすのは2軸です。
(経緯台では上下・水平、赤道儀では赤経・赤緯)

赤道儀式の多くは赤経軸(極軸ともいいます)の向きを精密に調整するために上下・水平の可動軸を追加しているものが多いですが、これを省略してしまえば経緯台の水平軸を極軸と同じように傾けて使うことにより赤道儀として使うことが可能になります。
(ちなみに北極点や南極点では経緯台=赤道儀です。)

ただ、通常の経緯台を日本の緯度に合わせて傾けて使うと相当アンバランスとなりそのままでは使えないため、リカバリーするための改造が必要になります。

赤道儀改造する上で必要な部品は次の二つです。

1.カメラ三脚(自由雲台式が望ましく、短めのタイプが良い)

2.エクササイズ用リストウエイト(100円ショップの250gタイプで良い)

ラプトル&アトラスの架台改造は、三脚架台部にカメラネジ用のねじ穴を作ります。

具体的にはドリルで5.2mm径の穴を開け、1/4Wのタップでネジを切ります。
(未経験の方にはハードルが高く感じるかも知れませんが、道具さえあればごく簡単な作業です。望遠鏡を維持管理する上で必須のスキルと思いますのでぜひマスターして下さい。)

この改造とカメラ三脚を組合わせることにより、架台を傾けたときの大きなアンバランスを解消します。

(続く)

スタパオーナー について

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ラプトル&アトラス60を赤道儀に改造してみた その1 への2件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんにちは。

    経緯台の大きな利点はなんといっても軽く設置が楽という点です。この利点は、望遠鏡の稼働機会に大きく影響するもので他の何にも変えがたいと思っております。

    しかしオーナー様おっしゃる通り、高倍率の追尾は大変です。大変な理由は水平垂直両軸を同時に動かさなければいけないということのほかに、特に小型の経緯台の場合は強度不足です。鏡筒を動かそうとすると微動装置がある機種であっても、振動がなかなか減衰せず、高倍率の視野がぶれて見えにくくなります。振動が収まる頃には視野からはみ出してしまうので、あらかじめ視野の反対側の端に対象を導入して減衰を待つという工夫が必須です。

    それに比べて赤道儀の場合は、小型のものであっても架台自体に重量があるため、振動は経緯台に比べて少なく、また、視野から外れてもすぐ戻せるため高倍率の時は特に便利です。

    またこれはあまり語られることがないのですが、赤道儀の最大の利点は、天頂付近の観望です。これは経緯台では非常に難しいです。大型の経緯台であってかつ両軸微動がついているものでも天頂の星の正確な追尾はほぼ不可能に近いと思っています。天頂付近は、実は最もシンチレーションの影響が少なく眼視の際は有利な星野なのですが、これに関しては赤道儀の独壇場ですね。

    今回のオーナー様の工夫は時には経緯台として、また時には赤道儀として一つの機種を使うという点で、素晴らしいと思います。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤様
    いつもありがとうございます。
    経緯台に関する補足のコメントをありがとうございます。
    またくその通りで、華奢な経緯台を高倍率で使いこなすにはかなりの修行と忍耐が必要だと思います。
    また上下水平微動が離れた位置に合って両手を使わないと(片手で持ち替えて)操作できない仕様の機種では腕力の鍛錬も必要になるなど観測者に多大な負担を強いていると思います。
    赤道儀をとても難しいものと考えている人が多いのですが、発想を変えて気楽に赤道儀の(小澤さんが指摘して下さったような)メリットを知って頂けるようにしたいと思いこんな記事を書いてみたというわけです。

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