今日は、雨のち、曇りのち、晴れ(一瞬)の天気でした。
さて「望遠鏡光学」シリーズ本編のスタートです。
1.レンズを理解する
1-1.焦点距離と口径比
望遠鏡を語るにあたり、まず何より初めに「レンズ」について知ってもらおうと思います。
レンズには光を集める働きがあります。
(ここではしばらくの間、特に断らない限り光を集める虫眼鏡のような凸レンズをレンズと言いいます。)
小学校の頃に太陽の光を一点に集めて黒い紙を焦がした経験のあるかたが多いと思います。
つまりレンズには虫眼鏡のように大きく見えるようにする働きとともに、光を一点に集める働きがあるわけです。
この光が集まる点を「焦点」(焦げる点と書きます)と呼び、レンズから焦点までの距離を焦点距離と言います。
遠くにある太陽ではなく近くにある電球などで焦点を結ばせようと思うと(レンズが光を曲げる力は同じなので)、太陽のときより遠くに焦点ができます。
このように対象により距離が変わるとややこしいので、特に断らない限り無限遠から来る光=平行光が焦点を結ぶ距離を「焦点距離」と言います。
ついでに説明しておくと、このレンズが光を受ける面の直径を「口径」といいます。
「レンズ径」と呼ぶこともありますが、望遠鏡などに組み込まれたときに、どうしてもレンズ押さえの部分でロスが出ますので、この場合は実際に光を受ける径という意味で「有効径」とか「有効口径」などと区別して言うこともあります。
また、よく使う言葉で「口径比(F)」があります。
口径比(F) = 焦点距離(f(mm)) ÷ 口径(D(mm))
という式で表され、レンズの基本的性能を示す数値として使われることが多いです。
焦点距離や口径比という言葉は、カメラの世界でもよく使われる言葉です。
望遠鏡の場合はレンズの口径が大きいほどたくさんの光を集めることができるので、暗い星を観察できるとか、倍率を上げても暗くならず、鮮明度(分解能)が高くなるなど、理論上の性能が上がります。
また、焦点距離は(後日説明しますが)倍率を決めるのに重要ですし、口径比は望遠鏡の性格(高倍率向けとか低倍率向けや、写真向けか眼視向けかなど)を判断するのに重要な意味を持っています。
たいへん基本的で重要な用語なのでぜひ覚えておいて下さい。
1-2.レンズは「像」を作る
1-1.ではレンズの中心を通る線(「光軸」と言います)に平行に入射する太陽光線(平行光線)が焦点を結ぶ話ですが、光軸に対して斜めから入射する光はどのように焦点を結ぶのでしょうか?
答えは上図のように、太陽が右にずれれば焦点は左に、左にずれれば焦点は右にずれて結ばれるようになります。
(厳密にはずれが大きいと完全な点には焦点が結ばれなくなりますが・・)
で、当然ですが太陽が3個あったとすれば、同時に3つの焦点が存在することになります。
実際に太陽は3つありませんので、遠くに電球が3つあると考えて頂いてもよいです。
なにが言いたいのかといいますと、焦点は常に1個なのではなく、レンズにあちこちから入る光に対して、無数に存在するということです。
無数と言うよりも「焦点面」というような感じで焦点が投影されると考えることができます。
さて話が少し変わりますが、私たちにものが見えるということはどういうことでしょうか?
上の図でロウソクの炎(a)からは光が四方八方に照射されますので、見えるのは当たり前ですね。
それではロウソクの根本(c)の部分はなぜ見えるのでしょう?
これはロウソクの根本の部分に外から当たった光が四方八方に反射して(炎の光ほど強くはないけれども)、眼の方向にも反射されて見えているわけです。
さて、それではこのロウソクの炎や根本の部分の光がレンズに当たったらどうなるのでしょうか?
答えは上の図のように、ロウソクの各部分から出た光は、それぞれが焦点を結び、ロウソクの形が逆さまに投影されることになります。
ここに白い紙のようなスクリーンを置くとロウソクの形が映し出されます。
このように映し出された絵を「像」といいます。
少し回りくどい解説で申し訳ないのですが、実はこの「像」を作り出すのがレンズの最も重要な仕事なので、ぜひ理解しておいて欲しいのです。
1-3.レンズが作る「像」の実際
それでは次に実際にレンズで像を作ってみます。
上の写真はちょっと見ソフトクリームのようですが、天井に付いている照明(電球形蛍光ランプ)です。
これをレンズを通して床に置いた白い紙に像を投影させてみます。
少し小さいですがきれいにソフトクリーム・・いえ電球の形が映し出されているのが分かります。
次にレンズ口径が同じで焦点距離が約2倍のレンズで像を作ってみます。
さきほどの2倍くらいの大きさの像ができているのがわかります。
でもちょっと薄い(暗い)のがわかりますか?
これ、実はとても大事なところです。
つまり・・・
レンズが作る「像」は焦点距離に比例して大きさが決まります。
でも、口径が同じなら集める光の量は同じなので、像が大きく(焦点距離が長く)なれば像の明るさは暗くなります。
口径が同じで、焦点距離が2倍になると、像の大きさも2倍になりますが、像の面積は4倍になりますので明るさは4分の1になってしまうわけです。
カメラの望遠レンズは遠くの物を大きく撮りたいので、焦点距離の長いレンズを使うというわけです。
できるだけ大きなレンズを使ったほうが明るいので写真が撮りやすいですが、あまり大きくすると持ち歩くことができないので、機動性重視か、画質重視かなどのバランスを考慮して口径比が設定されています。
望遠鏡も焦点距離が長い方が高倍率が出しやすいですが、倍率を高くしすぎれば暗くて却ってよく見えなくなることがありますので、口径に見合った倍率が推奨されています。(この辺はいずれ詳しく解説します。)
(続く・・)