3.双眼鏡の性能

3-1.性能を表す仕様

双眼鏡の性能を表す用語について、主なところを紹介しておきます。
双眼鏡を選ぶときの参考になると思います。

1)倍率

これまでにも何度か出てきましたが「7×50」とか「8×40」とか「6×30」という表示がほぼ必ず双眼鏡にはあるのですが、この前側の「7」とか「8」とか「6」が倍率になります。

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倍率が高いほど対象が大きく見え、細かいところまで見えます。

ただ(あとで説明する)口径に対し倍率が高すぎると視界が暗くなるのでお奨めできません。

また手持ちで使い前提の双眼鏡では10倍以上はブレが大きくなって落ち着いて観察ができにくいので、できるだけ低い倍率の方が天文用には向いていると言えます。(都市伝説で解説した7×50は除く)

2)口径(有効径)

上記「7×50」などの「×」の後の数字(本例では)「50」が対物レンズの口径(有効径)(mm)です。

対物レンズの物理的直径と光を集め像を結ぶために使用しているレンズ上の有効な径を区別するために「有効径」と表現することがあります。

事実上はほとんどがレンズの直径になります。

口径が大きいほど光をたくさん集めますから暗い星まで見えるようになります。

星というのは暗い星ほど数が増えるので、口径が大きくなるほど格段にたくさんの星が見えるようになります。

でもあまり大きいと持ち歩きがたいへんですし、昼間に持って歩いていると周りの人に「ギョッ!」とされてしまいますので、天文専用と割り切れる場合以外は30~40mmクラスがお奨めかな~・・・。

3)瞳径(ひとみけい)

瞳径は

瞳径(mm)=口径 ÷ 倍率

という計算式で求められます。

「接眼レンズ」によってできる「対物レンズ」の像の大きさです。

双眼鏡を明るい方に向けて30cmくらい目を離すと接眼レンズの中に丸い円が見えるのですが、この円の直径が瞳径です。

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瞳径が大きいほど視界が明るくなり、暗いところでも淡い光を捉えやすくなります。

ただし「都市伝説」でも述べましたが人間の瞳孔径の最大値は7mmですのでこれ以上大きくても光が無駄になりますし、天文用としては5mm前後くらいの方がコントラストがハッキリして暗い星まで見えやすいことが多いです。

4~5mmあれば天文用としては充分使えます。

よほどもの凄い条件の場所(例えば天の川で影ができるような環境)に頻繁に出会えるような状況でなく、都会暮らしでたまに星のきれいな場所(例えばスタパなど)に出かける程度なら瞳径7mmにこだわる必要はないと思います。

4) 実視界と見かけ視界

望遠鏡や双眼鏡を覗いたとき、実際に見えている範囲の(倍率が掛からない状態での)見張り角を「実視界」、接眼鏡の中身見える視界の見張り角を「見かけ視界」といいます。

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同じ倍率でも「見かけ視界」が大きければより広い範囲が見えるので「実視界」が広がり、一度に広い範囲を見渡すことができます。

広い範囲が見えた方が昼間は気持ちよいのですが、星を見たときには視界の端の方で星が点像ではなく三角になったり糸巻き型に見えたりして、あまり気持ちよくない場合があります。

広視界にすると視野周辺の像がどうしても乱れがちで、昼間の景色ではそれほど気にならなくても、星は点像なのでほんの少しのエラーも気になりやすいためです。

周辺像の悪い広視界型の双眼鏡より、広視界でなくても視野の端までビシッと点像に見える双眼鏡の方が星がたくさん見えることがあるので注意が必要です。

日本の双眼鏡では実視界が筐体に記載されていることが多いのですが、海外の製品では「1000m先視界」しか表示されていないことがあります。

これは「1000m先で何mの範囲が見える」という意味で、三角関数(tan)で計算すれば実視界の計算はすぐにできるのですが、関数電卓が手元にないと数字だけではピンときませんね。

7°の実視界の場合「1000m先視界」は122mになりますので、目安として覚えておくと良いでしょう。

続く