月光浴の科学(サイエンス) -その8-

今日は中秋の名月。

皆さんのところでは、まん丸の十五夜お月さんがご覧頂けたでしょうか・・・?

 

スタパでは何とか「中秋の名月」の写真を撮ろうと待ち構えていたのですが、
月に群雲(むらくも)といった感じで、まともな写真を撮ることができません
でした。

さて今日は、「なぜお月見と言えば中秋の名月なのか?」というところを
「月光科学」的に考察したいと思います。

そも中秋とは・・・

昔、明治時代以前、太陰暦を通常の暦として使用していた頃、
季節の割り振りは現在と少し違っていて・・・

1月、2月、3月 が 「春」 (今でも正月を新春と言いますよね)
4月、5月、6月 が 「夏」
7月、8月、9月 が 「秋」
10月、11月、12月 が 「冬」 ということになっていました。

現代の感覚ではかなりずれたように思われるかも知れません。

また、太陰暦の1月というのは現在の2月頃に相当し約1ヶ月ずれていた
ということをご存じの方も多いと思います。

そういった知識をもとにいろいろ考えると、それぞれの季節の真ん中の月、
2月、5月、8月、11月はそれぞれ春分、夏至、秋分、冬至がある月に
あたることになります。

つまり春分の前後1ヶ月が春、夏至の前後1ヶ月が夏・・・というように
太陽暦を使用している現代の季節分け以上に、太陽暦を考慮して理にかなった
季節分けになっていると考えることができます。

で、8月というのは秋の中の中央の月なので「中秋」(ちゅうしゅう)と言い、
太陰暦では自動的に15日が満月になりますので、旧暦8月15日に
中秋の名月というお月見の行事が設定されたということになります。

現代では9月15日前後の満月が、この「中秋の名月」の日になりますが、
相手は月なので一筋縄では行きません。

月の朔望(さくぼう=満ち欠け)周期は約29.5日です。

これを1ヶ月とすると12ヶ月は

 29.5日 × 12 = 354日

となり今の1年365日より11日も少なくなります。

これですと3年経つと1ヶ月ずれ、18年経つと夏と冬が逆転して
しまうことになり、暦としての機能を果たさなくなってしまいます。

そんなわけで、ほぼ3年に1度「閏月」(うるうづき)というのを入れて、
13ヶ月ある年を作っていました。
(閏三月などという表現で3月が2回ある年が3年に1度あったようです。)

厳密には春分に一番近い満月が2月15日になるように調節していたはず
ですので、閏月が3月に入ることにより、旧暦8月15日というのは、
秋分をはさんで前後15日くらいの幅で秋分からずれることになります。

太陽暦が使われる現代では9月の23日か24日には秋分の日になります。
(23or24日は閏年の関係で変わりますが、太陽が基準の暦なので大きくは
ずれません。)

つまり現在でも、この秋分の日をはさんで前後15日の範囲で満月になる日が
旧暦8月15日=「中秋の満月」 になるというわけです。

今年の場合は旧暦で「閏月」のある年のようで、秋分の後の10月にずれ込んだ
今日が「中秋の満月」になっているというわけです。

さて、それではなぜ「中秋の満月」が、

「月々に 月見る月は多けれど 月見る月は この月の月」 とまで謳われるように
なったのか? さらに考えたいと思います。

結論を先に言いますと、月の高さ(南中高度)と、季節的な問題の二つが
その要因になると思います。

夏至の頃の満月は(南中高度が)低く、冬至の頃は高いということを
これまで「月光科学」シリーズで解説してきました。

それでは春分、秋分の頃の満月の高さはというと、春分・秋分の頃の太陽の
南中高度とほぼ同じになります。

具体的には・・

 90°- 観測地の緯度 = 春分・秋分の頃の月の南中高度

ということになりますので、90°-35°= 55°というのがこの辺の地方の
南中高度ということになります。

 
今日の月の南中高度をステラナビゲーターでシミュレートして見ました。
月軌道の傾きの影響か、天の赤道(赤い線)よりも高い58°くらいの高度に
なっています。それでも赤道と黄道(黄色い線)が交わる秋分点にとても近い
ところにいることがわかります。

冬の月のように首が痛くなるほど上を見上げなくてもすむ高さで、夏のように
低くないので、空気の減光の影響も受けにくいです。

夏より空気も澄んでクリアな月が見やすい季節になりますし、冬のように窓を
開け放つと寒いというほどの季節でもありません。

ちなみに春分前後の中春の満月は、まだ少し寒いですし、「おぼろ月夜」という
歌があるくらいで、気象的にクリアに見えるのを期待することが難しい時期です。

というわけで「この月の月」こそお月見にふさわしい月ということになったの
だろうと推測できます。

たかが「お月見」ですが、いろいろな思惑や、試行錯誤の末に熟成されてきた
風習なのだろうなぁ~ と思えてきて面白いです・・・

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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