3-2.双眼鏡の性能についての裏話(2)
3)プリズムの違い
プリズムの形式には「ポロ型」と「ダハ型」があることをすでに述べましたが、プリズム自体のガラスの材質にもいくつかのグレードがあります。
プリズムは都合良く光を入射(取り入れ)したり、反射したりするありがたい部品なのですが、屈折率の関係で入射角や反射角には制約があって、それが大きすぎると反射して欲しい光が通り抜けたり、反射せずに外に出て欲しい光が反射してしまったりします。
屈折率が大きいほど広い角度に対応できるので、広角にしても視野周辺の光量を確保できるとか、部品を小さくできるとかというメリットがあるのですが、その分値段が高くなります。
材料名としては、BK7 → Bak4 → SK15 の順に屈折率が高く、高級な材料になります。
また同じ材質でもプリズムが大きくなれば、ケラレや迷光が少なくなるので見え味は良くなりやすいです。
もちろんプリズムもレンズと同じで精度良くできたものが高級品に使われ、並みの出来のものが安い双眼鏡に使われます。
特にダハ型の場合、構造的に精度やコーティング(部分的に鏡面加工)の質の善し悪しが見え方に大きく影響しやいといえます。
1)から3)で示した光学部品の出来の良さというのはカタログを見ても読み取ることは難しいです。
現物を見て比較しない限りその差を実感するのは難しいですし、昼間の風景などでは相当目利きの人でない限り違いを見分けるのは困難です。。
メーカーごとのグレード設定の違いや値段の差でしか判断することができません。
4)コーティングの違い
たくさんのレンズやプリズムなどの光学部品を使用する双眼鏡ではレンズのコーティングの違いで透過する光の量がかなり違ってきます。
またコーティングの善し悪しで、ハレーションが起きにくいとか、覗きやすさなども変わります。
メーカーによってコーティングのグレードに対する呼び方が違うので比較が難しいですが5層コート以上のマルチコートのものがお奨めです。
最近では外気に触れるレンズ面のコーティングに汚れや夜露が着きにくい撥脂コートを施した製品も見かけます。
個人的に使ったことはないのですが、汚れが拭き取りやすいのはありがたいかも知れません。
高級な双眼鏡ではこのへんのコーティングについてもかなり気を使った処理がされていると考えて良いです。
コーティングについてはグレードがカタログなどに明記されている場合が多いので参考にして下さい。
5)筐体ほか機械部分の違い
光学部品以外にも筐体(きょうたい)に軽くて丈夫なマグネシウム合金を使用しているとか、ピント合わせや目幅合わせの機構がスムーズで耐久性があるとか、防水になっているなどやはり値段によりグレードが変わって来ます。
光学的な見え味は同じでも、筐体や機械部品の設計の違いにより使い勝手がかなり変わりますが、これも実際に手にとってみないと分かりませんし、耐久性に関しては長く使わない限り分かりません。
筐体の設計は外観上の形状や持ちやすさに直接関係しますが、内部の形状や仕上げにより迷光処理が適切になされているかなどにも影響します。
見口の部分の構造(メガネの有無で高さを変えられるものが多い)の違いによっても、覗きやすさや使い勝手がだいぶ変わります。
また双眼鏡は当然ですが全く同じ倍率の望遠鏡2本を全く同じ方向に向けて固定してあります。
実は全く同じ倍率の望遠鏡を2本用意するというのは意外にたいへんなことです。
たくさんのレンズを使っているのでそれぞれの焦点距離の誤差が非常に小さくないと、全ての焦点距離が合成されたときに大きな違いが出てしまいます。
さらにピント合わせや目幅調整で左右の向きが変わらないような剛性と精度が必要です。
以上、カタログを見ているだけでは分からない(または分かりにくい)様々な要因が双眼鏡の性能に影響しています。
知識だけあっても役に立たないと思うかも知れないのですが、同じ仕様(例えば8×42)なら何でも良いというわけではないことを知って頂きたいのです。