4.天文用の双眼鏡選び

4-1.仕様と予算

「都市伝説」の節ですでに述べているのですが、私がお奨めする天文用双眼鏡の仕様は、ズバリ、「瞳径5mm前後の機種」で、「予算の許す限り高価」なものです。

瞳径についてはすでに詳しく解説していますが、通常の使用環境では7mmクラスよりも5mmクラスの方が楽しく星が見えるからです。

具体的に瞳径5mm前後の機種というと・・・

10×50 ・ 8×40(or42) ・ 7×35 ・ 6×30

といったあたりの倍率、口径がお奨めになります。

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スタパにある瞳径5mmクラスの機種 左から10×50,45×8.5,8×42,7×35,6×30,5×25
これ以外にもたくさんありますが、いずれも普段私が使うことの多い機種です。

口径が大きいほど最微光星も暗くなり、たくさんの星が見えるので迫力がありますが、口径が大きくなれば、大きく・重くなって使うのも持って歩くのも億劫になります。

自分の体力と相談して長時間首からぶら下げても苦にならないサイズと重さのものを選ぶのが良いです。

ポロ型、ダハ型といった形状については許せる大きさと予算で考えれば良いので、特に特定しなくて良いと思います。

重箱の隅をつつくような見え味の違いを論じるより、いかに出番の多い相棒を手に入れるかを考える方が良いと思います。

機種を絞り込む前に、できるだけたくさんの製品を手にとって、サイズ感や、覗くときのポジション・バランスなどを確認しておいた方が良いですし、最悪でも最終的に購入する機種は現物を見ておくことが必須といえます。

「予算の許す限り高価」という表現はとても曖昧ですが、前節で記したように双眼鏡の仕様には様々なグレードがあって、そのグレードの違いにより少しずつ微妙に見え方が変わって行きます。

あまり良い例ではないのですが、スタパにある双眼鏡をいろいろ見比べると、低グレードの10×50(売値5000円前後)より丁寧に作られた8×42(売値30000円前後)の方が良く見えるといったことが起こります。

見比べると分かるのですが、でも低グレードの10×50で星空が楽しめないかというと、全くそんな事はなくて、条件の良い日には肉眼とは比べものにならないほどたくさんの星が見えて圧倒されます。

10×50という仕様で世界で一番高価な双眼鏡は約30万円です。

低グレードと較べると60倍の値段ですが、決して60倍良く見えるわけではなく、2倍ほども違いはないです。

60倍という価格差でも、その性能に価値が見いだせるならその製品を買えば良いし、とりあえず気楽に使いたいから、もう少し安いものが良いという選択もありだと私は思います。

気の小さな私などは、とても30万円もする双眼鏡を気楽に外に持ち出して夜露に当てたり、人に「使ってごらん」なんてことはとてもできません。

それができるのは、いいとこ10万円くらいかなぁ・・・などと思います。

人の価値観というのは全くそれぞれで、なかには「世界一が、たった30万・・?」という方もいると思います。

事実、時計や指輪や洋服などと較べれば「たった30万」で世界一というのはお買い得かも知れない・・・と思いますがね・・・。

ただ、あまり低グレードの安いものを買ってしまうと、もう少し高いのを買ったらどんなふうに見えるのだろうか? とか、見え方に不満を感じたときにもっと高いのにしておけばヨカッタ・・・ などと思ってしまいがちです。

そういった意味で「予算の許す範囲で高価」なものを購入すると、あきらめがつくというか、今の自分に見合った機材だと割り切ることができると思うのです。

とても抽象的な表現ですが、それぞれの価値観で選んで頂くのが一番だと思います。

続く