3-2.双眼鏡の性能についての裏話(1)

3-2..双眼鏡の性能についての裏話(1)

前節では双眼鏡の性能を表す用語について、一般的な用語の説明をしました。

でも、一般的というのはとても曖昧な話です。

同じ仕様(倍率・口径)で、同じような形状でも価格や見え味には雲泥の差があるからです。

ここではなぜそんな事が起こるのか、素人の方にはピンとこないことが多いと思いますので、説明することにします。

1)対物レンズの違い

双眼鏡で使用する対物レンズは通常アクロマート式と呼ばれる2枚合わせのレンズが使われます。

最近の高級機ではカメラのレンズや高級な望遠鏡の対物レンズに使用される「EDガラス」が使用されるようになってきました。

このEDガラスでレンズを作ると「色収差」と呼ばれる像のにじみを大幅に軽減できるのでスッキリした見え味になりますが、ガラスの素材自体がとても高いので、高価な製品になります。

また工業製品ですので、レンズを製作したときにどうしても精度の良くない物もできてしまうのですが、高級機用のレンズですので、精度が悪くできてしまった物は使えなくて、歩留まりが悪いのでよけいに高価なものになります。

通常のアクロマート式の場合でも、高級機(高価な製品)はレンズの生産時に精度の良いものだけを選別して用いていると考えて良いです。

ここでいう「精度が良い」とはレンズの研磨面が設計値どおりに高精度に磨かれていることはもちろん、ガラス内に脈理や泡が無いなど様々な面からエラーが無いということです。

同時に作られるレンズの中でも何段階かのグレードがあって低いグレードのものが安い製品に割り当てられると考えて良いようです。(あるいは始めから安い製品向けに基準を落とした作り方のレンズを使用する場合もあるかも知れません。)

また高級機では視野周辺の像の乱れを改善するために像面を平坦化するレンズを組み込んでいることもあります。

まあ、いずれにしても高いのにはそれなりの訳があると考えて良いのです。

2) 接眼レンズの違い

接眼レンズにも様々な種類があって、見かけ視界の違いや、周辺像の見え方の違いがあります。

視界を広く取りつつ、いかに周辺像を劣化させないかなどはメーカーの腕の見せ所と言えます。

やはり高級機ほど気を使った設計になっています。

以前、安物の双眼鏡を分解したときに接眼レンズが樹脂製のラムスデン型(接眼レンズとしては最も古い2枚合わせの設計)で「安物はここまで手を抜くのか・・・」と驚いたことがあります。

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続く