お気楽EAAにはコリメート方式がお奨めなわけ その4(完)

今日も梅雨空、曇りときどき雨でした。

さてお気楽EAA(電視観察)にコリメート方式がお奨めな理由をダラダラと解説してきましたが、要点をまとめておきます。

EAAをコリメート方式で行うメリットとして次のような事柄があります。

★ センサーサイズが小さい(=安価)なCMOSカメラが有利

コリメート方式では使用する接眼レンズとCMOSカメラ側のカメラレンズの焦点距離の比で光学系の縮小率が決まります。

カメラレンズは画角を同じにするために、小さなセンサーほど焦点距離が短くなりますので、縮小率も大きくなります。

例えば1/2.8インチ前後のセンサーの場合、カメラレンズの焦点距離は6mm前後がお奨めの画角となるのですが、30mmの接眼レンズと組合わせると縮小率は0.2倍となり、F10の望遠鏡と組合わせた場合合成F値はF2.0となります。

これがフルサイズのセンサーだと適切な画角のカメラレンズは50mm前後となってしまい、30mmの接眼レンズとF10の望遠鏡との組み合わせでは合成F値はF16.7となってしまうのです。

CMOSカメラ用のカメラレンズ(CマウントレンズとかCCTV用レンズという商品名で検索するとお安いのがたくさん見つかると思います。)

接続用のカメラアダプターは少し工夫が必要ですが、安価なCMOSカメラの方が有利なが嬉しいところです。

★ 安価なF値の大きな望遠鏡でも問題ない

上記のように安価なCMOSカメラで大きな縮小率が得られるので、手持ちの(または安価な)望遠鏡でも充分にEAAができるようになります。

EAAを始めるとついついF値の小さな望遠鏡が欲しくなったり、レデューサーレンズを組み込んで無理矢理焦点距離を縮小しようとしたりして、どうしても眼視観測とかけ離れた方向に進みがちです。

F8~F15くらいの焦点距離の長い望遠鏡でも合成F値がF1.6~3.0EAA用として充分に明るい光学系が気軽に得られます。

★ 眼視観察をする延長上でEAAが楽しめる

F値の小さな望遠鏡やレデューサーレンズを組合わせたりすると、どうしてもEAA専用の望遠鏡になってしまいがちです。

その望遠鏡で眼視観察を楽しもうと思うとピント位置が大きく変わるとか、眼視用に接眼レンズを取付直すのがとても面倒とかいろいろややこしいことが起こります。

コリメート方式は基本的に目で見たものと同じものをカメラに覗かせる方式なのでピント位置のズレや接眼レンズの入れ替えをしなくても良いです。

★ 天体の導入が容易

小さなセンサーサイズのCMOSカメラを望遠鏡に直接取り付けると、画角がもの凄く狭くなります。

焦点距離900mmクラスの望遠鏡では月の3分の1くらいの範囲しか見ることができません。

2~300倍の倍率に相当するので、天体を導入するのももの凄くたいへんで、ファインダーで合わせたつもりでも視野に入らないとか、よほど精度の高い自動導入装置でないと使い物にならないとか、とても苦労します。

コリメート方式で30倍くらいだと月の倍くらいの範囲が写るのでファインダーで充分導入が可能ですし、気楽に眼視にも切り替えられるので、眼視で導入してからカメラを付ける(または切り替える)という手法でもそれほど困りません。

望遠鏡を2台用意すれば良いのですが、装置がドンドン大掛かりになっていって「お気楽」という範疇を逸脱していまいます。

さてもちろん良いことばかりではなくデメリットもありますのでまとめておきます。

● 画質が悪い

直接焦点やレデューサーレンズ組み込みなど取りも大幅に光学系が複雑になるので、その分ピントが甘くなったり、収差の影響が大きくなります。

コンテストを狙うような高画質の画像は得られないので、あくまでもお気楽EAA用として割り切る必要があります。

● 計算上の合成F値より暗い

上記では大きな縮小率が得られると書いたのですが、光学系が複雑でたくさんのレンズを通して見るので計算上のF値よりも実際は少し暗くなります。

同じF値の写真用望遠鏡より暗いとしても腹を立てないおおらかさも必要です。

● 光軸合わせがシビア

接眼レンズとカメラレンズの光軸とレンズ間の間隔が適切にしっかりと保たれるようにしないと、明るさのムラや片ボケなとが発生します。

しっかり固定できるアダプターを工夫する必要があります。

メリット・デメリットいろいろあるのですが「お気楽」という意味で、コリメート方式でのEAAはとてもうまい組合わせだと思うのです。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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お気楽EAAにはコリメート方式がお奨めなわけ その4(完) への2件のフィードバック

  1. RAGS のコメント:

    スタパオーナーさま

    私が最後に天体写真を撮ったのは2003年の火星大接近の時で、ToUcam ProとRegistaxによる惑星写真が流行っており、私も試しましたが、驚く程簡単に解像度の高い画像が得られ、逆に気持ちが萎えてしまった気がします。今思えばこれが最初のEAA体験でした。

    最近EAAに興味が湧いて、Fの明るい望遠鏡を物色していましたが、コリメート方式なら手持ちの望遠鏡(ETX-90)でもいけそうです。ETXはフリップミラー内臓なので、眼視とカメラを簡単に切り替えられますし、南天に限ればETXのフォーク式赤道儀でもいけそうな気がします。

    古い望遠鏡の有効活用法を教えて頂きありがとうございます。週末に昔の機材を探してみます。さすがにCMOSカメラは購入せざるを得ないと思いますが...

    実際にコリメート方式で撮影された画像をブログに上げて頂けると有難いです。

  2. スタパオーナー のコメント:

    RAGSさま

    2003の火星大接近、私もToUcam Pro+Registaxにすっかりハマった口です。
    (懐かし~ッ!)

    EAA入門の参考にして頂けて何よりです。
    ETX90ははじめからフリップミラーが付いているので、コリメートのEAAうってつけだと思います。

    1/2.8”センサーのCMOSカメラに6mmのCマウントレンズ、笠井のSV32mm(うまいアダプターを準備できればプルーセルの30~32mmでもOK)と組合わせれば合成F2.6のかなり明るい光学系になりますね。

    手元にETX90の鏡筒があるので晴れ間みて試して見たいと思います。

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