今日は朝から良い天気。
秋の風景が満喫できるスタパ周辺です。
今日は夜まで良く晴れてくれました。
月がだいぶ満ちてきましたので、暗い星は行く見えなくなっていますが
それでもクリアに晴れてくれたので、主要な星雲星団を見ることが
できました。
さて秋の星座シリーズ今日は「くじら座」です。
くじら座はカシオペヤ、アンドロメダなどの星座が織りなす秋の星座絵巻の
配役のひとつです。
海の神ポセイドンに遣わされて高慢なカシオペヤを懲らしめるために古代
エチオピアの海を荒らし回る怪物です。
生け贄に捧げられたアンドロメダ姫を今まさに食いつこうとするときに勇者
ペルセウスに退治されてしまうというちょっと可哀相な役所です。
本来トドやセイウチのような海獣の化け物という設定なのですが「大きな海の
獣の化け物」という意味がなぜか2本では「くじら」と訳されて星座絵とは
少し違う星座名になっています。
くじら座も秋の星座らしく(?)あまり明るい星がありません。
唯一、尻尾にあたる「デネブカイトス:クジラの尻尾の意」が2等級の星です。
場所はうお座の下(南)側あたりで、頭からしっぽの先までではかなり大きな
星座で、全天でも4番目の面積を持つ星座です。
やたらとでかいのに暗い星ばかりなので、星のきれいな場所でないと形を
たどるのは難しいです。
ただ形はおばけ海獣をわりと連想しやすい配列なので一度見付けられれば
覚えやすい星座です。
みずがめ座やおとめ座など星座名からその形を連想するのが難しい星座も
多くありますので、そういった意味では名作のうちに入るかも知れません。
ところでこのくじら座、秋の星座絵巻の配役のひとつではあるのですが、秋の
水がらみの星座(やぎ座の尻尾、みずがめ座、みなみのうお座、うお座)のひとつ
でもあります。
みずがめ座のところでも解説しましたが星座が確立された古代エチオピアでは
みずがめ座のあたりに太陽が来る頃に雨期による雨の恵がもたらされたことから
空に水がらみの星座を集めたということになっています。
くじら座はたまたまここにいるといった感もあるのですが、偶然で片づけるには
もったいないほどの場所にいると思います。
明るい星が極端に少ないわりに、やたらとでかいくじら座ですが、星が少ない
せいもあってか、望遠鏡で見て楽しめる天体もとても少ないです。
メシエ天体としてはM77という銀河がありますが、うお座のM74と同じく
とても暗くて渦を巻いている様子を肉眼で見ることが難しい対象です。
ただ、くじら座にはミラという名前のとても有名な変光星があります。
明るさが2等級から10等級まで1000倍くらい明るさが変わります。
変光の周期は約330日です。
上の写真は数日前の写真ですが、肉眼では見付けられるかどうかギリギリの
明るさまで減光しています。
ちなみに下は昨年9月の写真です。
撮影データが異なるので一概には比べられませんが、ミラがデネブカイトス
(2.0等星)より少し暗いくらいに見えます。
「ミラ」は「不思議なもの」という意味で、「ミラクル」とか「ミラー」(=鏡)
などの語源になっています。
今でこそ明るさが変化する変光星というのはたくさんあって、厳密には変光
しない星のほうが少ないくらいだとということが分かっているのですが、
望遠鏡発明以前は変更する構成というのはとても珍しいものだったようです。
特にキリスト教社会では、天界(星の世界)というのは神様が作ったものなので
完璧であって、変化することはあり得ないということになっていたそうです。
だから彗星や新星が現れても、大気の中の現象として片づけられていたようです。
ですからそういう時代の人にとって明るさが、見えなくなるほど大きく変化する
というのは「不思議」以外の何者でもなかったわけで、この名前がつけられた
ということです。
現在ではミラと同じような変光をする星はたくさん発見されていて、これらは
「ミラ型変光星」と呼ばれています。
恒星が寿命末期になって核融合のしかたが不安定になっている姿と考えられて
います。
まあそれにしてもミラはクジラの心臓のあたりにあって赤い光をゆっくりと
脈動させているというのはあまりにも出来過ぎな話ですね。