超入門 望遠鏡光学 (その5) 屈折とは・・・・光についてⅡ

今日は少し青空が広がりました。

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気付けばスタパ周辺は秋まっただ中という感じになっています。

さて「望遠鏡光学」シリーズが続きます。

4-3.光の屈折について

前節はホイヘンスの原理について説明しましたが、本節はいよいよこの原理を使って屈折が起こる仕組みを解説します。

屈折という現象は光が通過する途中で、違う物質の中に入るときに起こります。

たとえば、真空中(ほとんど空気中も同じですが)を通過する光が、ガラスに入るとスピードが(遅く)変化します。

密度が変わることにより光速が変化するわけです。(スピードの変化の度合いは密度だけではないですが・・・)

このスピードの変化をホイヘンスの原理で考えると、屈折の仕組みがわかりやすく説明できます。

下の図で光は境界面に対し左上から射し込みます。(ここで波面は点線で示しています。)

ここでは境界面より上は空気(≒真空)、下がガラスだと思ってください。

境界面より上の素元波(昨日のブログ参照)はそれぞれt秒という時間に次の波面まで進むスピード(A)で境界面にぶつかります。

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はじめに境界面に到達した一番左の素元波は、次のt秒には境界面より下のガラスの光の伝達スピードで、それまでよりゆっくりとBだけ進みます。

そのt秒の間に中央(左から3番目)の光線はAの幅を進み境界面に到達します。

ここからまた素元波が発生しますので、この点と一番左の光線が作った素元波の接線が波面になり、この波面に対して直角に光は進むことになります。

従って境界面より下では光が屈折され、境界面の上側より深い角度で光が進むことになります。

ここで A/B は空気中の光のスピードと、ガラスの中の光のスピードの比ですが、屈折の度合いを示す数値ですので「屈折率」という言葉で表しています。

屈折率が大きいほど、光を大きく曲げることのできる材質であるというわけです。

少し難しかったかも知れませんが、じっくり考えて頂ければ分かると思いますので、ぜひよーく考えてみてください。

4-4.プリズムについて

さて、光の屈折の原理はおわかり頂けたでしょうか?

まだ頭の整理がつかないかも知れないのですが、話はもう少し複雑でさらにややこしくなって行くのですが、もう少し話を進めます。

これまでは話を単純にするために光の色についての要素を無視していました。

でも、通常私たちが日常、照明用の光として使う光は太陽光も含め白っぽい光が使われていまが、この白っぽい光というのは、白っぽい光というのが存在するわけではなく、さまざまな色の光が混ざることにより白っぽい光ができているのです。

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プリズムに太陽光のような光を通すと光が七色に分解されます。

これは太陽光がプリズムに入るときに屈折がおこるのですが、光の色により屈折の度合いが違うために光が分解されるというわけです。

この光が分解されることを「分光」といい、どの部分(色)の光が強いとか弱いとかといったことを示すのが分光分布とかスペクトル分布といいます。

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太陽光の中には赤・燈・黄・緑・青・藍・紫 という虹の七色がわりとバランス良くふくまれていて、色がはっきり見えやすい光になっています。(というより私たちは太陽光の下で進化をしてきたので太陽光が一番自然に感じるのだと思います。)

例えば白熱電球ですと、赤の成分が多く、青や紫の成分が少ないので、少し赤みがかった黄色っぽい光になるわけです。

この太陽光をはじめ身の回りの光がみな虹の七色でできているのを最初に科学的に証明したのが、万有引力で有名なかのニュートンさんです。

ニュートンさんは光についてもさまざまな研究や実験を行い、光を粒子と考えて物理的な証明ができることを提唱していたことは、前にもお話しました。

ご存じのように、プリズムを通して物を見ると、物の縁がにじんだように虹色が まとわり付いて見えます。

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プリズムが物からの光を分光しているので、色が変わる縁の部分では分光された光がはみ出すので虹色が縁を彩るというわけです。

ところで、プリズムによる分光の広がりの強さ(これを分散といいます)ですが、ガラスの材質によってかなり変わります。

また、全体的に光を曲げる力(屈折率)もガラスにより様々です。(というより光学設計上様々な屈折率と分散の組み合わせが選べるとよい設計のレンズができるので、様々なものが開発されているというのが正しい表現です。)

さて、話は変わりますが、下の写真のように向きを変えた二つのプリズムを通して向こうを見るとどのように見えるでしょうか?

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答えは・・・

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ただのガラスのかたまり(厚い板ガラス)を通してみるように、まったくゆがまずに、にじみもなく向こうが見えます。

分光された光はどうなってしまったのでしょうか・・・?

プリズムの向きを逆にしたことにより、下の図のように分光された光が、また元の白い光に戻されるというわけです。

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光をガラスに通すことによって光を屈折させたり、分光させたり、さらにそれらを元に戻したりということも可能になるのです。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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