月光浴の科学(サイエンス) -その10-

台風一過・・・

 

昼前にはきれいに晴れ上がり、くっきりと富士山も見えていました。
(なのに、なぜか夜は雲が多いです・・・)

さて、「月光科学」も回を重ねること今日で「その10」。

だいぶネタ切れも近くなっていますが、もう少しお付き合い下さい。

今日のテーマは、地平線(水平線)近くの月(太陽)は、なぜ大きく見えるか?です。

これ「月光科学」のテーマとは少し離れるのですが、月を見るときにとても
不思議に思うテーマの一つです。

「眼の話」の時に解説しそびれた部分でもあるので書くことにしました。

実際のところ、昇ったばかりの月と、天頂近くにある月とでは、地球の半径分
(約6370km)天頂にあるほうが近づくことになるはずで、大きく見える要素は
どこにもありません。

むしろ、大気の屈折現象で上下につぶれて見えるぶん、小さく見えるはずです。

私自身、不思議でならないのですが、最近ではどうも目の錯覚というか、
脳で月の大きさを認識する際のバグなのではと考えられるようになっています。

以下に詳しく解説したいと思います。

「眼の話」のときにもちらりと触れているのですが、物を見るという仕事は
眼だけで行われるのではありません。

こういうと他にも見るための第三の眼があるのかと誤解されそうですが、
そうではありません。

眼というのは単に、画像データ(明暗や色)を脳に送るためのセンサーでしか
ありません。

実際には脳が送られたデータを必要に応じて画像処理をします。

輪郭の強調処理をしたり、過去の記憶データと照らし合わせ、それが何で
あるかを認識したりするする作業は脳が行っているわけです。

眼から送られたデータを元に脳は、よりハッキリ見るための画像処理を
いろいろやっています。

 

上の図には黒から白までの短冊が並んでいますが、それぞれの短冊の右辺と
左辺では色の濃さが変わっているように見えませんか?

でも両サイドの短冊を紙などで隠してみるとわかるのですが、それぞれの
短冊の色の濃さは、短冊内では一様になっています。

ちょっと信じがたい感じがするかも知れませんが、ぜひ試してみて下さい。

これはわりとよく知られた脳の画像処理の一例で、輪郭の線のないところに
輪郭を認識するために境界部の色の濃さを強調するという処理が行れている
というものです。

そのほか同じ長さの物なのに違って見える錯視とか、線のないところに
線を思い描いて形が見えてしまう現象など様々な画像処理のバグが知られて
います。

今見ている自動車が、おもちゃなのか、本物なのか、それとも写真なのか
人間は瞬時のうちに過去の膨大な記憶と照合して見極めることができる
能力も持っているのですが、遠くにある物については意外に簡単にだまされて
しまうこともあります。

 

上の写真のパラボラアンテナ、スタパおかみが持ち上げられるほどの大きさ
ですので [E:bleah]  それほど大きく感じないかも知れません。

せいぜい20mくらいかな? なんて思いませんか?

でも下の写真をご覧下さい。

 

少なくとも40から50mくらいはありそうだと思いませんか?

(正解は、どちらも同じモノ。このパラボラ臼田町にあるJAXAの衛星管理用の
アンテナで、国内でも最大級、直径64mのものです。)

上・下の写真の違いは(撮影している向きも違いますが)、周囲の比較できる
景色の違いが大きいです。

上の写真は比較できる物が「スタパおかみ」だけなのに対して、下の写真には
建物や、車や小さな人(スタパおかみ)が写っていて、充分に比較のできる
物が写っているので冷静に大きさの判断ができるというわけです。

このように人間というのは、周囲にある物により大きさが違って見えるという
間違いをするものなのです。

で、(前置きがずいぶん長くなりましたが、)月が昇ったばかりというのは
月の周囲に山や木やビルなどが見えているはずです。(海から昇る場合も
ありますね・・)

この山や木やビルというのは人間の感覚からすると、かなり大きな物という
認識が強くあります。

でも実際に月の出が拝めるようなところというのは、かなり開けた場所で、
昇ったばかりの月のそばに見える「山や木やビル」というのはかなり遠くに
あって、見えている大きさというのは実はすごく小さくしか見えていない
わけです。

その近くに月が昇ってくると「山や木やビル」よりも大きく見える月がある
わけで、「ああっ、月は大きい・・・」と感じることになると言うわけです。

(以前にもお話しましたが、)月の見かけの大きさというのは、腕をいっぱいに
延ばして持った5円玉の穴の中にすっぽり入ってしまう大きさです。

どんなに大きく見える時でも、どんなに小さく見える時でもこの大きさは
変わりませんので、どんなときでも月が見えたら5円玉でぜひ試してみて
下さい。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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