7×50を奨めないわけ 再び

今日も雨模様の一日。

霧に包まれた高原大橋はそれはそれでなかなかの眺めです。

さて、以前からこのブログやビノで星見net などで星見用の双眼鏡として口径50mm7倍(7×50)はお奨めしないという話をしてきました。

星見用には7☓50という定説になぜ真っ向から異議を唱えているかについて、詳しくはこちらのリンクをご覧いただくとして、端的に言えば・・・

・今の日本国内の環境でこのスペックの双眼鏡を用いると視界が明るくなりすぎて暗い星が埋もれて見えづらくなる

・中途半端な(とういよりやや狭い)見かけ視界が災いして視野外で暗順応した網膜が視線移動により視野内に入ることにより生ずる暗順応リング(仮称)のダブルパンチによる視界の白けによる見え方のつまらなさというか迫力のなさ

などからお奨めできないとしています。

その後もたくさんの双眼鏡で星を見る方たちとお話をしていますが、詳しい方ほど7×50の出番はあまりないと伺っています。

私的にはほとんど出番がない、というよりは7×50は天体用としては不適切でと言い切って良いと思っています。

今回はその根拠を「生理学的見地」から考察して見たいと思います。

本題の説明に入る前に上でもちらりとのべた暗順応リングについてもう一度詳しく解説して見たいと思います。

「暗順応リング」というのは私が双眼鏡で星を観察していて勝手に名前を付けた現象です。(ので別に正しい名称があるかもしれません・・・)

双眼鏡を覗いていると視界の端(=周辺)が妙に白けて見えることがあります。

これは視界の外(=真っ暗な部分)を見ていた視細胞が暗順応した後に視野内で視線を動かすことにより暗順応した部分でわずかに明るい視野ないを見てしまうため起こる現象です。

下の写真のようにきれいな夜空を見ているときに・・・、

ちょっと視線を上に上げたときに森の部分が明るい残像となって見えてしまい星が見えづらくなったことはないでしょうか?

人間の視細胞というのはほとんど細胞単位で常に適切な情報を脳に送るために明るさに対する調整(=順応)をし続けています。

このため視線を固定しているときに視界の中に明るい部分や暗い部分があると網膜はその部分からも情報を得ようとしてその部分だけ暗ければ暗順応、明るければ明順応を行うので、視線を動かすとその部分が残像として見えてしまい、見え方を阻害することがあるわけです。

双眼鏡で星を見るときは(多くの場合)視野の中心付近を重点的に見つつ周辺も見回すと思います。

このとき双眼鏡を完全に固定していればまだ良いのですが、手持ちである限り視界は常に少しブレて中央付近の対象を視線で追えば双眼鏡の視野中心に対して視線は上下左右にぶれることになります。

このため視野外で暗順応していた部分が視界内に出たり入ったりして視野円の周辺付近に暗順応の残像が見え続けることになり、上の写真のように視野の周辺は常に白けたような見え方になりやすいのです。

双眼鏡を固定しても視野内で視線は常に動かしていることがほとんどなので程度の差はあっても暗順応リングは発生してしまいます。

暗順応リングが発生しやすい(気になりやすい)条件として、
・見かけ視界が狭めであることと
・瞳径(射出瞳)が大きいことがあげられます。

この二つの条件をバッチリ兼ね備えるのが、困ったことにかつては天体用として最高の機種といわれていた7×50のスペックなのです。

具体的説明は次回に続く

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
カテゴリー: 双眼鏡, 天文関係 パーマリンク

7×50を奨めないわけ 再び への2件のフィードバック

  1. 小澤利晴 のコメント:

    オーナー様、こんばんは。
    天体用としては確かに見えませんよね。7×50mmは。

    ここでひとつ、何故に天文雑誌やメーカーカタログ、さらには読者の声などなど、7×50mmが当時、大いに推奨されていたのかという疑問が残ります。あの頃、僕の記憶では1970年代初頭からずっと、天体観測の双眼鏡は7×50mmというのが定説になっており、それに当時疑問を投げかけたり反対意見を言ったりすることすら、暗黙の了解でご法度という雰囲気をアマチュア天文業界全体に感じていました。ここ10年くらいですかね。やっとその定説が覆されてきたのが。実はそのような雰囲気満載で、今よりも暗い空であったはずの当時ですら僕も7×50mmはみえないなあと思っておりました。オーナー様おっしゃる通りコントラストがつかず何となくぼやっとしているのです。でも、見えないなんて口が裂けても言えなかった。そんなこと言ったら、大変だと思い込んでいたからです。もしかしたらそのような思いを持っていた人は他にもいたかもしれません。

    が、業界全体で推奨されていた。いったい何故か。だれか権威のある人の発言がきっかけだったのか、あるいは7×50mmを普及させたかった別の理由があったのか、わかりませんが、今となってはなんとも解せません。

  2. スタパオーナー のコメント:

    小澤さま
    いつもありがとうございます。
    本当に 楽しくないのに、良く見えないのに、口が裂けても言えませんでしたね。
    でも誰かが「王様は裸だ!」と言わないといつまでたっても変わらないような気がするので、しつこく書かせて頂いています。
    少しでも多くの方に早く気付いて頂ければと思ってやみません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください