双眼鏡で星空を楽しむ -その10-

梅雨の晴れ間が続いています。

 

林の中の道路はすっかり緑のトンネルになりました。

晴れていると、こういう緑陰が涼しくてありがたいです。

さて「双眼鏡で星空」シリーズ・・

今日は双眼鏡で日本の民話に伝わる星を見るというテーマでお話をしたいと
思います。

日本には西洋の星座のような体系だって全天を区切る星座という概念があまり
なかったようです。

だれが見ても目に付く、形がハッキリしている星の並びについては民話が
あるのですが、全国レベルで統一された話というのはほとんどないのが実情です。

また、あまり大きな星座がないのも特徴かも知れません。

大きくてもオリオン座を鼓(つづみ)星と呼んだり、さそり座を魚釣り星(サソリ
の尻尾あたりを釣り針に見立てている)と呼ぶくらいです。

 

北斗七星もおおぐま座のように広げて考えることはなかったようで、無理に
つなげて形を作り物語を着けるという発想や文化がなかったのでしょう。

ところが小さくまとまった特徴的な星の並びについては名前の付いている
ものが多くあります。

その典型はスバル(=プレアデス星団)や三つ星(オリオン座)などで、双眼鏡で
楽しむのにもってこいのサイズであることが多いです。

そんなわけで前置きが少し長くなりましたが、今日はさそり座にある日本の
民話に伝わる星を紹介します。

上の写真でアンタレスと左右の星で「ヘ」の字が作られますが、この部分を
篭担ぎ(かごかつぎ)星と呼ぶ地方が多かったようです。

アンタレスは火星に対抗するもの(アンチ・アーレス)の意味から着けられた
名前ですから、とても赤く見える星です。

天秤棒につるしたカゴの荷物をフウフウいいながら運んでいる姿を想像した
のでしょう。

またアンタレスの赤い色から酒酔い星と呼ぶ地方もあったようですし、
色の濃さでその年の作物の収穫量を占う地方もあったようです。
(色は年ごとに変わるわけはないのですが、南に低いので大気の影響を受け
やすく、ある一定の期間の見え方を比較すれば吉兆に結びつけられたのかも
知れませんね。)

 

双眼鏡で見ると、この篭担ぎ星がすっぽり視野に収まります。

空の条件の良いところではアンタレスのすぐ右側に球状星団(M4)が見えます。
(星でないモヤッとしたものが見える程度であまり面白くはないですが・・・)

双眼鏡で見ると肉眼で見る以上にアンタレスの赤い色を楽しむことができます。

都会ではアンタレスでさえ肉眼で見るのが難しいかも知れませんが、双眼鏡を
使えば篭担ぎ星を見ることができると思います。

こんな民話を思い出しながら見るのも楽しいものです。

もう一つさそり座の星を紹介しておきます。

最初の写真の丸で囲んだ部分にある星はさそり座のμ星で、3等星と3.5等星の
肉眼二重星です。

 

肉眼で見える人はかなり目がよいと思いますが、双眼鏡ならあっさり二つに
見えます。

この星を「すもうとり星」と呼ぶ地方が多いようです。

明るさがわりと近い2星ですが、南に低く大気の揺らぎの影響を受けやすい
ので、それぞれがチカチカとして、どちらかが明るく見えたり、暗く見えたりと
明るさを明るさを競うように(相撲をしているかのように)感じられるところから
付けられた名前のようです。

双眼鏡で見ると相撲観戦がよりハッキリと分かります。

続く

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
カテゴリー: 双眼鏡, 天文関係, 星空, 望遠鏡・機材 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください