今日もまた雨のち曇り・・・
読書が進みます・・・・
ということで「望遠鏡光学」シリーズが続きます。
5.アクロマートって何さ
5-1. 色収差とは
今日はいよいよアクロマート式レンズの話です。
そもそも私がこの「超々」シリーズを書き始めることになったのは、スタパおかみが「組立望遠鏡」シリーズの記事を読んで「アクロマートって何!? いきなり訳のわからない言葉が出てきて、その先に読み進めない・・・」と言い出したことが発端です。
「アクロマートって何」といきなり言われても、ひとことで説明するのは難しいですし、文系人間の素人さんに分かるように説明するためには、相当かみ砕いた解説が必要です。
「アクロマートってのは屈折率の違う2枚のレンズ(凸レンズと凹レンズ)を組み合わせたもので、屈折望遠鏡の敵とも言える「色収差」という色のにじみを単レンズに比べ大幅に軽減したものなのさ・・・」
と、説明することは少し知識のあるかたならスラスラとできるでしょう。
でも「屈折率って何?」、「どうして2枚合わせると色収差を減らせるの?」などと本当に基本的なことを聞かれたとき、返答に困る自分がいることに気づきました。
実際、手持ちの光学関係の本を調べても、「アクロマートとはこういうもの」という解説や、設計手法の説明はあっても、なぜ色収差を軽減できるのかといった基本的な説明が書いてあるものを見つけることができませんでした。
あまりにも当たり前すぎる事なのかもしれないのですが・・・
そんなわけで前置きが長くなりましたが、スタパ流アクロマートの解説の始まりです。
まず「色収差」とは何かということから説明をはじめます。
プリズムの解説の中で、光がガラスに入る境界面と、ガラスから気中に出る境界面で光が屈折するときに、光の色(=波長)によって屈折率が違うので光が分解(分光)されるということを説明しました。
レンズというのは滑らかな形になっていますが、考え方としてはリング状の形状をしたプリズムの集合体であると考えることもできます。
ですから、レンズの中央をとおる光はほとんど分光されませんが、レンズの端のほうをとおる光は、プリズムと同じように分光され、色毎に焦点位置が変わるため一点の焦点には集まりません。
これを望遠鏡として使うと、像の周囲ににじんだように(縁取りをしたように)赤や青の色が付いて見えてしまい、あまり細かいものが見なくなってしまいます。
この現象を「色収差」といって、シングルレンズを使用していた頃の屈折望遠鏡の最大の敵と言われました。
1枚の凸レンズでできるだけ色収差が出ないようにしようと思うと、口径比をできるだけ大きくする(=焦点距離を長くする)必要があります。
アクロマート式の対物レンズが発明されるまで、屈折望遠鏡というのは、とにかく長く作らなければ使いものにならないということになっていました。
「空気望遠鏡」と呼ばれるほど対物レンズの大きさに対して焦点距離が異常に長い望遠鏡が天体観測に使われていました。
口径15cm、焦点距離45m(口径比:300!)などというお化けもあったそうです。
プリズムでさまざまな光の研究をしていたニュートンは、屈折望遠鏡では根本的に色収差を無くせないと早々に気づき、反射望遠鏡を考案したといわれています。
写真はスタパで展示しているニュートンお手製の望遠鏡のレプリカです。
(物はもうひとまわり小さいそうです。)
星からの光をレンズを通さずに反射鏡で集めれば光が分光することも無いというわけです。
でも、ニュートンがもう少しだけ、レンズの組み合わせで色収差を消すことをまじめに考えていれば、アクロマート式レンズはもっと早く(50年以上)発明されていたかも知れないと言われています。
ニュートンにはそれができる知識があったのだと考えられているからです。
まあ、反射望遠鏡を発明して自分で作ってしまうということだけでも充分すごいことなのですが・・・
さて、それではどのようにしてレンズの色収差を少なくするのかを次節で説明します。